長い道を経てようやく登山口についた。こかからは、舗装された山道を暫く歩き、杉林に向かう。途中に何ヶ所か駐車場がある。そこにはすでに10台くらい車がある。何組かまだ準備しているがほとんどは出発し終わったようだ。ここまでは全く積雪もなく、道が凍っている様子もない。本当に関西に冬はくるのだろうか。
目の前に長い階段がある。
相方がゾッとしているのがわかる。出だしてなかなかの勾配の坂を登ると、この後の傾斜にビビってしまうのはもっともだ。でも安心してください。ここだけですよ。
出オチ階段を登りきり、暫く道を歩くと、本当の登山口らしき場所が見えてきた。
おばさま達一行が私達の後方についているが、1.1倍くらい我々より速い微妙なペースなので先に行ってもらう。彼女らはすばらしく元気すぎて、なかなかのおしゃべり具合、逆にこちらは沈黙してしまうのもなんなので、という理由もある。
追い抜いた彼女らはあれよあれよと、先に行ってしまわれた。いったいどこからあんなパワーが出るのだろう。尊敬しかない。
そして静寂が訪れた。
本当の登山口、いい場所にある。大抵の場合、出だしの1合目あたりでレイヤリングを見直したり、日頃の運動不足を反省したりする。皆ここで改めて準備を整えている。ここもそういった場所のようだ。
私たちはすでにトータルの3合目まで来ているようなものなので、そのはかない儀式はすでに終わっており、そのまま先に進む。
つり橋を越えて森に入る。
こかからは、杉林の九十九折の登り坂が続く。とても整備されていて登りやすい。「自転車禁止」といった看板が立ててあるくらい登りやすい道だ。がしかし、以前帰りにここらへんを通っていたら、思いっきり足首を捻ってしまったので、気をつけなければならない。あれからしばらく山に行けなくなるほど痛かった。下山の時、ゴールが見えらくらいの時、ついつい視線がそちらの方に行きがちになり、足元を見るのを怠ってしまう。そこでなんでもない凸凹に引っ掛けてしまうのである。私の場合、非常に多い。以前は山荘に着いた敷地内でやってしまった過去もある。今日も帰りは気をつけよう。
冬なので、この時間でも日差しはまだ低く、目の前に太陽が輝いている。低い日差しはなんとなく、新鮮な雰囲気を感じささてくれる。ありがたいが非常に眩しい。
この綿向山は頂上まで1合目、2合目、3合目とキチンと看板が出ている。非常にありがたいがどこでもそうなのか1合目と2合目らへんはやたらと長い気がするが、それは距離ではなく、高さを10等分しているからなのだろうか、それなら次第に勾配がきつくなる山ならば納得できるが、真相は知らない。が、ここは消費カロリーを10等分で表示してほしい気もしなくもない。これはとても新しいアイデアかもしれない。
九十九折といえば、よくあるのが切り返しの時に、ついついそのまま真っ直ぐ行けちゃうんんではなかろうか?といった道がたまにある。あれは本当に気をつけなければならない。人が多いと気にしなくていいが、誰もいないときならば、序盤の道でも、間違ってしまいそうになることがある。登るべき頂きの位置を、きちんと理解していればそんなことにはならなさそうだが、スタート時は油断していることが多そうなので、気をつけよう。
杉林を一旦車道を挟んでまた杉林に入るコースとなる。こういったルートは少し拍子抜けするが、忘却の彼方に追いやる。
1つ目の東屋が見えてきた。
ここで一旦休憩をとる。そういえば、「休憩は疲れる前にする方がいいらしい」と、相方が言っていた。
東屋で小休止、ここで謎の羊羹をいただく。相方が知り合いからいただいた羊羹なのだが、それは円柱状で自転車のグリップのような大きさで、ぱっと見歌上げ花火のようだ。紐がついていてそれで好きな太さだけ出して切れるといった工夫が凝らされている。
一口いただく。
まじか、、、美味い。。これはとても美味い。
好きなサイズでしかも、咬みちぎらなくていいので、みんなでワイワイ食べれるのもいい。とても登山向きだ。むしろ登山以外でこの羊羹が活躍する場が想像できない。
五勝手屋(ごかってや) ミニ丸缶羊かん1本
美味しすぎて写真がない。
程よく休憩したら再出発だ。ここが3合目あたりだから全体の1/3来た。と思ってはいけない。何度も言うが正しくは3/10だ。全然違う。
次第に整った九十九折とは違った道になる。単純なジグザグではなく、景色が変わって楽しい。こうなると、お、山だ山だ、と感じる。とはいえしっかりとした道なのでとても歩きやすい。
谷と尾根をまたぎながらすすみ、5合目の避難小屋に着いた。ここにはなぜ鐘が付いており、鳴らすことができる。相方がボリュームを見誤って中に人がいる事はさておき、思いっきりの鐘の音を響かせていた。カラスがカーと言いそうだ。
ここからは次第に杉林は見なくなりブナなどの原生林の中を歩く。こういった時、私はついつい「ブナ」と思っているが、正しくは知らない。そもそも「ブナ」ってどんな感じなのだろうか。
と、疑問を感じながらもそれも忘れ去られた。雪が積もり始めたのだ。正しくは雪が積もっている場所まで登って来た、だ。
来た甲斐があった。ハッピースノー。ああ来て良かった。
寒さも感じてきた。これでこそ冬である。桜が咲くような冬は要らない。
ウキウキ歩いていると、祠についた。
そう、ここからが綿向山の核心、「ちょっとだけ急な坂」が待っている。
寒さも急にひどくなるかもしれないので、ジャケットを着る。
登り始める。ズルズルである。しまった、帰りはこの辺まではチェーンスパイクをしよう。今は後の祭りという事で、このまま頑張ろう。
先行者の足跡も大いに滑っている。しばらく格闘し、そこを乗り切る。まったくもって油断していた。
上を見上げると、青い空、そして、若干だが木の枝に霧氷らしきものがついている。いいぞいいぞ。寒くはあるが、この景色のために気温は上がらないでいてほしい。いや、暖かくなってもいいが、溶けないでほしい。
そんな、無駄な葛藤をしつつ、白くなった景色の中を歩いていく。
そしてようやく尾根についた。なかなかの風だ。ゴーゴーと地鳴りのやうな音を立てている。「冬山」って感じだ。周りの木々はすっかり白で覆われている。ここまでくればほぼ頂上。ほんとに「合目」というのはあてにならない。
青と白の世界の中、私たちは無事、綿向山の頂上に着いた。
さあ、ご飯ご飯。
続く