雄山を下りる。この先を降りると、一旦「一の越」という場所につく。そこまでこの坂は、延々とガレ場になっていて非常に危ない。しかも下からわんさかと登山者が登ってくるので、避けながら譲りながら石を落とさないように歩くのはなかなか難しい。
室堂から一の越、そしてここを登って雄山に行く、そしてUターンして帰るというルートが主だっているので、自然とここは渋滞になる。所々、登りと下りで道が違っていた。目印表示もあり、整備されていた。
こういうのは誰がやっているのかと思うと、その答えの人達がそこにいた。土木業のお兄さんたちが石を運んで道を作っていた。道は自然とできると思っていたが、なるほどこうやって崖っぷちの道も作っておられるんだと思うと、小石で転がしてはいけないなと深く思った。
30分ほど下り、ようやっと一の越山荘に着いた。ここは鞍部になっていてこの先登り返すと浄土山に着くが、もう今回は十分山は堪能したとの事で、そのまま室堂平のほうに下山することとなった。
ここから先はさらに整備された「道」になっている。特に難しい事もなく歩ける。例によって、隙間の大きな石畳なので悠長には歩けないが、今までの登山道とは月とスッポンである。
よく、下山後に舗装路に出て思う事がある。それは「平らな舗装された道」というものがいかに効率よく物を運ぶか身をもってわかるのである。こんなに楽チンに歩けるなんてズルい。と。
大いなる石畳は、雪渓にとざされる。その雪の上を歩く。最後のリクリエーションだ。ふとその雪の上のほうを見るとスノーボードをしている人がいた。しかも旗を立てて、ターンの練習をしている。なんでこんなところにまで来て、スノーボードの練習なんかしているのだろう。
まあお互い様だが。
それにしても雪を纏った室堂はきれいだ。一面が雪の時期に来てみたいと思っていたが、これはこれでとても美しい。
途中、ブラタモリで有名な、石を見て、目指すみくりが温泉に向かう。しかしここで最初で最後の道間違いをしてしまい、温泉まですぐそこという曲がり角を間違えて、まさかの地獄階段に向かってしまった。オソロシア地獄階段。
何事もなかったように引き返し、温泉のある建物に着いた。
ごーーーーる
その先のでは硫黄の煙を吐き出している火口のようなものがある。出来立てホヤホヤの温泉が楽しめそうだ。
玄関で靴を脱ぐ。たまらん。もう動けん。
最後の力を振り絞って起き上がる。
だいたい30分後、という感じで、それぞれ温泉に入る。
ロッカーに服を入れて、何もかも入れて、ドアを開ける。
フワッと暖かい風が吹いた。エコーのかかった音がする。
一番近くの蛇口のある洗面場に座る。お湯を出し頭にシャワーでかける。
ジャワワワワワー。
あーもう、このお湯で溺れ死んでもいいです。幸せです。幸せでした。
全てが無になる。シャワーの音しか聞こえない。目を瞑っているのか、開けているのか忘れるくらい脱力していた。
無限に頭を洗う。気持ちいい。
永遠に身体を洗う。心地よい。
そして、洗い流し、湯船に浸かる。
テルマエロマエ〜。ロマエ〜。
ぷはー。熱いお湯の波が身体をもみほぐす。
周りを見ると、みな明らかに登山者ばかりと思える人ばかりだ。みんな、ここがゴールなのだ。ここがメッカなのだ。ここに巡礼をしに一生をかけてくるのだ。そんな気がした。
ぶつぶつ思ってはや30分、そそくさと出ることにした。
嫌々服をまとい、外に出る。そこは食堂になっていて、相方がすでにいた。
「ビールとか」
「いいねー」
というわけで、サイコーの一杯をいただいた。
あー、もう、何にもいらない。
白えびの天ぷらをいただく。
おー、もう、わかってるぅー。
というわけで、私たちはしばらく、くたばった。
続く