山と僕とカメラ

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登山初心者のバタバタ日記

剱岳の夏登山 その9 水平歩道 (阿曽原温泉小屋〜水平歩道〜欅平)

阿曽原温泉小屋

仙人谷ダム建設のために資材運搬用のトロッコ軌道(現関西電力黒部専用鉄道)トンネルが掘削された際、阿曽原谷付近で160℃を超える極めて高温の岩盤に行き当たり工事が難航した。この区間は「高熱隧道」と呼ばれ、トンネル開通後に導水管の設置などで若干温度は下がったものの、それでも依然として40℃前後を保っている。風呂はこのトンネルにつながる坑口のすぐ脇にあり、湯はトンネル内から引かれている

このトンネル掘削に際して阿曽原谷にコンクリート造り6階建(2階までは鉄筋入り)の作業員宿舎が建設されたが、トンネルが貫通した後の1940年1月8日未明、阿曽原谷で発生した泡雪崩の直撃を受けて倒壊、さらに直後に発生した火災によって多くの死傷者を出した。現在の阿曽原温泉小屋はこの宿舎跡地に設置されており]、現在でも旧宿舎の基礎部分が残っているのが確認できる。(Wikiより引用)

 

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 一泊二食10000円、テント泊一人800円

阿曽原温泉小屋に、なんと、自動販売機があった。昨日の仙人小屋の自動販売システムとは違う、見慣れた四角い機械の箱だ。なんとも久々に見る近代機械に興奮。コインを入れると、冷えたビールになって出てくるのだ。当たり前じゃねえからな、と、どこかで聞いたフレーズが脳裏の片隅でささやく。とりあえず、一杯いただく。美味しい。

山小屋とテント場は少し離れている。階段で少々下りたところにテント場がある。この距離感は不便かなと思ったら、テント場に専用の炊事場とトイレがあった。まさかの予想外だったが、かつて公営か何かのキャンプ場として運営した経歴があるのだろう。そういった名残があった。

テント場は広い、奥のほうが水が溜まらない、と宿の人が教えてくれた。そのとおりに私達は奥の方にテントを張った。

その名の通り、ここ阿曽原にも秘境系温泉がある。このテント場をさらに下りたところにあるらしい。結構な距離のようだ。 

いちおう日本で一番危険な温泉と称されている。欅平からは、明日通る12キロに渡る地獄の水平歩道を通らないと来れないからだ。

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下りてみると、道は、登山道。転ばないように下りないといけない。おすすめはきちんとした登山靴。サンダルで行くと大変かも。

温泉の湯船は大きい。

ゆっくり足を伸ばせるどころか、泳げるぐらい広い。下には川が流れている。目の前に人工物は一切ない。湯船に入ると山の中にぽつんと佇んでいられる空間に癒やされる。山側はトンネルがあった。そういえばテント場にもトンネルがあった。これらもきっと黒四ダム開発の名残だろう。

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少し雨が降ってきた。今夜は台風が日本にやってくる日だ。この地域には直接は小なさそうではあるが、雨量や風はいつもよりも増える確率が上がるはずだ。

そうなる前にテント場に戻る。やはり上りはきつい。せっかく洗い流した汗をまた書かないように、ゆっくりゆっくり登る。

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台風の備え

テントが飛んでいかないようにK氏がいつも以上に石で補強していた。私も習ってすべてのペグに石を巻きつけた。おそらく石を運ぶための大八車が置かれていたので、使わせていただいた。食事は何を食べたが覚えていないが、カップラーメンと、パスタを食べた記憶がある。でも全く覚えていない。今回は殆ど食事の写真がないが、そういうものだと思う。登山の食事など、見てキレイなものでは無い。登山の食事がオサレキャンプとは違う点だ。

夕方になると、眠気とともに外は本格的な雨になり始めていた。明日、ここから出発するが、いきなり丸太でできた可愛らしい橋を渡ることになる。どんな橋か下見に行ってみた。一応しっかりはできてそうだし、もしこれが流れるようならこの後の水平歩道はもっと過酷な状況なはずなので、強制的にスタート中止というのもあながち間違ってない。テントに戻ると、豪雨や暴風で上の山小屋にすぐ避難できるように入念にパッキングをした。台風直撃前夜の家と同じ雰囲気だ。ただし、あえてなぜ布切れの中にいるのだろうと、思ってしまう。

雨はどんどん強くなり、風もさらに増してきた。ただし、睡魔も増しているので気にせず寝る。

夜中、何度か起きた。風雨は少し収まりかけていた。このまま収まってくれればよいなと、思った。どうやら急な避難も不要な感じだった。

何度か起きているうちに次第に外が明るくなってきた。少し小雨がふる程度の天気が続いていた。

何事も被害なく、夜は過ぎ去ったようで安堵した。

 台風一過

曇り空の朝、朝ごはんを済ませ、テントを畳み出発の準備を整える。雨天モードの準備、ザックカバーにレインパンツ、スパッツと完全防備。荷物も多いので、スリップ防止のために、チェーンスパイクを付けた。

水平歩道に出発

本日は水平歩道を通って欅平に行く。これで今回の登山は終了だ。

まず、いきなり、木の橋を2本渡る。昨日見た橋だ。水量は増えていなかった。よかった。

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 ここからはほぼ水平に等高線つたいに黒部川の左岸を通っていく。真下に切り立った岸壁の底を流れる黒部川、そして上を見上げるととんでもない高さまで伸びた岸壁。一体トータルでナンメートルあるのだろう。こんな渓谷は見たこと無い。小雨降る霧の中、私達は進んでいく。左手には各所にセイフティのワイヤーが張られている。このあたりから、完全にダム土木系の工事に変わっているように思われる。こういうのも面白い。職種によって工法やアプローチが違うらしいが、なるほどと思わせる。

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いたるところに滝が出没

雨量が多く、とにかく滝が多い。小さな谷を横切る時は確実に滝行となる。向かいの崖にも滝が流れているのが見えるが、それこそ何百メートルの滝なのだろう。「滝」に認定されるには、通年を通して水が流れていないといけないので、こういう臨時の滝はいくら落差があっても「滝」とはみなされない。

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くり抜かれた数少ない場所で休憩を取る。K氏の休憩を取るタイミングは素晴らしい。

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大きな雪渓があった。

あれはどうやって越えるのだろう。まさかトラバースするのか、死んでしまう。とおもったら、トンネルがあった。

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ヘッドライトを付け、中にはいる。

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ひんやりと冷凍庫だ。周囲の岩には凍った水分が張り付いている。先程まで蒸し暑かったのに、中はこんなに冷えている。なかなかだ。

ザ、水平歩道という感じになったきた。

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ほんとに、よくこんなものを作ったなと感心する。そして、当時とあんまり変わってないっぽい状況にビビる。
それにしても、こういう壮大な景色は人間を小さく見せてくれる。

水平歩道のメイン部分を越えると、次第にギリギリのトラバースは終焉を迎えた。

森の中に入り、暫く行くと、今回最後の高低差の下り坂。

コースタイムが狂ってるんじゃなかろうかという結構な急坂。日帰りの荷物ならまだしも、縦走テント泊の最後の日はこの劇下りは結構辛かった。

がしかし、もうこれで終了だ。身体には諦めてもらいながら下りていく。

上り下りは少ないこの水平歩道、一見楽そうだが、足を踏み外したら即終了の場所が多すぎる。かといって回り道も考えれない。橋も壊れているのが何箇所かあった。これを見て、じゃあ行けるとは安易に思わないでほしい。

どうしても行くならば、雨天の準備、ヘッドライト、体力、そして何より、温泉のためのタオルは決して忘れてはいけない。

そうして私達は無事、欅平に着いた。

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K氏らは、車をピックしに立山駅まで行くので私達とは別れて先に急いで電車に乗った。私達は最後の温泉に入った。じゅうぶん秘境系だが、かれこれ最強の風呂に入ってきた私達には、景色の良い露天風呂、といった感じだ。

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風呂に上がり、駅に向かう。

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後ほど富山駅の寿司屋で待ち合わせだ。

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 トロッコ列車にのる、観光客でいっぱいだ。登山者は、ほとんどいない。

富山地方鉄道に乗り換えて富山駅に行く。

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お寿司は、富山駅の人気店、「廻る富山湾 すし玉」これが回転寿司とは思えない味だ。4人で、無事の登山と再会を祝して祝杯を上げた。

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おしまい。




 

剱岳の夏登山 その8 仙人温泉小屋 (仙人温泉小屋一泊〜阿曽原温泉)

仙人温泉小屋

仙人温泉小屋は、秘境・黒部の中でも最も奥深い位置にある。阿曽原温泉から剣岳への北方稜線には阿曽原温泉小屋、仙人温泉小屋、仙人池ヒュッテ、池の平小屋、と4つの小屋があるがそのどれもが環境とともに個性豊かな山小屋と言わざるをえない。剣沢が喧騒の時期にも、この周辺に訪れる登山者の数は極端に少なく、静かな山旅を楽しむことができる。仙人池から1時間半下ると、仙人温泉の露天風呂が待っている。仙人ダムからだと3時間の登りとなる。 (仙人温泉小屋HPより)

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14時20分 仙人温泉小屋到着

なだれ込むように仙人温泉小屋に入る。そこは質素で落ち着いた空間だった。営業向き、というよりは、田舎の倉庫のようなストイックな雰囲気。今まで立ち寄って来た山小屋は、奥深くなるにつれてしだいにホテルのような雰囲気から、旅館、そして食堂の部屋付き、と雰囲気は変化してきたが、とうとう、「倉庫、寝るスペース着き」という環境に変化した。こじんまりした食事スペースが見えたので、安心した。事前に仙人ヒュッテの人から、私達が行くことを伝えておいてもらえたので、快く出迎えてくれた。料金は一泊二食付きで10000円。宿泊棟は手作り感満載の木造建築、平屋建て。今日は他にも数組が来るらしいので、部屋の奥のスペースを使うようにと案内された。ここに入って、何かクラクラするなあ、と思った。建物がマジックハウスのように歪んでいた。ここは豪雪地帯なので、春が来て小屋開きのたびに積雪で歪んだ建物を毎年直すのだろう。「張り」が何重に修理された跡があった。

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史上最高の露天風呂

お風呂は露天風呂が一つあるだけなので、一時間おきの男女入れ替えシステムだ。少し離れた所に源泉にあってそこから湯気が沸いている。そこからパイプで繋いでここまでひいている。よくよく考えたら、こんな奥深い山奥に露天風呂がある事はすごい事だ。最寄りの文明の場所、欅平から、過酷な水平歩道を使って10時間以上はかかる。もちろん室堂からは私達の通ったようにナン泊もかかる。風呂目当てで来る人がいるかも知れないが、いたとしたらかなりの秘境マニアだ。そんな貴重なお風呂に今日は入れる。

荷を降ろし休憩とお風呂の準備をする。ザックの荷物を開けると、なぜかザックの中が水浸しになっていた。不思議だ。一切雨は降っていない。プラティパスの口が歪んでしまっている。いわゆる開いている。キチンと閉まっていなくて中でその水が漏れ出たようだ。やってしまった。風呂に入る前に、荷物の水拭きと物干しというなんとも言えない作業が待っていた。他のみんなもそれぞれ荷物の整理をして、しばらくすると宿の人が「今日はおそらく君達だけなので広々使ってください。」と言いに来た。なので部屋を存分に使って干した。

そして待望のお風呂だ。

女子チームのお風呂上がりを待ち、早速交代。

ちなみに他のお客さんはいないので、時間交代制は考慮しなくて良いとの事。

脱衣所は広い。その隣に露天風呂があった。

思っていたよりも立派なお風呂でびっくり。湯温はちょうどいいか少しぬるいくらい。足もじゅうぶん伸ばせてリラックスできる。

展望は素晴らしい。ここでは載せれないがこのロケーションで想像できるポーズの写真をK氏と撮りあった。

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のんびりゆっくり温泉に浸かったら、風呂上がりに、勝手にとってコインを置く最先端自動販売システムのビールなどで乾杯。小屋泊は楽チンだ。お金はかかるがテントも建てなくていいし、ご飯も作らなくていい。

以前、「究極のウルトラライトは、小屋泊」という名言を聞いた。たしかに、としか言えない。

庭?のような場所に大きな岩があって、上に登れるようになっている。上は平たくなっていて、寝転がると気持ちいい。しばらく寝た。

食事も美味しい

そこから食堂の準備が見える。思ってたよりもキチンとしたテーブルセッティングで安心した。その後、晩御飯の支度が整ったようで食堂に行く。

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 天麩羅の盛り合わせと、川魚の甘露煮、鮎かイワナ。とてもほっこりする味。とても美味しかった。 ご主人曰く、熊が冬季に小屋を荒らすのが恒例のようで爪痕が残っているのを見せてくれた。熊の毛の皮を少し頂けるという事でありがたく頂戴した。初めて熊の毛を触ったが、両津勘吉の毛髪のように剛毛であった。

明日のパッキングをして、そそくさと就寝。

 

6時 仙人温泉出発

朝、天気は微妙、今日の行程もそう長くはない。のんびり無理せずに進む。

まず、反対斜面の尾根に向かって進む。途中に沢があるので、濡れないように渡ろうとしたら、残念がら、沢に落ちた。早速なけなしの乾いたラスト靴下に交換。昨日のプラティパスが悔やまれる。

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靴下は乾いたものを常に最低2つはあったほうが良い。沢登では全身が濡れてても大丈夫なのになんでだろうか。

7時 雲切新道下り開始

尾根に上がると、もうダムまで下るだけだ。結構急な下り斜面を降りていく。淡々と、結構無言で。荷も重いので余計に。f:id:fujikixblog:20190914134857j:plain

ここは「雲切新道」という名がついている。欅平から来る人たちを苦しめる急登として有名だ。たしかにこの登りは相当きつい。下り2時間半、登り4時間半というコースタイムが物語っている。鎖あり、はしごあり、さらに真砂土のザレ道という一番苦しい条件の登山道を降りていく。本日も相変わらず誰にも会わない。完全に陸の孤島、そして明日は誰か通るのだろうか。そんな気は全くしない。明日はこの時期で一番天気が悪い。台風が来るのだ。確定事項。休憩を何度も重ね、下る。ようやく麓が見えてきた。麓と言っても黒部川だ。しっかり山奥には違いない。

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黒部ダムの電線用トンネルが見えた。感動。

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黒四ダム以外にもすごい土木工事をしてたんだなと、驚愕。

そこからしばらく下りると、ダムが見えてきた。仙人谷ダムだ。誰だ仙人とは。

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それにしてもキレイだ。来てよかった。とキレイ事は今、無事だから言い続けられることだ。丁寧に下りる。 

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少し不思議な光景、写真手前の川はこちらから奥に、写真奥の川は向こうからこちらに流れている。それがほぼ一直線で合流している。どこへ向かうかというと本流の奥の黒部川が左にぐっとUターンしていてそちらに流れていく。荒れたらすごそうだ。

そうこうしていると、やっとこさ、仙人谷ダムに着いた。

9時35分 仙人谷ダム到着

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美しいしか無い。

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上流側と下流側でこんなに違う。きっと上流側の川底も、下流側のようなのだったのだろう、ダムができる前は。

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激下りを終えて一安心の私達御一行。おやつバカ食い。

 10時 ダム出発

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ダムにはトロッコの線路もあった。そして、とっても暑い熱風も出ていた。なんだか凄まじい場所だ。ここから、は一般道、かと思いきや、またしても激上りが待っていた。少しだけど。途中見えた社屋の食堂が羨ましくてたまらなかった。

一気に登る登山道またまた無言で終えて、トラバースに入る。

そして、無事、今夜のテント場、阿曽原温泉についた。

11時10分 阿曽原温泉 到着

天候も悪くなる一方なので、本日はここでテント泊。

 

つづく。

 

 





 

 

剱岳の夏登山 その7 池ノ平から仙人池、そして秘湯の仙人温泉(池ノ平小屋〜仙人温泉)

池ノ平小屋テント泊での2回目の朝が来た。この日の行動計画はまず、ここを出発し、トラバースを仙人峠まで戻る。そして前回来た道とは違い東の方に進む。その先の仙人池ヒュッテを通過し、谷を下って仙人温泉小屋に移動。心地よい天気、本日も晴天なりだ。剱岳が美しい。テントを畳んで出発の準備をする。そういえば和室の「畳」はたたんでるわけではないのになぜ「タタミ」というのだろう。腐ってもないのに「豆腐」と同じなのか。どうなのか。

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8時 池ノ平小屋出発

いつものように気温はしだいに上がっていく。暑くなりそうだ。十分に水を補給する。水は1リットルのナルゲンボトルと2リットルのプラティパス容器。ナルゲンボトルは最初、柿の種を入れていたが、容量の確保で本来の水筒に変化した。さようなら池ノ平小屋。私達は来た道を引き返す。

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仙人峠までは緩い登り坂が続く。右手には剱岳がある。ブッシュでその姿は見え隠れしている。心地よい。一昨日ここを通った時の印象とは随分違う。景色ではなく、疲労感と距離感だ。上り坂なのにもかかわらず来たときほどしんどくない。疲労とはここまで感覚を変えるのか、と思いながら歩く。あっけなく仙人峠に着いた。時間にして45分だ。やはり、一昨日は疲れ切っていた。下りの行きよりも登りの今日の実際通過タイムのほうが速かった。

8時45分 仙人峠ベンチ

仙人峠には大きなベンチがあり、のんびり休憩ができる。何が良いって大きな剱岳が目の前に見えるこの場所は、どこから来ても登りの地点としては最高の休憩場所である。剱岳の見ごたえ最高、結構休憩した。

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9時25分 仙人峠ベンチ出発

ここから道は更に良くなる。木でできた遊歩道が続く。このままずーっとこれなら良いのに、そんなわけないと分かっているが、まだある、まだあるぞと期待に胸膨らませ、陽気に歩いていった。下り道でなだらかな斜面が続く。木立の中をのんびりと進んでいく。この先に仙人池ヒュッテという小屋があり、そこに池がある。というか、見えている。そこの景色がこれまた見ごたえが良いと評判だ。早く着きたい。

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9時45分 仙人池ヒュッテ着

ほどなくして仙人池ヒュッテについた。水は有料。買う。早速仙人池に行ってみる。小屋の目の前にその池はあった。小さいが真正面に見えている剱岳が水面に反射して見えている。鏡池の状態だ。せっかくなので、少し早いが、食事タイム。カップラーメンの中身入れ替えシステム。お湯を沸かして入れるだけで食べれるカップ麺はほんとに便利だ。一体誰が開発したのだろう。日清の創業者に聞いてみたい。

4人で、のんびり食事をしつつ、劔の先に雲が取れるのを待つ。どうしてもせっかくなので、クリーンな姿の剱岳を撮りたかったのだ。待ったかいがあり、無事、それは撮れた。この場所にこの池があるのは必然的である、逆さ劔を写すためにこの池はあるのではなかろうか。縦位置にしたり、横位置にしたりズームアップしたり、広角レンズに交換したり、同じ場所でも高さをかえて、手前を入れたり入れなかったりと、選べる画角はとても多い。雲の様子もドンドン変わっていく。素晴らしい光景だ。

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ずーっといてられる

 

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仙人池、どうしてこんなところに池ができるのだろう。

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仙人池と剱岳

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裏剱の雄姿

 

11時20分 仙人池ヒュッテ出発

 

裏剱に来たならば必見、という見事な景色を堪能することができた。ここからは「下山」というイメージで行動する。実際、結構な下り坂が続く。ザレた岩場の谷をくねくねと曲がりながら下りるのだが、いかんせん浮き石が多い。気をつけながら進む。あいかわらず、荷重と足関節の苦しみにペースが遅れている私。だが、登りとは違ってバランスに気をつけて歩くためのペースなので疲労とはまた違う。けっこうな下り坂だ。さっきまでの快適な遊歩道が懐かしい。と思っていたら、足を滑らしてしまった。左足が乗せた石の摩擦が少なく、荷重が乗せれないまま、前、いや下に落ちそうになった。とっさに左手を地面につけて支える。滑落は免れたが軽い痛みが手のひらの親指の部分にはしった。大した衝撃荷重ではなかったがそれでも最低100キロはある。体勢を立て直し、他の各部を確認したが、痛みはそこだけだった。ゆっくり歩き直す。こころなしかペースが遅くなる。暫く歩くと、水場があったので休憩した。みなが心配してくれている。申しわけない。アイシングにうってつけの水の冷たさだ。痛み止めを飲み、程なく痛みはおさまった。水も補給して再出発。皆さん、下山には注意しよう。「注意一秒、ケガ一生」という言葉があるが、これを「注意一生、ケガ一秒」だと考える人の話を聞いたことがある。どこで聞いたかはもう忘れてしまったが、ほんとにそう思う。

くよくよしても仕方がないので、楽しんで下りる。Mさんが高山植物に詳しく、普段見過ごしているお花の名前や特徴を教えてくれる。心に余裕がある人は違う。

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これはキヌガサソウといって、衣笠に似ていることからそう名付けられたそうだ。不思議な形をしている。

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雪渓の成れの果てのような状況、その脇を進んで降りていく。何度か右岸と左岸を行き来する。結構降りてきたのだが、まだ雪が残っているとは驚きだ。

次第に手の痛みもおさまってきた。ただし、荷が重いのでペースはゆっくり。でも今日は、のんびりと仙人温泉小屋につけばいい。しかも小屋泊だから着いてすぐのんびりお風呂に入れる。ただそのモチベーションのみで前へ進む。

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雪渓の切れ目で少し休憩。相方も膝が痛くなってきたので、アイシング。

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アイシングに見えないが、アイシング。そして出発。

とにかく延々と急な沢を降りていくので負担が大きい。仙人温泉の標高はちょうど二股と同じくらいだ。雪渓沿いから次第に道は山の中に入っていく。そうすると、ゴロゴロとした石の道はなくなるので勾配はぬきにして若干歩きやすくなる。が、結局いまだ封も開けてないナンがやたら重く感じる。これはきっと今回はもう使わない。今夜は仙人の作るご飯を心していただけるはずだ。

とぶつぶつ考えていると、道はトラバースに変わる。そろそろ着くという気配が荷を軽く感じさせる。仙人に会うまでが登山ですよと、足元に目を配り、転ばないように進む。

14時20分 仙人温泉小屋に到着

そして、とうとう仙人温泉小屋に到着。無事到着。疲れた。

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つづく。

 

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剱岳の夏登山 その6 池ノ平で満喫編(池ノ平小屋〜池ノ平山トレッキング)

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池ノ平小屋

池ノ平小屋、剱沢から欅平に抜ける時は、その最短ルート上にはない、仙人峠からの分岐点から池ノ平の方に行くと、剱岳にドンドン近づいていける。そのため北方稜線の前線小屋になっている。

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前回

 

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池ノ平小屋のテント場は小屋のすぐ隣にある。HPでは20張りほどと書いてある。トイレは離れシステムで、洋式と和式がある。水場は小屋の棟の間にあるが、水はふんだんにあるというわけではなさそうだ。幕営料は一人800円。説明などはあまりない。管理人さんが「ノートに書いてある説明文を読むように」と指示されるソリッドなシステムだ。そして、ここは剱岳の北方稜線のベースとなるので、そちらに行く方は宿の人にそのことを知らせておく必要があるとのこと、そう何かあった時のために。ビールや発泡酒などは湧き水に冷やされてある。フルーツ缶詰もあった。

 

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ナンを作るのは大変だった、次回はもうないだろう。

夕食は何だっただろうか、あ、ナンだったかもしれない。この度、乾燥ミンチ肉を美味しく食べるためにカレーをしよう!ということになり、米は飽きているだろうから、ナンを作って焼こうということになった。ナンミックスなるものがこの世には売ってあって、それをコネコネし、焼くシステムだ。今回は2回このナン製作をしたが、一回目はドロドロの生地の小分け作業に難航した。2回目は工夫し、そもそも小分けなどしなくても良いことに気がついて、スプーンですくってフライパンにポン!後は広げて両面焼くという浅知恵のもと、いい感じでドンドン焼けた。だが、隣でK氏がすでに焼いた状態で売られているナンを持ってきていた。そうだ、あれで良かったのだ、と後悔した。

とにかく、その日も何だったか覚えてない夕食を終え、早々に眠った。

早々に眠る理由は、早々に起きて星空が見たかったからだった。

 

池ノ平小屋の夜

そして夜中、目を覚ますとそこには満天の星空があった。月は沈んでいたが、あたりは星だけの光でかすかに明かるさがあった。それほどまでに星が輝いていた。夜は暗いというのは、もしかしたら昔はなかったのかもしれない。

三脚はすでに外に出していた。カメラも準備済みで寝ていたので、ほどなく写真が撮れた。

前日とは違った剱岳の星空を写すことができた。

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この調子なら朝日もきっときれいだろうと、期待を込めて一旦就寝。 

剱岳のモルゲンロートは裏でしか見れない。

日の出前に起きる。三脚にカメラをセットする。テント場からは手前の尾根で全貌が隠れているので、昨日来た道を少し戻る。

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薄紫の空気がだんだん明るくなってくる。しだいに剱岳の上の部分が明るくなってくる。小屋の方から2名、同じ目的であろうこちらにやってきた。軽く挨拶をして画角に視線を戻す。ゆっくりと剱岳が明るくなってくる。いつ曇るかもわからないので、シャッターを押し続ける。相方が様子を見に来てくれた。ちょうどいい時間だ。同時に小さなハエがレンズの前にうろつくようになったので、それもちょうどよかった。相方に追い払ってもらいつつ撮影することができた。

適正なシャッタースピードはドンドン早くなっていく。でないとせっかくの赤色が白けてしまう。フィルム時代なら、各3枚程度露出をかえて撮っていたのだが、デジタルになってモニターに画が出るのでドンピシャで撮れる。それでもせっかく三脚で撮ってるので開けめと締めを撮っておく。後で何かの役に立つかもしれないし、そもそもフィルムを消費しないので良い。それにしてもキレイだ。表からは見れないモルゲンロート、やや左から当たる太陽の光はゴツゴツした剱岳の岩肌にコントラストを与える。ああ、これを見に来たんだと思えた。

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続いてドローン撮影

撮影はある程度で終えて、テントに戻った。ドローンの支度をして、すぐに打ち上げた。池ノ平には文字通り池があり、それに映る剱岳を撮りたかったのだ。

事前に昨日下見飛行を終えていたので位置関係は把握している。

2回のフライトで満足できる撮影ができた。徒歩なら15分くらいかかりそうなところに30秒足らずでいけるのは少しずるい気もする。

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紅の剱岳ショーはすぐに終わり、何事もなかったかのようにまた暑い夏の一日が始まりそうな青空へと変わっていく。

本日はゆっくりできる。今回の行程で一番ゆっくりできる日だ。7時、のんびりと朝食を済ませ、汗で濡れた衣類を干す。

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9時20分、池ノ平山に出発

本日は池ノ平山まで登って降りてのトレッキング。

頂上までのコースタイムは1時間20分だから問題ない。

序盤少しだけ藪っぽいみちを進むとすぐにひらけた尾根に出る。スイスの牧草地のような光景がわっと広がる。本当に裏剱は見ごたえのバリエーションが豊富だ。

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足場の石は浮き気味だが、それを差し引いても見事な場所だ。どうしてこんな土地になったのだろう。

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登るにつれて劔の全貌が再度現れる。青空に緑になんとも美しい。

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あそこが頂上じゃないことは薄々分かってるので、リザーブタンクは使わない気持ちで登っていく。

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ここからはもう遮るものはなく、雪渓から頂上までよく見渡せる。

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ヴァエ系スポットもいっぱいある。

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細尾根にこんもりした岩場があったので、ここでお昼ごはん。

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朝作ったアルファ米のおにぎり。アルファ米にふりかけは救世主。

そして、この先にもう少し尖った場所があったので行ってみると、そこが池ノ平山の頂上だった。

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その先にも更に何かしらの先っぽがあったので、行ってみることにした。

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山頂からの先は、ありえないくらいの藪こぎ、しかも結構なナイフリッジ。藪の剣先をしばらく歩く。その先は切れ落ちていたので、予想通りさらなる絶景かと思いきや、その先にも、もう少しコブがあった。ここはもしかしたら、来なくても良い場所だったかもしれない。雪渓に繋がる道があった。

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帰りもヤブを漕いで引き返す。相方はこのオプションツアーには来ないで、山頂で待っていた。判断は正しかった。

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13時下山開始

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さて、下山である。のんきなトレッキングはここからが大変だった。行き、登りはそうでもなかったザレ場は下りでなかなかめんどくさい存在となった。登りと同じくらいゆっくり降りた。

 

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14時25分 テント場着

やはり着いてみるとっけこうな時間がかかった。がしかし、あまり疲れることはなく、帰ってこれたのでよい。干してあった洗濯物も飛んでいくことなく乾いていてた。

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この日はあとはのんびりと過ごした。

明日の移動もあるのでご飯を食べて就寝。

明日は仙人池を越えて仙人温泉小屋まで下りる。

つづく。

 

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剱岳の夏登山 その5 裏剱に移動編(剱沢キャンプ場〜池ノ平小屋)

剱岳の裏側へ回る道は過酷そのもの

剱岳には二面性がある。まさに表と裏である。一般的に立山連峰から見えるのが表側だ。きれいな二等辺三角形剱岳を見ることができる。別山尾根ルートもこちら側で西側の尾根を歩いて登る。登山客も多く人気のフィールドだ。

だが以前、K氏たちと喋った時に彼が「裏剱ってのが、いつもの剱岳とは全く違って日本ではないような景色を見ることができるのです」との言葉を覚えていた。出発前にコースを決める時にそのことを思い出し、インターネットで調べるとまさに見たこともないような景色だった。結局このルートを選ぶことに決めたとき、彼らがまさか同じ時期に行くことは私だけは完全に忘却の彼方に葬り去られていたので、スケジュールを合わせた時に全く同じだったことに驚いたが、それ以上に安堵した。

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 前回

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3時 起床

まだ夜だ。でも周りのテントもガサガサと音がする。山の朝は早い。田舎の祖母も生前とても早起きだった。そもそも灯りが乏しい時代は日の出と共に働き始め、日没前に夕食を済ませ、日没とともに寝るのが当たり前だった。当たり前というか、照明のエネルギーを使わない最善の方法である。山では加えて天候の悪化を回避するためになるべく行動時間は日没前に長く取れるように一日のスタートは早い。日の出前の4時にスタートできれば17時まで13時間使える。12時まででも8時間使える。日の出前とはいえ、真っ暗ということはないので、問題ない。

本日の行程は日本三大雪渓の剱沢雪渓を下り、昨日劔から見た真砂沢ロッジを通ってぐるり剱岳を反時計回りに回り込むように仙人峠から池ノ平小屋まで行くというロングトレイルだ。二股吊橋までは下りだが、そこから尾根に入るので上りとなる。

フルグラをスキムミルクで溶かしたにわか牛乳に入れ、掻き込む。ファイントラックのオレンジのテントをしまい、パッキングし直す。水は十分に持っていかないといけない。雪渓では軽アイゼンがあると歩きやすい。今回私は軽アイゼンではなく、チェーンスパイクにした。

 

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5時30分 剱沢テント場を出発

剱沢キャンプ場を雪渓方面に下る道に入る。あたりはもう明るい。がしかし重い荷物とザレた道なのでなかなか進まない。これは今日は長くなるなと、そう思った。

最後尾に位置する。雪渓にはまだ入らない道だが、雪渓のほうが遥かに歩きやすそうだ。我慢して暫く行くと雪渓に入る場所があった。ここで他のパーティ含め、皆それぞれのアイゼンを付けている。

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6時30分

私達もいったん荷をおろし、アイゼンを付ける。K氏はアイゼン付けない派だ。どこまでも猛者である。チェーンスパイクを付け、再度ザックを背負う。ここはかろうじて石の台座があったので良かった。平地で何も無い場所は座ってからの前かがみ、という体勢になることができないので、寝返り、うつ伏せになってから立ち上がる。亀のようだ。相変わらず重い。

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ここからはしばらく雪渓を下っていく。左手には雪がまだ残る谷や尾根がある。ここを進む登山者は皆が私達と同じとは限らない。この雪渓を通る登山者はこういった谷や支尾根を登って剱岳に向かう人も多い。

雪渓は波打っている。そして真っ白ではなく、泥のようなものがついている。しかし柔らかく溶けている感じはなく雪質は硬い。ズボズボを予想していたのでこの予想外は嬉しい。

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たまに振り返る。後ろを見ても広い雪渓だ。剱岳や裏剱がなければ、ここはここ単体ですばらしい景勝地になり得ただろう。がしかし、剱岳なくしてこの雪渓は存在し得ない。

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先頭を行くK氏たちや相方からしだいに距離が離れていく。彼らが速いのではない、私が遅いのだ。写真を撮りながらだというのもあるが、その巻き返しのためのスピードアップができない。たまに手を降って生きていること、そして元気であることを伝える。

本日も足首、並びに膝はテーピングで固定した。おそらくは今日が一番負荷がかかるだろう。

雪渓はまるで夏に冷凍室を開けかのようなひんやりした冷気の霧がおおい、涼しさもある。

チェーンスパイクでは少し刃の長さが足りないようだ。食い込みが浅く、斜面では滑りそうだった。反省。

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7時15分 平蔵谷付近

谷の出合は更にいっそう広い雪渓となる。平蔵谷その向こうに長次郎谷、そしてその間にある尾根が源次郎尾根だ。長次郎尾根の向こうは八ツ峰である、多分。長次郎谷の由来は点の記でも登場した名ガイド、宇治長次郎その人のことである。

剱岳には多くの高い尾根がある。別山尾根、東尾根、源次郎尾根、八ツ峰、三ノ窓尾根、小窓尾根、早月尾根、ゆえに色んな角度で見るとそれぞれの前後関係、下から見上げる時のピークの高さの見え方によって、剱岳の姿が変わる。富士山では見れないことだ。どこを通ったとしても、楽なコースはなく尾根や谷を越えた先にようやく頂上があるのだ。このようなことは登山の前には知っていなかった。今回の登山を経験した後に、地図などを見てはじめて知ったことである。ああ、このとき知っていれば、また違った写真が撮れたのにと思うことは多い。

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そもそも「立山」は霊山として富山の人たちに崇められてきた。今でこそこうやって毎日のようにいろんな人々が登る山になったが、特に剱岳は困難だからという以外に畏れ多い山としてかつては登ってはならない山だった。現在、その登ってはいけないという感覚がわからないかもしれないが実は私達の日常でも若干その習慣は残っている。神社の本殿の中、奥深くまでは一般の人は決して入ってはいけない。無人の神社でも誰も入らない。かつて那智の滝に登ろうとしたクライマーの方がいたが、御神体である滝に登ることを神社関係者のみならず、周辺地域の人々も良しとして見なかった事があった。これと同じことが、当時の剱岳測量登山でおきていたのだろう。ところが明治政府主導で登山が行われてしまったのだから、それはおおっぴらに反対はできない。地域と政府の間にいた長次郎さんはとても大変だったに違いない。と思う。

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7時50分 雪渓終了

そんなこんなで、長次郎谷を過ぎ、この大雪渓が終わる。ここからその先には左岸に道がある。この雪渓で気をつけないといけない事がある。この後の出来事で今でもはっきりと覚えている。私は残った雪渓を進み、雪渓の終わりの左岸の道の場所にまっすぐ進もうとした。しかし、本当はそれは大間違いで、大きく左によりながら進まなければならなかった。というのも雪渓が終わった部分は深く、その下には沢があるのだ。雪渓の上にいる私から見るとなんてことはないただの沢なので、ひょいっとひとまたぎで行けるなと思っていた。がしかし、皆が進む左巻きをして、進み、振り返ってさっきの位置を見ると、雪渓の高さはとても高く2メートル以上はあった。しかも鋭角に溶けていて、雪庇の状態であった。私一人で行ってたら、あの薄い雪庇から崩れ落ち、2メートル下の岩場に滑落していたであろう。

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8時30分 真砂沢ロッジ到着

雪渓が終わり、半壊状態のがけ崩れの道を進み、真砂沢ロッジに着いた。

雪渓が終わったととんに蒸し暑さに包まれた。

真砂沢ロッジはテント場もある。大きなテントがいくつもはられており、山岳会や山岳部のようだった。ここをベースにクライミングが行われるのだろう。

ここで、品質保証はなさ気な張り紙の水を補給する。きっと何の問題もない。人間一度はあると思うが、本当にのどが渇いたら泥水でも平気で飲める。

しばらく休憩する。疲れていたのだろう、30分以上休憩させてもらった。この先はもう少し下った後、一気に登る道が待っている。

9時15分 真砂沢ロッジ出発 

ここからは左岸を下りつつ、時には岸壁、時には藪の中を行く道となる。いかんせん足場は悪い。もうずっと悪い。途中、川に入れる場所があったのでそこで休憩しつつ、皆頭を冷やしたり、足を洗ったりした。そう、とても暑いのだ。もうかれこれ3日暑い。そして今日が一番暑い。持ってきた水が足りないかもしれない。足をアイシングして歳度出発、少しだけ元気になった。がしかし、気温と荷重は思いのほか肉体を痛めつける。

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11時 二股吊橋

ここで川沿いの下りは終わり、今度は一転、仙人峠に至る尾根の登りとなる。あいかわらず私のペースは遅かった。先に3人で進んでもらい休憩してもらいつつ、私が追いついたらまた出発するという尺取虫のような隊列となった。とにかく一歩一歩のステップアップが重い。そして暑い。いつかはこの登りは終わり、平坦なもしくは下り坂になるのだろうが、それがまだまだ先なのは分かっている。だが止まってては、けして進まないので、ゆっくりでも一歩一歩進んでいく。

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11時50分 休憩

ようやく休憩して待ってくれている3人に追いついた。追いついたという言い方は間違っていて、私が登ってくるまで待っていてくれた。そして彼らは先へと進んでくれた。

しばらく休憩した後、途中K氏のみが待っていてくれた。果てていた私を見かねて荷の一部をを持ってくれるという。申し訳ない気持ちと情けない気持ちそして、ありがたい気持ちで泣きそうになった。そして甘えた。わたしの登山はここで敗退したと言っていいが、それでもそれしか選択肢がないのでそれ以上はあまり考えないようにした。とにかく持ってもらったからには今まで以上の登攀力が出るはずなので力いっぱい歩いた。歩き、追いつき、休憩し、また歩くことしかすることはなかった。休憩をするとき膝に両手を押し当てた。その時地面に蟻が見えた。そのアリが、アリの巣に入っていくのを見て、羨ましく思った。負荷軽減の効果もあり、次第にペースは取り戻された。

14時27分 仙人峠

やっと上りが終わった。目の前には大きな裏剱があった。あとは下るだけだ。気がつけば天候は曇り、雨が降るりそうなので、のんびりはしてられない。だが、少し休憩した。ここからはトラバースしながら下っていき、暫く行くと目的地の池ノ平に着く。はずだったが、なかなか着かない。体力のなさがそうさせるのか、なかなか着かなかった。

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15時 池ノ平小屋 到着

池ノ平小屋についた。とにかく荷をおろし、へこたれた。K氏らはすでに着いていた。自動運転でいろんなことをして、とにかくテントの中に入った。いや、その前にビールを買って飲んだはずだ。覚えている。うまかった。テントは6張り、昨日までとは打って変わってひっそりとしている。そうか、こういう静かなところも魅力の一つだ。ただ、道が困難なだけで。同じようにヘロヘロで着いた登山客がいたが、大いに気持ちがわかった。プラス7キロの負荷は大変だったし、K氏にいらぬ体力を使わせてしまったが、きっとこれは何かに役に立つ。 とにかく、大阪に帰ったらK氏二人に死ぬほど何か食べさせてあげよう。そんなんじゃ足りないが。

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続く。

 

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剱岳の夏登山 その4 剱岳登頂編(剱沢キャンプ場〜剱岳ピストン)

お盆の剱岳別山尾根ルートは多くの登山者で賑わう

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前回

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さて、剣山荘からの登山者はテント場がないのでみんな「小屋泊」である。そして我々の剱沢キャンプ場からは「テント泊」の登山者がそれぞれ剱岳に向かう。気のせいか、小屋泊の人達の方が元気に見える。気のせいではなかろう。剣山荘はトイレがすこぶる良いらしい。ちなみに剱沢キャンプ場のテント場は2箇所あるので混雑することはあまりない。清潔度は問うてはいけないが悪くない。

剣山荘を後にし、まずはなだらかな尾根を登り、一服剱に向かう。なだらかとはいえ、ゴロゴロの石の道なので気が緩まない。高山植物が朝日に輝き、そんな私を応援してくれる。f:id:fujikixblog:20190828114655j:plain

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まずは一服剱を目指してウォーミングアップ

さわやかな尾根のなだらかなパートはすぐに終わり、続いて本格的な斜面が始まる。出だしだろうが、終盤であろうが岩が衝撃に反応し移動する確率いわゆる滑落する確率は元気であろうが、疲れていようが変わらない。それによる怪我の程度も変わらない。疲れと油断の総量は常に同程度だと思う。

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私は足首をひねる癖がついてるので、テーピングで足首はガチガチにしている。それでもひどい捻挫をしたときは、テーピングを引き裂いて、足をひねってしまうのであるからして、けっして処置をしているからといって油断してはいけない。

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前に行く人が踏んだ石が必ずしも安定しているとは限らない。昨日、嫌という程味わった。その人の体重や石を踏む位置で決まる。

なるべく一度に次のステップに体重はかけない。じわーっと乗せて、ふむふむ大丈夫だなと確認してから体重移動をすると良い。これは浮石のザレ場に限らず、斜面の登りでも同様で急に岩が剥がれる事があるので気をつけないといけない。先日も落石か何かで富士山山頂間際で事故があったようだ。たとえ小石でも落石が落石を呼び、段々と大きな岩を落としてしまう。浮足で滑らして落とした石は後ろの人に当たるので、そういう意味でもゆっくり丁寧に歩き、保険には入っておいた方が良い。

 

 

振り向けば剱沢キャンプ場は遠く小さくなっていた。剱岳に登る登山者はとても多く、前にもたっぷり、後ろにもたっぷりといる。色んなパーティが「今日は人が多い」と言っている。初めてなので「こんなもんなのか」と思っていたが、そうか、多いのか。

気がつくと、朝焼けからの金色に満ちた空気は失われ、代わりにくっきりと鮮やかな光景に変わっていた。

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一服剱の頂上は一服させられる見事な前剱を見ることができる

5時50分 一服剱に着いた。

確かに一服したくなる。間違いないのだ。という理由は、斜度のキツい登山道だった、という単純な理由だけではなく、その一服剱の山頂から見える、次に向かう前剱が一旦降りてまた登る、ゆえに大きく見えるので、連続して休まず進む気持ちにはならないからであろう。私達も文字通り、一服した。

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張り付いて登っている人が見える。

この日は暑くなるということで、上下半袖だが、日焼け防止に長袖を下に着ている。

前半で日焼けすると、その後の行程が辛くなる。

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先程述べたように、剱岳に行くこの別山尾根ルートは、「一服剱」「前剱」そして本命の「剱岳」という三部構成になっている。そのため、ピークハントを続けるアップダウンのある縦走のようなルートとなっている。結果登る総距離も長い。がしかし、景色はとても良い。

ここからは更に足元が厳しくなる。すでに鎖で確保されたルートが始まっているが、事故はそうではない場所で起きやすい。大勢がいるとより正常化バイアスが発生しやすいので、いつものように気をつけないといけない。おしゃべりは1点支持ができるほどの平坦な場所でのみだ。

 一服剱の頂上から前剱側に降りる。そこには登山者自動監視システムの機械がおいてあった。こうゆうのをドンドン広めてほしい。

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まずは急な斜面を下りてゆく。特に決まったステップはないという印象の場所。行き帰りで違う道を選んだり、ボトルネックになりやすい場所はトーナメント表のようにステップが分岐している。こうゆう場所で、安易に一番外側を選び続けると、凄まじい崖っぷちでまさに手詰まり息詰まりになるので、めんどくさくても目的地点をさかのぼったルートファインディングをしたほうが良い。足元ばかり見ててはいけない。でも、足元にはきれいな花が咲いている。困ったものだ。

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相変わらずこの花の名前も知らない。 

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武蔵谷であろうか、雪渓が残っている。このあと飽きるほどみることになるが、初見は新鮮である。そのさきにちょうどテント場が見える。地図からして真砂沢ロッジのテント場だろう。整備された街とは違い、見えるからここからも行ける、というのは、ほとんどの人は無理だ。だが、遭難しかけると誰もがそうしてしまい、結果さらに状況を悪くしてしまうのだろう。

一旦コルが終わると、前剱の取り付きに着く。一服剱とは岩稜帯が違うのか、硬い岩盤の岩場へと変わってきた。険しいが、登りやすい。

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振り向けば、一服剱が低く見えていた。嬉しさも募る。テント場と一服剱が重なっていることからも結構な高度を稼いだ事がわかる。100mをまっすぐ歩く道と、100m垂直に登る斜面とでは必要なエネルギー量は大きく違う。フルマラソンの距離を真上に上げると、流れ星が輝く高度にまで上がる。

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行きは良い良い帰りはつらそうな斜面が続く。

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振り向けばどんどん上に上がっているのがわかる。

しがみついた岩の隙間にチアリーダーがいた。

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真砂沢ロッジが先程よりも近く見えた。明日はそこを通る予定だ。

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6時50分 前剱頂上到着

なんだかんだ、この前剱は結構疲れた。まだまだ先はあるのだが、それにしても結構な登りであった。

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ここからの眺めもとても良い。正面にはようやく堂々とした剱岳が見えた。

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見るところによると、タテバイあたりが急峻で、残る山頂まではなだらかなようだ。おそらくは先程登った前剱のほうが、しんどい。

剱沢キャンプ場がある立山別山方面に目をやる。きれいだ。

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まだ新緑の色味の立山が美しい。

剱岳に向かうこの先は、沢や尾根を通っているクライマーの頑張る姿も見れる。叫び声が聞こえるが、これはビレイ解除とか、ロープいっぱいですとかの合図だ。こちらとあちらと、ルートは別としてどちらが安全かというと、実はロープで繋がれているあちらの方が何かあったとき安全度が高い。手ぶらのこちらはよりいっそう気を引きしまねいといけない。

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少々休憩の後、出発。例によって一気にまた下降する。その先にはなんと頑丈そうな橋があった。あれがあるとないとでは大きく違うのだろう。

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靴幅分もいかない登山道が続くが、この辺に来ると皆、なれてくる。
振り返ると白山が見えるが、もう白くない。

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それにしても暑い。日の当たる側はじっとしていられないくらい。反対側になると割と涼しい。花もまた涼しげだがこの花の名前もまだ知らない。

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大渋滞が始まった。

溜まる場所も、抜く場所も譲る場所もないので、この先100人くらいのなかの一番ゆっくりの人のペースになっているそれがタテバイの上まで続く。要するにこの先のタテバイのペースで動いているということだ。

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そして、ゆっくりと牛歩戦術のように列は進んでいく。

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難所はなるべく前の人が終わった後に通過したほうが良い。だから結局列は伸びるのだが、仕方がない。難しい場所はステップがあるのでこれを頼りに進んでいける。ただし、補助ステップのほかにも、ナチュラルなステップやホールドがたくさんあるので活用するとより楽に登れる。そもそも鎖がちょうど良い高さにないことがほとんどだ。そしてピンとははられていないので、振られることがあるから注意だ。余裕があればセルフをとっておくと、今回のような渋滞にはとても良い。だがセルフを取るときは鎖ではなく打ち付けたアンカーの輪のほうが安定する。両手も離せて良い。

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(photo by Mr.K)

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先程の日陰が後方に見える。

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そして今度はスラブを降りる。この先にタテバイがある。人もいっぱいいる。

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8時30分タテバイ前のトラバースに到着も大渋滞

何ということだ。多すぎる。私達は多すぎた。とはいえ、ヨコバイから上がるわけにもいかず、淡々と待つのだが、雪渓の照り返しと直射日光で眩しさと暑さは凄まじい。

ここはテーマパークと化したのだ。大人気アトラクション「タテバイ ザ 4D」だ。きっと裸眼で3Dと重力移動が味わえる。

9時、ようやく、タテバイの膝下に着く。

長かった。とりあえず何でもいいから日陰を探す。むこうでほいほい登ってるマルチピッチの人たちが少しうらやましい。私達の前にいたパーティがかれこれ10分くらいイケメンについて話している女子たちが前にいる。内容は忘れたがドコドコ山に行くと良いとか、役に立つかどうかわからない情報がタテバイの麓にこだまする。勉強になる。その感謝の報告をご本人にもしておいた。少し場が和んだ。 

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9時20分、ようやくタテバイに登れることになった。とはいえ、さほどでもなく、このタテバイパートは終わった。あの渋滞は何なんだろう。

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気になったのが、タテバイの鎖場のボルトにつけている金具がくるくると回る。ダブルナットではなく一重で、結果ロックされていないので、チェーンが回り込むとどんどん回って、いずれ外れていく気がするのだが、先をつぶしているのか確認してないが、これはこうゆうものなのであろうか。

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10分でタテバイ通過、ここを終えると、あとは、岩場をジグザグに登るだけで頂上に至る。

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9時45分 辛い現場にまた出会う。

最後の斜面、昨日の雷鳥沢に続いて、ここでもけが人に出会う。ルートからやや外れて仲間と一緒に座っていた。頂上近くなので、人も多く、電波も通じやすい。自力では降りれなさそうだ。救助状況が混んでなければ間もなくヘリが来るのだろう。

足元の岩にに血痕がびっしりついていた。滑落だろう、まさにルート上だった。私達を含め周りの登山者は先程のタテバイの感想の賑やかさよ今はどこに、ここから山頂まではみな無言で登っていた。2日連続で目の当たりにするというのはなかなか精神的に良くない。

9時50分 そうして私達は、私達は無事、剱岳に登頂した。

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ようやく登頂。もちろん山頂も満員で、阪神百貨店の食品売り場のようだ。撮影のための行列が幾重にも重なっていたが、ここですることは他にないので直ちに列の最後尾に並ぶ。こういうときほど落ち着いた行動が問われる。

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雄山の向こうに槍ヶ岳?が見えた
少し下に広い場所があったので、ここで昼食と休憩を取る。

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10時27分 そこへ機械音がしてきた。ここで聞く機械音は航空機以外ない。

事故発生からおおよそ1時間で迎えに来てくれたようだ。凄まじい早さだ。

ヘリは正確に要救助者の近くまで降下し、隊員をおろした。その後、隊員が要救助者をハーネスでくくる。その場所直上までヘリはセンチ単位の操縦で寄せ、吊り上げ金具を持っていく。そしてあっという間に吊り上げ、格納し、富山方面に下りていった。その際、隊員さんが私達の無事を祈るように手を降ってくれたのだ。期待に応えなければならない。

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去年は剱沢まで来たものの、結局、見ただけの剱岳、一年後無事こうやって登頂できたのもK氏二人のおかげである。このおかげ紀行は、実はまだ始まったばかりでこのあともっとおかげをいただくことになろうことはこの時はちっとも思わなかった。

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11時10分 下山開始。

登ったぶんだけ降りる。登った人のぶん、降りる人がいる。というわけで帰りも大渋滞だ。スタート前のエネルギーが100で、ゴールで使い切るとすると優しく考えても、今は50と考えて良い。おまけに下りは体重がかけにくい。慎重に。先程の人もきっと下山中だろう。

懐かしめのデザインの缶が岩に挟まっている。

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11時30分 ヨコバイの分岐点にきて全く動かなくなった。相変わらず暑い。

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ここも逃げ場がない。日陰を求めてただ佇む。

12時00分 いまだヨコバイに着かず

まったくもって進まない。下山開始から1時間経過している。水を多めに持っていない単独は干からびているかもしれない。

12時15分 ようやくヨコバイ通過

あまりにも待ち続けて一瞬で終わった。それよりもこの後も渋滞は続く。

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面白い奇岩があった。

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14時45分 渋滞と、足元の浮石と格闘する下山道、なんとか剣山荘にたどり着いた。

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帰りの前剱の下りが一番危険だった。今回、2回ほど、落ちかけた。

ここで冷たいビールを飲み干た。うまい以外の感想がない。

16時テント場に到着

水を補給し、テントの延泊の手続きを済ませる。ビールを買いに剱沢小屋に降りる。とメモには書かれている。記憶がない。予想道理、記憶違いで、テント場に帰る前にビールを買っていた。メモだよりの記憶はこんなもんだ。次の日以降の行程を吟味する。最終日が天候が最悪だということで、最終日の行程をどうするかで悩んだ挙げ句、K氏たちの行程をかえてもらい、いったん仙人温泉小屋、そして阿曽原温泉小屋にむかう小刻み作戦となった。K氏たちにまた借りができた。

 

つづく。

 

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剱岳の夏登山 その3  一日目の夜、そして出発編(剱沢キャンプ場〜剣山荘)

今回は撮影登山。いつもとは違う装備で、ということで重い。

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今回は三脚を持ってきた。軽いながらもしっかりとした三脚。マンフロットのbefreeというカテゴリの4段の三脚。小さいながら割としっかりしていて重量1.6キロ。イヤ三脚ならズバ抜けて軽い方。しかも150センチ高まで上がるので腰痛くない。ほんでもって40センチに折りたためる。もう山用以外なにものでもない。

 

三脚のメリットはふと思っただけで3つある。

まず、朝夕の光が乏しい時に無理やり感度を上げて撮影した後で、あーあ、とならないよう低感度で撮れるように。そして晴れれば星の写真が撮れますように。なによりもしっかりと構図を決めて、雲などの抜けを待てるように、である。

前回

 

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撮影機材のGFX50sは画質モンスターカメラだが、それなりに重いのでレンズ選びに一工夫。

カメラはいつもは小型軽量なSONYのA7iiiというモデルを持って山に行く。今回はきれいな景色をよりきれいに残すためにFUJIFILMの中判カメラGFX50Sというマニアックなカメラを選択した。メリットは仕上がりが綺麗ということだがデメリットは重い、大きい、バッテリーの持ちが短い。ということで、おおかた登山には向いていない。今回荷物が大きく重くなった主な要因はこいつにある。レンズは標準ズームの32-64mm、35mmに換算すると、25-50mmというこれも難儀は幅域であるが、致し方ない。

広角が弱いので、フォクトレンダーの12mmを持っていく。換算10mmになる。それと21mm、これは換算17mmだが明るさが1.8。このスペックにも関わらず、この2本は驚くほど小型だ。これには感謝だ。特に21mmは夜空用に持ってきた。天気次第では選択されなかっただろう。

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テーピングで保護したGFX50Sにアダプターを付けて12mmのフォクトレンダーを装着。こんな写真が容易に撮れる。

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GFX50S+32-64  920gと875gで1795g

バッテリー 85gを9個

フォクトレンダー12mm 230g

フォクトレンダー21mm 412g

合計3202g

なかなかの重量だ。これに加えてmavicAirも持ってきた。こいつもバッテリーがすぐ切れるので10本持ってきた。これで2000g追加だ。

合計7キログラムほど撮影機材の重量であった。それは重いのも間違いない。

とはいえ、それに叶う撮影ができると踏んできた。

夜の撮影は三脚と後で合成する為にインターバル撮影

剱沢キャンプ場からは剱岳がよく見える。そして北面に面している。

三脚を据えて500枚ほどインターバル撮影、後日その一枚一枚を重ねてできた写真。

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夜9時位だったであろうか、剱岳の前剱あたりに2時間ぐらいたってもなかなか下りてこない登山者の明かりが気になってしかたがなかった。大抵の人は日没後1時間ぐらいで下山したようだったので、でも無事下りたようなので良かった。

月夜だったのであまりくっきり撮れなかった。月の入は26時くらいだったので、さすがに明日の登りに響きそうだったので、早々に撮影を終えた。

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就寝。

 

二日目、剱岳に登頂するために3時30起床。

本日は剱岳頂上までピストンの予定。

天気は良さそうだ。

朝食のフルグラをかき込んで準備に取り掛かる。

テント内は二人がギリギリなので、まるで宇宙船内のようにギュウギュウだ。もうちょっと前室が広く、かつ軽量なテントがあれば嬉しい、そんなものはない。

なので、小さなシートを前室の上に張り、なんとなく前室を作っていた。これはこれでよかった。

出だしは寒そうだ。でも昨日のように暑くなるかもしれない。服装のバリエーションをよく考えないと。

4時40分、テント場を出発

ヘッドライトを付け、いざ出発。

私達4人は意気揚々と剱岳に向かった。特に私は羽を得たかのように軽快に歩いた。昨日の重量とはまるで違う。

剣山荘に着く途中、日の出を迎えた。見事な朝の光景にやられた。この日の出以降、急にあつくなった。ここは火星か。

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5時30分剣山荘に到着、まだ山ではない。

剣山荘到着。ここでトイレを済ませ、服装をやり直し改めて出発。いつの間にやら人が増えていた。

というわけで、猛暑の剱岳に向かうのであった。

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つづく。

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