山と僕とカメラ

登山初心者のバタバタ日記

六甲山、表から登るか裏から登るか(前編)

正月も明け、日常の忙しさも戻ってきた。そんな肌寒い日、私は六甲山に向かっていた。

フリーのカメラマン、暇な時は山に登って、カップラーメンをすすり、コーヒーを飲むのが幸せと思い込んでいるめでたい男である。

六甲山、それは宝塚から須磨まで東西に伸びる稜線の長い山々。様々なコースからバラエティに富む登山が楽しめる事で有名な関西の登山客で賑わう山。多くの尾根筋や谷筋があり、難易度の異なるルートができており、飽きる事はない。ちなみに「谷」は西日本、「沢」は東日本で多く使われるとか。六甲山といえば、かの加藤文太郎が縦走をしたという事でも有名。そして登山以外にも楽しめたり。頂上まで行けるロープウェイがたくさんあり、ドライブウェイもあるので、汗をかかずとも観光客や行楽を楽しめる、まさに空中庭園の六甲山でもある。ここを訪れてない関西人はもしかしたら、1人もいないのではないだろうか。とはいえ、約1000mの標高をほぼ海抜0メートルから急ピッチで上がるのですから、こと登山に関しては、コースによっては難易度の高い場所もある。

ちなみに六甲山の「六甲」とは、カブトのような山が6つあったに違いないと、勝手に思ってます。調べたことが無いから、本当の事は知らないが。

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わたしは普段、六甲山の登山は「芦屋川」というしゃれた駅前から登り、そして高級外国車が立ち並びシンデレラ城のあるお庭のある家々の横を通り、登山口に入るという、いわゆるメジャーなコースから入る。しかし、この日、私は、いつもの芦屋や神戸の南側から登るのではなくて、北側、つまり有馬温泉をスタート地点として電車に乗っていた。いつもの逆コースのような感じだ。

その当日まで、私はいくつもの情報をインターネットで調べて、「ヨシこの日だ!!」という日に合わせてのこの決行だった。

季節は冬です。当然、まだまだ寒い日。雪も所々かぶっている。なんでこんな日に、いや寒いからこそ、この登山だったので、文句は言えない。

冬季は、雪が溶ける前に、登山を開始します。日が当たると、地面の雪が溶け、ズルズルになってしまう。この日も、なるべく早くスタートしたかったので、朝焼け前のまだ暗い中、家を出発した。国鉄の電車を三ノ宮駅で乗り換えて、そのまま地下にエスカレーターで降り、地下鉄で有馬温泉駅に向かった。その乗り換えた電車には、最初は多くのサラリーマンが乗っていた。朝早かったので、私はしだいに眠気が襲い、うとうとし、はっと気がつけば車内はサラリーマンと入れ替わったように、登山の人と、観光の人だけになっていた。登山者の乗客、彼らは私と考える事は同じなのだろうか、はたまた違う登山をするのだろうか。わたしには何もわからなかった。ただただ、全てがはじめての私は、皆さんの格好をまじまじと見つめ、自分の用意に間違いないか、ドキドキしながら、ただ雪の中を進む電車に乗っていた。

 

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終着駅の有馬温泉駅で下車した。有馬温泉街、いつもは、下山直後、疲れ切って温泉に入る街、そこをこれから意気揚々と入山する、不思議な感覚だった。

道は昨夜の寒さと日々の圧雪で凍っていた。さすが有馬、いつもの神戸とは気候が違うな、まるで雪国だな、これはもうプチトリップですなと、感心しつつ歩いていた。いつもとは逆方向なので、左右を間違え、違う方角に度々進んでしまいまいそうにる。まだ街中の途中、山の中なら致命的だ。こりゃ自分はまだまだだなと、反省。そんな新鮮な反省が全く反映されず、全く見覚えない通りに出たところで、「あ、やってしまった」と、気がつき、はい、引き返そう、と振り向いたら、明らかに私についてきてしまってたであろう、見知らぬ登山者2人組がいるではないでか。すまぬ、この先は行き止まりじゃぞ。と、念じつつ、もしかしたら、この行き止まりの先にこそ、この二人には目的があるのかもしれない、そう、壁の先に、魔法の世界への入り口があるのかも。いやいや、待てよ、と言うことは、私は彼らに、余計に喋りかけてはいけない、へんな魔法で石にされてしまう、というわけで、私は敢えて何も言わず、すれ違った。魔法の国、行きたかった。

彼らの無事のリスタート復帰を願いつつ、見覚えのある通り沿いに戻り、ややリラックスの面持ち。心の準備は整った。

街中最後の急な坂道を終え、しばらく車道脇を歩いて、神社らしきものがある登山口に到着しました。そこには広場があり、すでに何人もの人が雪山登山の準備をしていた。私も、慣れたように見せかけ、チェーンスパイクとゲーターをつけ、グローブを装着し準備を整えた。

ここでは皆さんが、お互い知り合いなのか、いろんな会話をして情報を得ておりました。私はふむふむと耳を傾けて、有益かつ即効性のある情報はないかとCIAばりの諜報活動をした。その顔が妙だったのか、ひとりのおじさんが語りかけてきた。

「すみません、おひとりですか?」

私は、すこしびっくりしながらも

「はい、そーなんです!初めてなんで、もうドキドキですよー、よく来られるんですか?

とやや喰いつき気味で答えた。なにしろ、ソロは孤独な生き物なのだ。

そのおじさんは優しい顔つきで

「そうだねー、何回目になるかね。でも、今年は久々にいいらしいですよー。」

と、微笑みとともに、大いなる希望を私にくださった。

「おー!楽しみですねー!、早く行きたいです!でも、私は道に自信ないのでゆっくり行きますわ。」と控えめに『わたしひとりで登山します』的な事を言うと、

「そっか、でも、道を間違えたら大変だから、私と一緒にどうですか?私はほら、こんなんだから、ゆっくり行きますけど良いですか?」

と答えてくださった。

この時、私はこのおんじに一目惚れしてしまったのだ。

「私でよければ是非!!」とプロポーズされた初々しい女の子みたいな返事をしてしまった。

というわけで、平日、男二人で、六甲山を登る事になった。

 

(明日へ続く。)