山と僕とカメラ

登山初心者のバタバタ日記

立山縦走その5 とうとう出発編

見渡す限り、右を見ても左を見ても後ろを見ても山、山、山。これこそが立山連峰だ。

こんな絶景がみえる場所まで汗ひとつかかずに来れるすこしずっこいのも含めて、立山のいいところだと思う。富士山だって5合目からだ。駿河湾田子ノ浦から富士山に登るツワモノもいるらしい。ここも称名滝の下から這い上がって来た人もきっといるはずだ。すごすぎる。

 

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外に出ると、水が湧いている場所がある。そこで皆、1日分の水を確保している。

「ヒャッホー冷たいーー」

そうなのだ、立山からの雪解け水なのか、とても冷たくて気持ちいい。ミネラルもたっぷり含んでいるだろう。これを命の水と言わないで何と言おう。

水は袋状の入れ物に入れ、ザックに入れてチューブで飲めるタイプを使っている。いわゆるハイドレーションだ。さらにペットボトルをショルダーハーネスに付けている。これだけで2.5キロは重くなってしまうが、これが無いと死んでしまうので、致し方ない。

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ザック選びは難しい。アウトドア用品店で、ザックを買う時、いいシルエットで背負い心地も良い感じで、それを購入するとしよう。それを実際に、出発前に実際の荷物をパッキングし、背負ってみる。購入時のあのトキメキとは裏腹に、何とも、憎たらしい重さを感じるのだ。シルエットに可愛げは全くない。ちょうどいい膨らみなんて、いらない。なるべく凹んで軽くなってほしい。

「おー、これにまだ水が入るんか」

と、出発前から凹んでしまわぬように、日頃から、生活はザックして、機材を詰め込んで仕事している。日頃の方がもちろん重い。でも、あまり効果はないような気がする。

今回のザックは、オサンティメーカーなのか、ガチなのかわからないメーカー「ハイパーライトマウンテンギア」だ。

強烈に軽い。何も入れずに背負ってたら、忘れてそのまま風呂に入りそうなぐらい軽い。というのも、生地はもちろん紙みたいな素材で、まあでも強い性質なはずであるが、それにファスナーや、ごついポケットなど、便利な機能のパーツは一切ない。あるのは大きな口の袋と、周りを網でかこったポケットである。いわゆるウルトラライト系のザックである。雪山以外のトレッキングはこれで十分だ。容量も大きくないので、自然と荷物も減る工夫をすることになる。荷物というものは、重くなればどんどん大きく重くなるし、軽くすればどんどん小さく軽くなる。不思議だ。

食事は全部「沸かすだけ」でできるものばかりだ。炒めたり、煮たりはしない。これが一番軽量化に貢献しているのかもしれない。フリーズドライアルファ米、カップ麺などは基本的に「乾燥」している。ということは水分を含んでいないのだ。すなわち軽い、という事である。何日も続けてこれは精神的にしんどいが、一泊ならば何の問題もない。

さあ、やっとこさ、出発である。正面に雄山が見える。という事は私たちの行く先は7時の方向の雷鳥沢だ。

しばらくは呑気な遊歩道が続く。日傘をさしている優雅なお客さんも多い。ヘロヘロに疲れ切った人もいる。面白い光景だ。河童橋付近の上高地に似ている。ニコニコお土産を持って歩いている人の横で、ゴルゴ並みのマジ顔で一歩一歩、歩いている人もいる。この立山の遊歩道は、なぜが歩きにくい。石畳の隙間が広く、少し間違えば、グギッと足首をやってしまいかねない。慎重に足元を見ながら進む。

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先程から右手には大きな青い池が見えている。みくりが池だ。透明度の高い雪解け水でできた池は、青空を反射し、より青みを増している。目玉のように周りは雪で囲まれている。綺麗な丸が、描かれている。

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皆ここで写真を撮る。私も撮る。

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とはいえ、あんまりキョロキョロしてられない。ここで捻挫は勘弁だ。

「全然山見て歩けないね」

「足、痛めたら元も子もないからね、しばし辛抱」

憎っくき遊歩道はそのまま次第に下りの階段となる。

下には小さくテントが張られている広場がある。まずあそこのテント場まで、100メートルほど、階段で降りて、その先の目線よりはるかに高い山を登り返すわけだ。100メートルというのは距離ではなく、高低差だ。山に登り慣れてない以前の時期の私だったら、ありえないルートで即却下だ。だが今、私は精神的には慣れてきたのだ、何度も、降りて登るを繰り返す尾根に絶望感を抱いただろう。そうだ、私は強くなった。はずだった。

逆方向、テント場方面から登ってくる登山者はみな、息絶え絶えだ。瀕死だ。私も、逆ルートなら同じ顔をしていただろう。最後の最後に地獄の登り、大阪マラソンを走ったことがある人なら、あの35キロ地点の大きな登りの橋を想像してほしい、あれの10倍はある坂だ。なーむー。

数時間後には、向かいの山の稜線で同じように辛い顔をしているだろう事を想像しないようにしながらテント場を抜ける。ここは本当にいいテント場だろう。隣に温泉があり、周りは山々に囲まれている。私たちも、スケジュールに余裕があれば、ここにもよる予定だった。がしかし、日程が短いのでここにはテントは貼らずにすぐに帰る予定にした。

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テント場を抜けると橋がある。これがまた可愛い橋だ。いかにもアルプス!っていう感じでワクワク感がある。ほとんどの人は逆回りだろうから、「やっと、やっと帰ってきた、、、ただいま、、、」というお迎えの橋でもある。浄土橋というらしい。

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その橋を越えると、川沿い対岸に大きな雪の壁が見えた。そう3メートルはあるだろうか、まだこんなに積もっているとは、日本の7月とは思えない。

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登山道に入る。斜面だ。いきなり雪道歩きだ。いやっほう。と思ったらけっこうなズルズルの道で歩きにくい、とはいえアイゼンを装着する距離でも深さでもない。300メートルほど進むと、尾根に上がってしまい、雪道ではなくなるのだ。

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ここは我慢と黙々と歩く。上から駆け足で降りて来るトレイルランナー達がいた。真っ黒に日焼けしたいかにもな雰囲気だ。彼らの一人が膝やふくらはぎに雪を押し付けている。なるほどアイシングか。素晴らしい。

その人達とすれ違う、お疲れ様でした。雪の坂道はまだまだ続く。

と思ったらあろうかとか、さっきの屈曲なトレイルランナーズが追い越して登ってきた。

「え?!また登るんですか?」

と思わず聞いてしまった。

「はい!まだ上にメンバーがいるのでそれまでここで!」

ここで何をしようというのか、彼らは駆け上がり、消えていった。どんな心臓してるんだろう。

ようやく雪渓をぬけ、尾根に上がる。急にむわっと暑くなる。さっきまでは雪のおかげで涼しかったのだ。それが無くなり、ただの蒸し暑い夏となった。とはいえ18度くらいだからじゅうぶん涼しいはずなのだが、人間とはすぐに環境に慣れるダメな生き物だ。

降りて来る人が多い。登る人より多い。

ということは時刻的に遅めなのだ。山を越えさらに行った先の目的地、剱岳から降りてきた人たちだ。皆満足げなお顔をしている。その人達と入れ違いながら山を上がる。この山は特に名前はないんだろう。頂上というか、コルの状態の稜線が一旦の目的地である。そこに小屋があり、そこで昼飯を取る予定だ。

お花が咲いている。苦しいときの高山植物は本当に心が安らぐ。なんとなくお花の写真とかの気分もわかるようになってきた、わたくし。

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時間は充分にある。ゆっくりゆっくり上がる。

あとでいつも思うが、この登って行くときの思い出が、あまりない。ただ、ただ上がっているのだろう。右に時には左に曲がりながら登る。たまに下を見る。テント場が小さく見える。傾斜角は45度なんてあるわけではないので、テント場が小さく見えるのは、登ったからというよりも、遠くに離れたから、というのが正しい。

すこしは涼しくなってきた。お昼ご飯まであと少し。がんばろう。あとどれくらいだろう。パートナーは、ヒーヒー言っているが、「あと少しだよと」嘘をつき、励ます。

という事を何度か繰り返していると、雷鳥を見ないまま、頂上の建物が見えてきた。剱御前小舎だ。

今回のこの登りは本当にキツかった。何故だかわからないが、荷物も軽くしてるのだが、やたらとキツかった。

すと、振り返ると周りの景色もさらに雄大になっていた。

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「やったーー!地獄が終わったー!」

「わーいわーい」

そう、このルートで周回するというのは、登りはもうこれで終わりなのだ、あとは軽いアップダウンがあるだけだ。幸せの時間の始まりである。

頂上稜線に出ると人がいっぱいいた。皆思い思いの場所でご飯を食べている。

と、その向こうに剱岳がそびえ立っていた。

「すげー、すげーよー」

「すごいねー、大きいねー」

「写真、写真」

とそそくさと名峰の写真を撮る。

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「さあ、ご飯ご飯、どこで食べようか?」

「あの建物の木陰なんかどうでしょう?

「はい!そこで」

昼ごはんはカップラーメンとアルファ米の炊き込みご飯だ。

チャッチャッと、ザックから食材と器具を出す。ハイドレーションから水を入れるタイミングはパートナーはいつも素早い。この時だけは本当に素早い。理由は読めているがあえて言わない。

テーブルを出し、ジェットボイルで湯を沸かす。すぐに沸く。このジェットボイルは前回の穂高でも大活躍したので今回も抜擢された。多少重くなるシステムだが、短時間で湯がわくというのはなによりもありがたい。ガスも少量で賄える。

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沸き立ったお湯をカップラーメンに注ぐ。すぐにでも食べたいが3分待つ。すでにいい匂いがするのに待つ3分は長い。がしかし3分待つ。

1分

2分

よし、できた!!

と、まさに食べようとしたその時だ。

群衆の向こうから、黒い大柄の男がこっちに何かって手を振りながら奇声をあげて走ってくる。

こ、こわい、、そんなにもお腹が空いているならあげてもいい。なんだなんだ??

パートナーはこれまた奇声あげている。

はたと気がついた。なんと、あの人達だった。

 

続く

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