山と僕とカメラ

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登山初心者のバタバタ日記

立山縦走 その9 「一日目の夜、二日目の朝」編

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目が覚めた。何時間寝ただろうか。横になってても、頭が痛くてしばらく眠れなく動けなかった。いつのまにかお薬が効いて、眠っていたのか。今は状態は良く、頭痛も治まっていた。あの痛みは、なんだったんだろう。

とにかく良くなったし、じゅうぶん横になったので、元気いっぱいだ。 

 

前回

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感覚がはっきりしてきた。外は暗い。もうすっかり夜のようだ。今宵は星が出ていることを願おう。

テントのファスナーを開け外を見る。

よし、星がいっぱいある。よしよし。

ヘッドライトの光を頼りにカメラと三脚の用意をする。三脚は直前にヨドバシカメラで買ったミニ三脚だ。忘れてきたから急遽手配した。これでこの三脚は3つめとなる。まあ、いろんなことに使えるのでいくつあっても、問題ない。

カメラはソニーのa7iii という小型のミラーレスカメラだ。小型の割にはフルサイズで撮れるという素晴らしい機材である。ミラーレスに関しては、ニコンcanonの追従が最近噂になっているが、とりあえずsonyも良いカメラだ。

雪の上で三脚を構える。外は全く寒くない。暖かい。生温い風が南のほうから吹いてくる。雪なのに、夜なのに不思議だった。

正面の剱岳が、真っ黒な姿を見せている。月は出ていないが、瞬く星の影響で、山のシルエットはわかる。

天の川も、見えている。

天の川というのは、我が銀河系の星々を地球からみた姿の一部である。全く宇宙は広い。

その天の川を写真でおさめる。

今回は自転を追従する機械は持ってきていないので、高感度にして、なるべく早いシャッターで撮る。絞りが明るいのと、高感度耐性があるカメラシステムが有利だ。今回はレンズはF4なので、全く有利ではない。F1.8くらいが望ましかった。秒数は15秒くらいが良いだろう。それ以上だと星が流れてしまう。地球は、自転により秒数が長いほど、写す星の点は、線になってしまう。それが何時間かかけると、同心円のよく星空写真にあるような写真になる。今回はそれは撮らずに、ちゃっちゃと天の川を撮る。

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と、そうこうしているうちに時間が経っていく。実際は少し冷えているのだろうか、肌寒くなってきた。

なんとなく撮れたので、撮影はこれくらいにして、引き上げる。明日は3時起きでテントをたたんで出発だ。

カメラを片付けて、再度寝に入る。やはりテントの中は暖かい。夏用のシュラフだったが、それでも暑いので、何も纏わずに寝ることにした。

あと、3時間くらいは寝れる。いや3時間しか寝れない。いや、どっちでもいい。とにかく寝よう。その前にカメラで撮った写真をスマホに転送し確認していると、いつの間にか時間が過ぎていく。いかんいかん。寝なきゃ。

3時過ぎに目覚ましが鳴る。隣近所にご迷惑半端ないであろう。すみませんでした。

もぞもぞと起きる。

なるべく無言で、お片づけをする。何張りかのテントも、中で光が動いている。

登山、トレッキングは太陽の出ている明るい時間、特に天気の安定している午前中をフル活用して行動することが基本である。そのため、日の出前の時間から起きて、出発する事も当たり前だ。そんな当たり前の事を、最近やっとわかった気がする。

テントを片付けいると次第に目が慣れたのか、明るくなってきたのか、幾分視界が良くなってきた。

Kさんたちもテントも畳んでいる。流石にその畳む姿は、山に慣れた人達の手さばき足さばきだ。無駄がない。そんな気がする。

私たちは、一応どうにか暗闇でテントを畳み終え、とにかく忘れ物だけはないように気をつけながら作業を終えた。

荷物をまとめて、出発する。昨日きた道は途中まで同じだ。途中で東に折れ、別山を目指すルートだ。

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雪の中をヘッドライトを点灯しながら歩く。きがつけばもう、明るい。ヘッドライトをつけているとその明るさに慣れてしまって、周りの微妙な暗さというか明るさには当然順応できない。というわけで、もう十分明るいのでライトを切った。

静かな薄い青色に包まれていた。

振り返れば剱岳の山肌がわかるようにもなっていた。

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朝のこういった時間は経過がものすごく早い。2分3分でどんどん明るくなる。

 

分岐点についた。後方を見るとKさんたちも来ている。

たしか彼らは、私達とはルートが違う。まっすぐ雷鳥沢に向かうはずだ。

もちろん彼らを待つ。それにしてもペースが早い。もうついた。

「ありがとうねー!今回も前回も。」

とか

「また、連絡しますねー!写真送りますー。」

とか、なんて言葉を交わしたか、はっきり一言一句は、覚えてはいないが感謝と感動を伝え、握手をし、別れた。

遠くなる彼らの方から手を振っているのが見える。こちらも手を振る。彼は延々と手を振っている。

いつまでも手を振り続けるのはそのKさんの滲み出る可愛らしい性格のせいだ。

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ありがとう。

きっとまたどこかで会えると直感しているので、別れは寂しくない。とりあえず山でなくとも、大阪マラソンの応援で会えるはずだ。

 

この別山までの斜面はズルズルザレザレだとKさんに教えてもらっていた。

たしかにザレザレだ。となりの雪渓を歩いた方がいいかもとも言われたが、なかなかな急角度だ。このまま行くことにした。

しんどい、胸が痛い。

斜面自体は急なだけにそんなに長くは続かなく、稜線が見えてきた。

計画ではあの稜線の先にある別山の山頂で朝ごはんを食べる。「別山」とは、れっきとした名前で「べっさん」と読むらしい。

きのうまで「べつやま」と覚えていた。山の名前は難しい。最近出会った名前でも、光岳、大天井岳。てかりだけ、おてんしょうだけ、と中々の難読だ。

最後の斜面を登り切る。向こう側に室堂平が見える。雪と岩場がまだら模様を作っていて、美しい。そしてきた道を振り返る。

さっきまでいたテント場がとても小さくみえる。その向こうには今までで一番スタイルの良い剱岳があった。

カールに包まれた優しい雪渓の向こうに、ズドンと構える荒々しくも頼もしい姿の剱岳。今度はスケジュールをたっぷり取ってあの岩山に登ろう。

頂上にはちいさな祠がある。まずは、今日の安全登山のお祈りをする。

ベンチに腰掛け、朝食の準備をする。

東側から、眩しい光が顔に当たった。

日の出である。

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剱岳は東の山が影になり、まだ日は当たっていない。

今日もいい天気になりそうだ。

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朝食は、パンとコーヒーだ。ウインナーを茹でて、パンに挟む。美味い。

コーヒーを飲んでいると、太陽が次第に剣岳の麓を照らし始めた。

尾根沿いに茂った草木の緑、谷あいの白い雪渓、ゴツゴツした岩肌、がはっきりと見える。先ほどまでの青一色の山とはまるで違う。

今日初めて見る、「彩色」である。この言い方が合っているのかわからない。

まだ、光が当たっていない場所もある、そこはまだ夜だ。だが、日が当たっているところはもう、昼のように明るい。

 

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 夢中でカメラのシャッターを切った。この山にも美しい朝が運ばれようとしている。

 

 と、ふと相方の方を見た。

泣いていた。

 

この景色を見て感動しない人はいない、と思って

「きれいだよねーー、ホントに」

と声を掛ける。

「そ、そうなんだけど、ブヒ、この、バターバトラーのフィナンシェが、美味しすぎて、この味で泣いてしもうた、ブヒブヒ。」

まじっすか。

これでもかというくらい、どこまでも、花より団子の人であった。

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