山と僕とカメラ

山と僕とカメラ

登山初心者のバタバタ日記

霊仙山でテント泊 その1 まいちゃん号編

そろそろ関西の低山も涼しくなってきた。というわけで、初めての霊仙山に行くことに。

霊仙山は関西を代表する山の一つ。滋賀県の東部にあり、鈴鹿山脈の北端に位置する。伊吹山の向かいにあり、なだらかな山容の頂上部はカレンフェルトのカルスト地形。

標高は1,094m。

今回は一泊のテント泊、この山には宿泊施設の山小屋はないので、水の準備はしっかりしておかないといけない。

いつも関西の山登りは日帰りなので、朝イチ出発と決まっているのだが、今回は一泊なので第二便、といったゆっくりした出発。

f:id:fujikixblog:20200102101133j:plain

今回はソロテント泊、荷物もそれなりに多い。ただし、天気は良いようで、テントはいつものカミナドームではなく、LOCUSGEARのクフ。これはいろんなモデルが有るのだが、私のはタイベックスのタイプ。柱はトレッキングポールで代用でき、やや軽量化できた。

大阪駅から新快速に乗り、米原駅へ。ここまでは伊吹山に行くのと変わらない。そこからは、バスの乗るのだが、実は定期便は終了していて、計画当初は少々悩んだ。醒ヶ井の駅から歩くか、はたまた柏原駅から縦走するか。

いろいろ調べた結果、米原には、なんと相乗りタクシーが存在していた。米原駅をハブにして、様々な停留所に相乗りで乗せてくれる。廃線になったバスの代わりだ。

米原だけに「まいちゃん号」という名前がついている。かわいらしい。

事前に予約が必要だが、そのコースによって最短ルートで運んでくれる。予約は1時間ぐらい前にするとちょうどいい。近江タクシーTEL0749-62-0106に電話をして、「まいちゃん号お願いします」と言う。出発停留所と目的停留所を伝え、名前をいうだけで、後は待てばいいらしい。

しかも値段は一人500円だけ、3000円くらいかかるのに、これはとってもお得だ。

ぜひ、みなさんもこれに乗って霊仙山にいてほしい。

ということで、米原駅につき、近江タクシーに電話をする。

電車内では電話できなかったので、暫く待つことになるだろう。電話をかけると、おそらく、定期の時間を少し越えてしまっていたのだろう、1時間ほど待つことになった。

次回からは、時刻をあらかじめ決めて出発前に電話予約をしよう。

この米原駅はレンタサイクルもしている。ここで借りて琵琶湖散策だろうか。

米原駅の東出口から出発なので、その付近に唯一ある喫茶店にて時間を潰す。1時間でお得な別案はない。待てばいいのだ。なんてったて今日はテント泊だ。まだ朝の八時半だ。

茶店にてモーニングをいただく。思わぬ食料ゲットに大喜び。これで行動食が担保できた。

f:id:fujikixblog:20181001090941j:plain

一時間の後、停留所に戻る。目印は道路に書かれた「まいちゃん号」の文字。

f:id:fujikixblog:20181001091815j:plain

例のまいちゃん号がやってきた。本当に普通のタクシーだった。

f:id:fujikixblog:20181001091605j:plain

名前を呼ばれ、荷物を載せ、中に入る。運転手さんが言うには後二人乗るそうだ。というわけで、前列シートに座る。暫く待つとその二人も乗ってきた。

出発だ。タクシー相乗りは初めてで、なんというか、新鮮。

目的地は醒ヶ井養鱒場。「養鱒場」これをなんと読むか、ここでやっとわかった。「ようさんじょう」だった。後列の二人は登山スタイルではないので、この養鱒場で楽しむのであろう。きっと、釣りとか、食事とか、バーベキューとかできるんじゃなかろうか。私はこの醒ヶ井養鱒場から出発し、榑ヶ畑登山口に向かい、そこから出発。この「榑ヶ畑」もなんて読むのだろう。

タクシーは無事に到着、ほかの二人は想像通り、養鱒場に向かっていった。

ありがとうまいちゃん号、帰りもよろしく。

f:id:fujikixblog:20181001092329j:plain

f:id:fujikixblog:20181001092506j:plain

ここから1時間ほど車道を歩き、登山口に向かうのだ。

天気はとても良く、青空が広がっている。前回の涸沢とは雲泥の差だ。車が何台も通過する。この先は登山以外で行く目的はない。今日は賑やかのようだ。

f:id:fujikixblog:20181001092617j:plain

木漏れ日が綺麗だ。木漏れ日というのは丸い形をしているが、これは虫食いの後ではなく、太陽の形だ。パパさんは覚えておくと、息子さんに自慢できる。ちなみに日食中の木漏れ日も、綺麗に日食しているので見ておくと良い。

f:id:fujikixblog:20181001092900j:plain

登山口の途中でも駐車している。これは相当人が多いな。

f:id:fujikixblog:20181001093252j:plain

一時間、きっちり一時間後、登山口に到着。車がいっぱい駐車していた。やはり、今日は晴れた土曜日、登山日和だ。

 

f:id:fujikixblog:20181001093518j:plain

 

時刻は10時半、日帰り登山にしては遅すぎる時間だから、車はあれど、人はいない。

f:id:fujikixblog:20181001093545j:plain

では、出発。

早速、暗い谷に入り、沢を登っていく。杉林だ。

f:id:fujikixblog:20181001093642j:plain

暫く行くと建物が出てきた。「山小屋かなや」である。ここは営業しているのか、若干不安である。人を寄せ付けないオーラを発しているわけではないが、なにかそういった雰囲気だ。

f:id:fujikixblog:20181001093808j:plain

一応テント場みたいな場所もあるが、ここでテント泊をする人はあまりいないだろう。

がしかし、登山案内は、しっかりしている。昔は流行っていたのだろう。

f:id:fujikixblog:20181001093853j:plain

f:id:fujikixblog:20181001093921j:plain

f:id:fujikixblog:20181001093924j:plain

f:id:fujikixblog:20181001093951j:plain

しれーっと通過し、ここからは若干の斜面になる。とはいえ、しんどい坂ではない。

すぐに峠に出る。「汗フキ峠」と名前がついていた。まったく汗は出ていない。命名した由来がいまいちピンとこなかった。

f:id:fujikixblog:20181001094125j:plain

ここからは霊仙山に向けて一気に登っていく。この登山道が、一番楽なショートコース、ということはどこかで急登があるのだが、それがこの峠からか始まり、暫く続くようだ。

峠からは谷道ではないので気持ちが良い。このコースは、なかなか良い。標高を上げるに連れ、見晴らしも良くなり、涼しくなってきた。冬は樹氷のトンネルが期待できる。

f:id:fujikixblog:20181001094230j:plain

f:id:fujikixblog:20181001094302j:plain

f:id:fujikixblog:20181001094330j:plainしだいに道がぬかるんできた、非常に滑る。ヌルヌルだ。そしてそこが一番の急登ということもあり、降りてくるおじさんが転んでいた。下りはここは危ないな。もし、別ルートで帰れるならそれも一考だ。

だが、そこを抜けると一気に樹林帯はなくなり、白い石の大地が見えてきた。空も見えてきた。

f:id:fujikixblog:20181001094427j:plain

なんと心地よいのだろう。素晴らしい。こんなにお手軽に見事な景色に出会えるとは、さすが霊仙山、人によると伊吹山よりも好きだという、その気持がわかり始めてきた。

白い岩の間を抜けてずんずんと登る。カレンフェルトという状態らしい。石灰岩なので、削られやすい。ここはもちろん昔は海で隆起したのだ。伊吹山と同じだ。

f:id:fujikixblog:20181001094451j:plain

暫く行くと、登りはなくなり、広い大地のような景色が広がっている。そこに3つほどの丘がある。その一つが、霊仙山の最高峰だ。なんとも不思議な光景だった。

f:id:fujikixblog:20181001094516j:plain

その景色の中には池と鳥居があった。その際でおじさんたちが酒盛りをしていた。麓の張り紙でお祭りの準備をしています。と書いていた。そのおじさんのようだ。しめ縄がきれいに巻かれていた。

f:id:fujikixblog:20181001094544j:plain

登山客は張り巡らされた登山道を思い思いに歩いている。一本道ではないのだ。あちらの山、こちらの山にそれぞれ登れるようになっている。私は地図を確認し、とりあえず、最高峰へ向かった。

f:id:fujikixblog:20181001094625j:plain

つづく。

www.yamakamera.com

北穂高岳敗走記 その8  笑顔の敗退編

博多にラーメンを食べに行く、北海道にジンギスカンを食べに行く。そんな感じで、上高地にカレーを食べに行く、のような変な満足感であった。

穂高は雲に包まれていたが、私達は笑顔に包まれていた。ぺろりと平らげ、しばしボケっとする。相方もチキンカレーに満足しているようだ。「次はビーフカレーにしとく」といったのが気にはなったが、甘口でおいしいチキンカレーであった。

f:id:fujikixblog:20200102101134j:plain


 

前回

www.yamakamera.com

ほかの登山客も数組いた。皆写真を撮りあったりしている。海外の人も多いので、例の如意棒のような棒にスマホを付けて自撮りをしている。

自撮りといえば、撮る前はしれーといている顔なのに、撮るときはニコーっと可愛い笑顔になって、撮り終えると、また真顔に戻る。それを友達同士で何度も繰り返す。あの行為の一連を見るのがとても面白い。

さてさて、のんびりしたところで、そろそろ上高地に戻る時間だ。今回の北アルプスは、登頂こそしていないが、なんだか学ぶことが多かった。こうやって人は大きくなっていくのだろうか。

Tシャツを着替える。ワンサイズ小さいのにしたため、ピチピチになってしまった。無念。

岳沢小屋を後に出発する。石の河原を渡り、向こう岸に向かう。

暫く行くと、行きで追い抜いたおばあさんがいた。そういえば、食事中に来てはいなかった。ずいぶんとゆっくりのペースだ。再度声を掛ける。どうやら今夜は岳沢小屋に宿泊するようだった。よかった。それならば、もう少しで着く。

相方によると、小屋で電話がなって、宿泊の確認をしていたというのがさっきのおばあさんではないか、ということだった。これでなにかあっても、誰かが迎えに行けるかもしれない。大丈夫だ。

あの行きですれ違った北欧女性はなんなんだと言う話が、岳沢小屋に着いてから続いていた。やはり、相方もびっくりしていたらしい。結局の所、「妖精」ということで落ち着いた。

帰りはただ降りる、延々と降りるその繰り返しなので逆に気持ちを保つのが大変である。もうお腹はいっぱいだし。残るモチベーションは、ビールぐらいだ。充分なのだが。

何事もなく、無事上高地に付きそうな折、相方のペースが何故か上がった。

f:id:fujikixblog:20180930094514j:plain

その様子でなんとなくわかったので、彼女のザックとトレッキングポールを預かり、先に行かせた。

彼女は河童橋の隣りにある建屋に一目散に消えていった。その後晴れやかな顔で出てきた。今回で一番の笑顔だ。

f:id:fujikixblog:20180930094540j:plain

f:id:fujikixblog:20180930094603j:plain

上高地に着いた。とりあえず預けた荷物を回収し、ビールを飲む。

美味い。いつも思うが、ここで飲むビールは最高に美味い。

f:id:fujikixblog:20180930094653j:plain

バスの出発までには、まだ時間がある。ちょうどいい休憩時間だ。

チーズおやきは毎回美味しい。

f:id:fujikixblog:20180930094201j:plain

何度も来て、毎回見ているが、ここのお土産でグッと来るものがまだない。でも毎回お土産売り場に行ってしまうのはなんなんだろう。

結局いつものようにおつまみ程度を買っただけでバスに乗り込んだ。

今回はやたらテンションの高い運転手だ。少々びっくりした。

高速道路のサービスステーションに着いた時にバスを間違えないようにと「語呂合わせで覚えてくださいね」と言っていたのは忘れられない。「23-17」なのだが、「兄さんは17歳」という語呂合わせだった。微妙過ぎて素敵だった。「兄さんいいなあ」じゃないところが良い。

そんなこんなで毎回バスに迷うこと無く、サービスステーションによれた。ありがとう運転手さん。

f:id:fujikixblog:20180930094244j:plain

今流行りがちょうど終わった「五平餅」なるものを初めて食べた。

とくにこれといった感情はないまま食べ終えた。

f:id:fujikixblog:20180930094127j:plain

そして、バスは一路渋滞の中、大阪に帰っていった。

バスの中で相方はせんべいの中に入っていた乾燥剤で水死したスマホの水分をひっしで除去しようとあえいでいた。無駄骨だった。

f:id:fujikixblog:20180930094221j:plain

後日、新品に交換できたらしいので、良かった。

みなさん、登山に行く前は、データのバックアップはとっておいたほうが良いと、相方が涙ながらに訴えております。

深夜、大阪について、ラーメンを食べてしまった。反省。

f:id:fujikixblog:20180930094101j:plain

というわけで、今回の涸沢、岳沢ダブルピストンという謎の山行は終わりである。

次回は、相方の打ちひしがれたモチベーションを取り戻すべく、ゆるふわな登山となることでしょう。

ではみなさん、素敵な紅葉登山を。

 

f:id:fujikixblog:20180930095702j:plain

 

 

 

 

北穂高岳敗走記 その7  岳沢小屋に向けて編

上高地というのはどこからどこまでを言うのかはよくわからないが、北アルプス南部の穂高の麓を流れる梓川周辺地域の勾配のない平地部分を指す、と私は思う。ここには登山以外にもハイキングや、森林浴、宿泊といったカジュアルな観光でも充分楽しめる場所であるからして、その人口のほうが多いと考えると、歩きやすい平地部分という意味を含ませて「上高地」とくくるのが自然だと思う。そしてその中心部が「上高地バスターミナル」。上高地へは一般車の乗り入れは禁止されているので、ここに来るには、バスかタクシーの二択になる。そしてそれら交通機関は、この上高地バスターミナルで発着する。

f:id:fujikixblog:20200102101135j:plain

 

前回

www.yamakamera.com

今回は一旦ここ上高地バスターミナルに戻って荷物をおいて、岳沢に再出発する。有料の荷物預かり所があるので、そこに預けると便利である。

そこから有名な河童橋を渡り、湿地帯域を眺めながら木道を歩いて岳沢登山口に進む。15分もかからない。ここまでは散歩道なのでいろんな観光客がいる。

f:id:fujikixblog:20180929102450j:plain

f:id:fujikixblog:20180929102527j:plain

心配していた相方の体調も良さそうである。

ここにはこの前に来たばっかりなので、大体の距離感はわかる。はじめての登山道というのは、「もうすぐ」というカンが働かなく急にゴールになったりするので、力を抜いて歩くタイミングが難しい。結局ゴール直前まで必死で登って、目的地で急ブレーキで止まる、そんな事が多い。そうならないように、地図やGPSをこまめに確認しながら行く癖をつけなければならない。

また、複数登山で、私のような初心者が陥りやすいのが、ナビを相手任せにしてしまって、現在地も距離感も、はたまたルート選択も気にせず歩いてしまう。それがお互いとなると、もう遭難まっしぐらだ。ソロでは、流石にそうはなりにくいのだが、3人以上の登山は気をつけたほうがいいと思う。二人よりも、雑談が増え、思わぬ道迷いになりそうだ。まだそんな経験はないが、街ではよくやってしまう。

登山口からは傾斜のある樹林帯を進む。いきなり「登山」の雰囲気だ。くねくねと小川に沿って木道を進むのだが、「低地+苔」が私達に牙を剥く。一人が滑ったところは、二人目も滑る、おおいにマーフィーが効いている。

f:id:fujikixblog:20180929102621j:plain

勾配はあるものの、荷物がゼロに等しいので心拍数はさほど上がらない。時刻的にはまだ速度データが取れてないので微妙だが、おそらくはそんなに急がなくても大丈夫。

暫く行くと、例によって朝は効いていない「風穴」がある。やっぱり今回も効いていない。

f:id:fujikixblog:20180929102709j:plain

ここからは次第に見晴らしが良くなる。上高地が見える。

f:id:fujikixblog:20180929102800j:plain

岳沢を降りてきた登山客とすれ違うことが増えてきた。このルートはやや体育会系男子的な登山客が多い。メインルートの重太郎新道だけではなく、ほかにもさらなる険しいルートがあるので、そちらから降りてくる人もここを通る。お疲れ様、ごゆっくりお風呂に使ってほしい。

中盤からは傾斜がきつくなる。時間は大丈夫、こまめに休憩を入れても充分時間内に到着できそうだ。

ピストンルートなので、スタート地点からストップウォッチで測っておけば、測定しやすい。もし、時間がかかりすぎて折り返さないといけなくなったとしても、かかった時間のトータル2倍でスタート地点に帰る計算なので、単純に2をかければいい。逆に言うと、進んだ分の2倍の時間を考えて進めば良いということだろうか。

岳沢小屋でもカレーの時間を最低30分とすると、トータルの時間猶予から30分を引き、その残った時間を2で割ると片道の使える時間が出る。平地ならば何も気にせず計算で出せるが、傾斜のある登山道や、しんどさとは別の登りにくいルートでは実際の計測値を参照しないと大きく時間がずれてしまう。

というわけで全行程の1/4程度で、だいたい間に合うことがわかった。

相方にも楽しく登山してもらいたいので、ぎりぎり疲れないペース、ぎりぎりゆっくり歩く。

f:id:fujikixblog:20180929102842j:plain

だがそれも、次第にゆっくりになっていく。傾斜がますますきつくなってきたのだ。だが半分は超えているので、気持ち的には切れていないようだ。

そんなとき、向こうからひょいひょいと降りてくる人がいた。たしかに人だが、彼女は、そう、女性だ、その女性は西洋の顔をして、綺麗に髪を結い、白いあたたかそうなショールをまとって降りてきている。近づいてみると、恐ろしく綺麗だ。北欧風のことばで挨拶をされ、すれ違った。相方とはこのとき10メートルほど距離があったので、立ち止まって振り返り、二人がすれ違う様子を見た。

相方も彼女が通り過ぎた後を追うように振り返っていた。やはり、相方もこの登山道にいるはずのない雰囲気を北欧白ショール女性に感じたのだろう。

そのあと、相方と目を合わせ「まじか?」「ありえん」といった言葉にならないコンタクトを交わした。

おかげでそこからの登山道は彼女のプロファイリングに没頭し、きつい斜面を乗り越えるに良い結果となった。

その後、一人のおばあさんが先行しているのが見えてきた。だが急激に距離が詰まっていく。私達のペースはそんなに早くない、そう、おばあさんがゆっくりすぎるのだ。そしておばあさんが止まってしまったので、声をかけてみた。やはりしんどそうだ。大丈夫だろうか。ここから岳沢小屋までは、後少し。とはいえこのペースだと1時間はかかるかもしれない。小屋から先に行くのは難しい。そもそも、この登山道でこの疲労度だと、重太郎新道なんて不可能だ。

人の心配よりも相方の心配だ。大丈夫そうだ。カレーってすごい。

やがて川を渡る場所に出た。もう少しだ。ここを抜ければもう小屋だ。先程からチラチラと建屋が見えている。時間も充分にある。もう、気にすること無しだ。

f:id:fujikixblog:20180929102936j:plain

最後の坂を終え、建物の敷地に入る。

着いたのだ。カレーに。

その足で、小屋に向かう。

入り口にメニューが書かれていた。

ビーフカレー辛口中辛、チキンカレー、キーマカレー、ベジタブルカレー」

なんという豊富なメニュー展開だろう。ほかにもナポリタン、カニのトマトクリームパスタなんかがある。

想像以上、想像の乗算である。

f:id:fujikixblog:20180929103148j:plain

私はこういう選択肢の場合、きまって「キーマカレー」だ。キマだけに。

相方はいろいろ考えた挙げ句、チキンカレーにしたようだ。

見晴らしのよいテーブルにて出来上がるのを待つ。

f:id:fujikixblog:20180929103209j:plain

上高地が見下ろせる。思えばよくここまで登ってきてくれた。ありがとう。

ありがとうカレー。

と、ぼけーっとしていると、寒くなってきた。ちょうどいい、ここのTシャツを買って着替えよう。と小屋に行く。

微妙なグリーンのTシャツを買う。ちょうどカレーもできたようだ、グッドタイミング。

山岳に似つかわしくない、カレー皿とガラスのコップ、それがお盆に乗っている。すごい。と同時に運べるか不安になった。すでにTシャツを持っている。

カレーを2セット渡された。石畳と階段が待っている。大丈夫だろうか。一応聞いてみた。

「今までひっくり返した人はいますか?」

「いませんよ♪」

「・・・・・・」

第一号になる自信たっぷりでカレーを運んだが、第一号になること無く、テーブルに着いた。よかった。

目の前にあるカレーは、上高地より美しく、崇高であった。

f:id:fujikixblog:20180929103306j:plain

スプーンですくい上げ、口に入れる。

ガラムマサラの複雑な辛味と甘み、そしてミンチ肉を噛むごとにでてくる旨味が口の中を泳ぐ。白米は弾力がある、そして、カレーの濃さを絶妙に和らげる。ガラスコップの水は透き通っており、喉に流し込むと、一気に浸透し、胃の形がわかる。

今度はチーズを振りかける。

芳醇な匂いが鼻をくすぐる。塩味がまして疲れた体を蘇らせる。

今までこれほどうまいカレーを食べたことはない。

この感想は、カレーを食べるごとに思うことだが、気にしない。

f:id:fujikixblog:20180929103523j:plain

もう一度言おう。岳沢小屋のカレーは美味い。

f:id:fujikixblog:20180929103600j:plain

まだ、つづく。

 

www.yamakamera.com

 

 

 

 

 

 

相方の富士登山日記 その4 ご来光そして下山編

 相方チコです。

富士山の続きです。

 

 

富士山の山頂はお盆休み最後の日曜日ということもあって、人・人・人で溢れかえっていました。山からこぼれ落ちるのではないでしょうか。

 

日の出まではあと30分ほど。私たちは直ぐにでも日の出がよく見られる場所を確保したかったのですが、ガイドさんに、一旦山頂の山小屋で休憩してください!と言われ、泣く泣く山小屋に入ります。

前回

www.yamakamera.com

 

山小屋で貰った朝ごはんをもぐもぐタイム。友人はココアタイム。日の出までの短い間、寒さにやられた登山客は、おしるこ、お味噌、豚汁、コーヒーなど、温かい物を次から次へと頼んでいました。寒さは売上に貢献します。

f:id:fujikixblog:20180927052343j:image

f:id:fujikixblog:20180927052413j:image

 

 

一息ついたところで、今日のために用意した物をザックからガサゴソ取り出して…

 

 

「お誕生日おめで、、ぐふぁ、わあああボロボロになってる~~~涙涙涙。」

 

 

振り返ること出発前、友人のお誕生日登山、なにかしなければ!、1泊2日の登山に耐えられつつ、かつ、山で役に立つものはないかと考え、前日にチョコがけラスクにアイシングでメッセージを描いてみたのですが… タダでさえ下手なアイシングが、ザックの中で更にボロボロに……。思いでポロポロ、ラスクもポロポロ。

 f:id:fujikixblog:20180927052357j:image

申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、友人には「気持ちが嬉しい」と喜んでもらえたのでとりあえず良かった。友人はいい人なんです。

そうしてサプライズミッションも無事終了し、そうこうしていると、外がだいぶ赤く染まってきました。いざ、ご来光を見に。レッツゴーアウト。

 

 

 f:id:fujikixblog:20180927052432j:image

 

 

 

山で見る日の出は、元旦でなくても、手を合わせたくなるような神々しさを感じますが、今、富士山山頂から見ている日の出は、格別に輝いていました。友人にとっては初の、私にとっては10年振りのリベンジ。もう自分からは登らないだろうな~と思っていた富士登山でしたが、偶然誘ってもらって、こんなに素晴らしい日の出を見ることができた、ほんとに来てよかったなと思いました。

 f:id:fujikixblog:20180927052444j:image

物思いに耽る間もなく、あっという間に下山の時間。登りは夜でしたが、下山はずっと太陽に向かって歩くので、抜かりない日焼け対策をします。

晴れて嬉しい反面、日焼けというのは、どの山でも同じですね。富士山は特に日陰がないので。日焼けは体力を消耗するし、後々のお肌にもよろしくない。以前自転車に乗っていたとき、左半分だけが真っ赤になってしまったこともあり、以来フェイスカバー・アームカバーもお世話になるようになりました。

 

パールイズミフェイスカバー。口部分が開くので呼吸もしやすく、そのまま簡単な飲食も可能。耳にかけるゴムとホックのサイズ調節で、ずれることなく快適です。

http://amzn.asia/d/8D5vXq0

 

ロゴスのアームカバー。二の腕のゴム部分がきつくないのにズレ落ちなくて、今のところ一番のお気に入り。

http://amzn.asia/d/j1VjGTI

 

ALLIE のジェル日焼け止め。ジェルタイプなので伸び・馴染みともによく、化粧下地としても使っています。小分けにして山へ持ち運びやすいのも◎。

http://amzn.asia/d/3arHVWM

 

 

(中略)

 

 

無事下山

 f:id:fujikixblog:20180927052456j:image

下山後はバスで1時間ほど移動し、温泉、バイキング、お土産が買えるワイナリーへ。

大阪からの1日登山は「弾丸ツアー」という印象が強いし、なかなかタイトなスケジュールでしたが、それでも移動や食事の心配もなく、ガイドさんも同行プランだったので無理なく登れてよかったです。富士山からのご来光は最高でしたが、富士山は他の山から見る方が好きかな!笑(←個人の感想です)

 

文:相方

 

編集後記

あっという間に下山、と言うわけでは無いらしかったが、どうも文章を書くのに疲れてしまって、一気に終わらせたらしいです。

皆さん、申し訳ございませんでした。

では引き続き、ジャンイチブログをよろしくお願いします。

編集長:ジャンイチ

北穂高岳敗走記 その6  カレーなる敗退編

徳沢といえば、徳沢園のカレー。大盛りカレー。

時刻的に、少し心配。15時を回っている。荷を担いだまま食堂に入って確認する。

無念 。

14時半で終了だった。いやいや、しょうがないしょうがない。

毎回毎回カレーばっかりも食べてられない。今夜は麻婆春雨だし。うん。

f:id:fujikixblog:20200102101136j:plain

 

前回

www.yamakamera.com

テントの受付、ビールの購入、テントの設営。速やかに成し遂げる。

今までで一番テントの張りが早くて良い、と、毎回徳沢で思わせてしまうこの平らで芝の環境。

と、次第に天気が悪くなってきた。そして雨が降ってきた。

f:id:fujikixblog:20180925170138j:plain

結果オーライなのか、どうなのか、とにかく無事に疲弊した相方を下界に下ろすことができてよかった。明日は雨でも安心。

f:id:fujikixblog:20180925170209j:plain

テントに無理やり土間シートを天蓋にして、雨を凌ぐ。これが意外とちゃんとできた。ちゃんとではないけど、できた。そしてその下でご飯。

ゆるキャン大成功。

 

f:id:fujikixblog:20180925170115j:plain

徳沢には徳沢園、そして徳沢ロッヂという素晴らしい2つの宿があって、その間に広大な芝生のテント場がある。これにより、徳沢園のカレーとソフトクリーム、徳沢ロッヂのお風呂、そして芝生のテント、これで快適なキャンプ生活が過ごせるのである。

というわけで、例によってお風呂に入りにいった。

f:id:fujikixblog:20180925170053j:plain

風呂上がりは暗くなっているので、ヘッドライトを忘れてはいけない。せっかくきれいになったのに泥にハマっては台無しだ。

 

雨はまだ降っていた。テントの中で時間を潰す。

f:id:fujikixblog:20180925165405j:plain

明日のことを考えていた。晴れた場合、明日の3時まで何をするか。雨ならどうするか。と考えているうちに、眠ってしまった。

 

たまに目が覚める。トイレに行く。まだ雨が降っていた。

これは、明日も雨だな、明日はここでのんびりと過ごそう、たまには良い。

 

あさが来た。少し晴れている。空は上半分、青い。本日は晴天なり、天気は良いようだ。まんてんのおひさま、とはいかないまでも、まれにさす陽射しが心地よい。これが涸沢だったらとおしんでも仕方ない。今日を楽しもう。私の青空を楽しもう。登山一年目のあまちゃんひよっこな私達に、純情きらりである。

f:id:fujikixblog:20180925165506j:plain

 

それにしても、今回は傘を持ってきてよかった。登山はもちろん、テント場での移動には欠かせない。前回の岳沢のパラソルマダムを思い出す。

さあ本日は何をしよう、蝶ヶ岳、時間がない。西穂高山荘までロープウェイ、時間がない。

しまった。もう少し早く撤収すればなんとかなったかもしれない、いや、どうだろう、厳しい気がする。

カレーのにおいがしてきた。ああ、徳沢園のカレーだ、あれを食べようか。。

カレー

カレー

岳沢カレー、前回食べそこねたなぁ、、食べたかったなあ。

ん?

んん?

もしかして、行ける??

想像するより、とにかく地図を見て時間を測ってみた。

い、行ける、行けてしまう。

「岳沢にカレー食べに行こう!」

「おおーー」

決まった。

そうと決まれば撤収だ、大急ぎでテントを片付ける。

これ以上ないスピードだった。カレーの持つ潜在能力にまた感動した。

上高地のターミナルに荷物をデポするので、必要なものだけアタックザックにあらかじめ入れてパッキングする。

大急ぎで歩かなくてもよいが、それなりに時間はない。

今回は上高地でのお風呂は当然なしだ。「カレー>風呂」という公式が成立していた。

荷物を担ぎ上げ、上高地に向けて歩く。

今回で一番相方の機嫌がいい。

天気とカレーの為せる技なのか。

恐るべし。

相方の笑顔を見たのはいつ以来だろうか。ホッとした。

上高地までは、明神まで1時間、そこから更に1時間かかる。

今からだと、上高地に10時、そこで荷物をおいたりして、岳沢登山口が10時半、そこから12時半までに岳沢小屋に着けばいい。13時を回ると、少しやばい。

バスは15時半、せめて14時45分には上高地に着いておきたい。行きにかかった時間と同じだけ帰りも要する。30分の差は1時間の差になるのだ。という事を相方にはプレッシャーになるので、何も言わず、ただ褒めちぎって歩いてもらうことにした。

そうしてひとまず、上高地に定時で到着したのであった。

f:id:fujikixblog:20180925165605j:plain

荷物を預けて、大福を食べて、いざ、岳沢小屋に向けて出発である。カレーが私達を待っている。

f:id:fujikixblog:20180925170854j:plain

 

続き

www.yamakamera.com

 

 

 

 

北穂高岳敗走記 その5  パノラマコース編

夜中、目を覚ますと雨は止んでいて、星が出ていた。穂高がシルエットで見えていた。このままずっと晴れてくれていたらいいが。

まだ、起きるには早かったので再度、眠りについた。

f:id:fujikixblog:20200102101137j:plain

f:id:fujikixblog:20180922083709j:plain

日の出前にもう一度起きた。のんびりした朝だ。夜明け前アタックが無しなので、その準備をすることもない、特にすることがない。ゆっくりトイレに行く。

 

前回

www.yamakamera.com

トイレから帰ってくると、モルゲンロートが終わっていた。皆、「少し見れたね」と言って喜んでいた。残念、見たかった。相方は起きていて見れたようだ。良かった。

f:id:fujikixblog:20180922083918j:plain

雨は降っていない。登頂を目指す登山者も多い。今日の予定をどうするか話し合った。とはいえ、今日の天気を読まないと話し合いもなにもない。私のスマホは圏外で、相方のスマホは昨日の雨で水没状態で死んでいた。ということで、登山案内所なるものに行って聞くことにした。

「今が一番天気が良くて、これからどんどん崩れていくでしょう」

とのこと。この言葉を信じないようなら、案内所にいった意味はない。

f:id:fujikixblog:20180922084117j:plain

午後から雨が降るかもしれない。その雨が降る前に横尾か徳沢に降りなければならない。明日が晴れるという保証は全くない。

穂高に登るという選択肢はなくなり、涸沢で午後までのんびりするという選択肢さえもなくなった。

とりあえず、朝食は食べる。

f:id:fujikixblog:20180922084140j:plain

朝を過ぎた涸沢は人が少なく静かだ。晴れ間が見えてきたので濡れたものがよく乾く。

f:id:fujikixblog:20180922084019j:plain

 

ゆっくり片付ける。夜には穂先が見えていた山々は、雲の覆われていた。たしかに天気は完全に晴れとは言えない。

穂高と奥穂高を結ぶ吊尾根が一瞬見えた。そしてまた雲に包まれた。

f:id:fujikixblog:20180922084045j:plain

f:id:fujikixblog:20180922084203j:plain

テントを畳み、他の荷物と一緒にザックに詰め込む。相方から重いものをこちらに入れる。私のザックはHyperlite社の3400なので55リットルほどしか入らない。せめて70リットルのザックで来ればよかった。次回からは相方が手ぶらでも降りれるよう考えないといけない。

パンパンになったザックを背負い、下山を開始した。

相方が「パノラマコースで帰る?」と聞いてきた。横尾を通るルートと、かかる時間はたいして変わらないので、そうすることにした。距離的には2/3程度だが同じ時間ということは、同じ距離でも1.5倍かかる道ということだ。なんとなく想像がつく。

という発言からして、体調は悪くないようだ。あんまりそこに触れて心配しすぎてもよくなさそうなので、昨日のことは忘れておく。

パノラマコースについてはあまり調べてはいなかったので、再度案内所に行って聞いてみた。一応このルートは登山地図では破線のコースなので。長野県警の人がいた。

「アップダウンがあって沢もあります、足元が大変危険です」

「西奥や大キレット的な?」

「いや、そんな感じではありません」

「ここからルートは目視できますか?」

「はい、あの先に先行登山者がいますよね、あそこまでそこから道が続いていて、あの鞍部を抜けて降りる道です。」

「ありがとうございました!気をつけて進みます」

「お気をつけて〜」

こんな感じだった。

というわけで、出発。登山口は昨日、ここについた場所と同じ。昨日到着直前に「パノラマコース」という看板があった。

f:id:fujikixblog:20180922084245j:plain

先に行く人が数組いた。その中にはまるでハイキングにでも行くかのような軽装で入っていく女子5人組がいた。まさか下までは降りないだろう、きっと涸沢がきれいに見えるところまでのお散歩だろうと思っていた。

登山道は緩やかなトラバースから始まる。下山コースなので大きく登る箇所はないはずだ。ただし、このまま平坦な道が続くのも困る。コースは横尾コースの2/3だ。ということは斜面も単純に考えてかなり急なはずだ。ここが平坦であっては、貯金を使っているようなものだ。

と考えながら、ロープの張られたトラバースを行く。相方にハーネスを付けて確保しながら降りるか聞いた。答えはノーだった。そんなにおっかなくないらしい。よかった。

振り返ると穂高に包まれた2つの建屋、そしてカラフルなテントが見えた。

ここからしか見れない景色、という意味では、このルートでこの景色を見ることは有意義である。しっかり目に焼き付けておく。

f:id:fujikixblog:20180922084321j:plain

f:id:fujikixblog:20180922084342j:plain

登山道はしばらく斜面が続いていく。定期的に休憩を取る。先行のピクニック団は足が早く、もうとっくに見えない。もしかしてほんとにあの格好で下に降りるのかもしれない。おそらくはヒュッテか小屋のアルバイトの人だろう、休暇を頂いて下に降りて楽しむのかもしれない。ツワモノだ。

f:id:fujikixblog:20180922084411j:plain

向かいからご老人夫婦がやってきた。失礼だがかなりの老齢だが、元気そうにやってきた。

だが、ほとんど人がいない。横尾コースの人口を100とすると、パノラマコースは0に近い。鞍部近くに着いた。

先程のピクニック女子が引き返してきた。やはり散歩だったようだ。散歩にしてはワイルドすぎる小道だが。ということは、やはりただの登山者なのか。

彼女らの挨拶でアルバイトの人達だと確信した

「お気をつけて」だかそういった感じの言葉だった。きっと、ここまで来て話さないといけない秘密話でもあるのだろう。

f:id:fujikixblog:20180922084458j:plain

この先に少し見ごたえのあるトップがあるが、登るかと聞くとノーだったのでそのまま上高地側に降りることになった。

ここから徳沢も見えていた。

f:id:fujikixblog:20180922084637j:plain

ここからは、ザレ場の下りだ。明確な「ここが足場ですよ」と聞こえる石はなく、なんとなく自分で判断して足場を確認しながら降りる。

時刻は12時。休憩にちょうどいい大きな平たい岩がある場所だったので昼食を取ることにした。

相方の体調は悪くなく、むしろはやく徳沢に着きたいというモチベーションが感じられた。やはり、前に向かう気持ちは大切だ。昨日とはまるで違う。

パンを食べ、コーヒーを淹れる。

美味しい。

天気は不安定だが、ザザーと降ることはなく、霧のような雨が降ったり晴れたり。

このまま持てばいい。明日は雨でも徳沢からなら頑張って歩いてもらえそうだ。

今まで相方の登山は天気が良い日ばっかりだったので、雨の登山にショックを受けて気持ちが後ろ向きになっていた。後日聞くと、本谷橋らへんで、ザックを川に捨てて帰りたいという気持ちだったらしい。この登山以来、「雨の日の登山」的なサイトを良く見ている。という意味では今回このような形で敗退したのもよかった。昼食を終え、更に進む。途中、息絶え絶えの男性二人組とすれ違った。確かにココらへんは急登だ。沢なので石は丸く登りやすいのだが、その下からずっとこの傾斜なのだろうか、そんな心拍数に見えた。

後ろから団体が来たので道を譲る。おそろいのヘルメットにお揃いのハーネス。クライミング目的だろうか。たしかこの先にそんなスポットがあったような。でも時間がおそすぎる。いや、屏風岩から終えて来たのか、それにしては軽装だ。とにかく道を譲る。

そして黙々と降りていく。次第に樹林帯域に入り、そこに流れる小さな沢を下る。これが、一番やっかいだった。低地に近い環境なのか、ツルンとした岩に苔が生え、体重を任せにくい。一歩一歩というか、半歩半歩という感じだ。

f:id:fujikixblog:20180922084555j:plain

登山靴も底が硬いタイプなので、それもあってつるつる滑る。

これできっとコースタイムが伸びているのだ。この感じが延々と続いた。

一つの沢を途中までおり、トラバース、また似たような沢を降りる。この繰り返しだ。

苦行だった。足首をひねらないように注意しながら降りた。2時間は続いただろうか、やっと大きな沢に出た。地図上はここから等高線の間隔が広い。あとはなだらかな斜面のはずだ。

先程のヘルメット団がいた。右手に向かえばクライミングコース。左手は下山コース。

左手に降りていった。どうやら、ガイドツアーだったようだ。

私達も同じく左手に進む。道というより川の中を下る。振り返って考えると、このコースを逆に登るのは、かなり厳しい。目的がトレーニング以外では使う必要はない。上にロープウェイがありそうな登りコースだ。横尾コースの必要エネルギーとは比べ物にならないだろう。となるとあの老夫婦は本当にすごかったようだ。

横尾からならば、ほとんど歩くだけで「登る」という印象はなく涸沢につける。よくできた登山道だ。

f:id:fujikixblog:20180922084730j:plain

沢をしばらく降りると、見えてきた。橋が。

昨日見た「新谷橋」だ。あの橋を渡ると、今回の次の目的地、徳沢に着く。

橋を渡る。まさかこの橋をわたるときがこんなに早く来るとは思わなかった。

f:id:fujikixblog:20180922084804j:plain

橋を渡り終え、しばらくすると、見慣れた茶色い建物が見えてきた。

徳沢に帰ってきた。

f:id:fujikixblog:20180922085343j:plain

 

つづく

www.yamakamera.com

 

 

 

 

 

 

 

 

北穂高岳敗走記 その4  涸沢到着編

ここまでくれば、後はただ、進むだけだ。

雨は一向に止む気配はなく、しだいにその雨は強くなってきた気がする。

しばらく休憩する。周りには同じく休憩している人がちらほらいる。それにしてもこの雨は、ほんとに止まないのだろうか。明日から晴れるのだろうか。

 

f:id:fujikixblog:20200102101138j:plain

前回

www.yamakamera.com

休憩の後、出発だ。斜面をしばらく登り、そこからは緩やかな坂道、沢沿いを歩くのだが、石はある程度平たく、足は置きやすい。

f:id:fujikixblog:20180921093138j:plain

しばらくして、傘をさして歩くことにした。風は若干あるものの、傘が飛ばされる程度ではない。

GWの雪道以来のこの涸沢までの道、通った記憶がある場所と、こんなところ通ったけな、という場所が入り交じる。前回は雪の下は土だと思っていたのだが、石の道だとは驚いた。

f:id:fujikixblog:20180921093200j:plain

ペースが次第に落ちてきた。休憩後から相方が先頭にたって彼女のペースで進んでいるのだが、若干ゆっくりになっている。そしてそれは20歩に一回休憩を挟むようなり、そしてその休憩は長くなってきた。涸沢まで30分から1時間ぐらいだろうか。少しづつでいいから進めば、そのうち着くので無理はしない。充分休んでも大丈夫だ。

f:id:fujikixblog:20180921093241j:plain

相方のザックから、重いものを取り出し、こちらのザックに入るだけ詰め込む。

少しは楽になったかもしれない。だが、雨のため、多少水を吸い、ザック自体が重くなっているらしい。もうすこしだ。頑張ってほしい。

ここから徳沢に引き返していいが、進んでもいい。おそらく進んだほうが楽だ。

相方のモチベーションは低く、完全に雨にやられていた。相方もGWのこの道を経験している。残雪期のそれよりはしんどいらしい。私の感想とは逆だった。

休憩の後、涸沢に進み始めた。先程よりは、テンポがよい。聞くところによるとやはり幾分かは軽くなって楽なようだ。この気持ちが続いているうちにゴールに着くことを願った。反省、疲れは両者50:50であるほうが、共有できる。もちろんすべて安全側の範囲内での話だが、体力の差を十分考慮し、雨の疲弊も考え、持てるだけ私が持つべきだった。次回からの荷物割当はそうしようと決めた。恐るべし雨の作用。

雨と雲のためGPSが効いていない。現在地から目的地の距離がどれくらいか、知らせることができなかった。「もうすこし」という言葉は3回ぐらい使うとそれ以上は逆効果なので、悩む。

GWのころは目的地が見えつつ近づかなかい状況にもやもやした。今回もそんな感じかなと思っていたのだが、雲のせいか、夏道のせいか、山小屋はいっこうに見えなかった。

沢を渡り、看板が見えた。「↖涸沢ヒュッテ、涸沢小屋↗」と書かれている。

地図を参照すると、もうすぐだということがわかった。

もう目の前に来ていた。その手前で、凹んでいたのだ。

そして10分ぐらい林の中を歩いたであろうか、目の前に急に建物が現れた。

暗がりの海上、小舟に乗って漂流していると、急に大きな客船が目の前に現れたかのようだった。

f:id:fujikixblog:20180921093345j:plain

正面から入るのかと思ったら、西側の脇からヒュッテに入る。こんなコースだったのか。

着いた。

f:id:fujikixblog:20180921093403j:plain

食堂の周辺には人が雨の中、食事を楽しんだり、ものを買ってたりしている。

その中を抜け、テント場に向かう。

涸沢小屋の方を見ると、その右の沢、北穂高に登るルートは滝と川になっていた。なかなかの雨量だ。

f:id:fujikixblog:20180921093454j:plain

 

雨なので、オープンデッキで休むこともできない。とにかく濡れていない場所を作り、濡れていない服に着替えたかった。

テント場で程よい場所を見つけて、テントを張る。すでにコンパネが置かれている場所だったので基礎づくりは無く済んだ。

雨の中のテント張りはなかなかつらい。いつもより時間をかけて完成した。

服を着替える。外はまだ雨が降っている。時間は4時を回っていた。

食堂エリアでご飯を作ることにした。

12人ぐらい座れるその席は来たときから満員だった。行ってみると、まだ席は空いていなかった。宿泊ではないので、あたたかそうな室内には入れない。

暫く待つ。15分くらい後、一組が食事を終え、席を立った。そこに座る。

椅子というのは素晴らしい。心地よかった。

パスタを作った。

そそくさと食べ終え、テントに戻った。

涸沢までの道中、相方が疲れ果てているとき、帰りの距離に不安を覚え、「もし明後日もこんな雨だったら、涸沢から上高地まで、一日で降りれる気がしない。」と言っていた。確かにそうかもしれない。それほど相方は疲れていた。

明日からの穂高岳はまず晴れていても登らないほうが良いようだ。というのも、例えば早朝から登って午後に降りてきて、テントを片付け、そこから横尾か徳沢に明日中に降りる、そうすれば三日目は雨でも楽な行程になるのだが、逆にその方が明日、体力的に、時間的にそうとう難しい。そもそも、相方に穂高に登るモチベーションは無くなっている。そんな気持ちで絶対に山に登る訳にはいかない。置いて一人で行くわけにもいかない。たとえ一人で登ったとしても、明日の下山のタイムスケジュールはさほど変わらない、雨が降っていたらなおさらだ。だが、明日、相方のテンションと天気が回復している可能性もないこともない。

そんなことを考えながら、ポツポツと雨音を立て、ゆさゆさと風で揺れる涸沢のテントでねむりについた。

f:id:fujikixblog:20180921093513j:plain

f:id:fujikixblog:20180921101749j:plain

つづく
 

 

www.yamakamera.com