赤岳鉱泉からの下り道、これまでの赤岳の登山道とは明らかに違い、なだらかな道となるので「エンディング感」がある。この道をスタスタと短時間で行き来することがそこからの本当の登山までの時間を有意義に使えるのだろう。がしかし、木の根と石が見え隠れする道は足を引っ掛けやすいので慎重にならざるを得ない。このくだりで怪我をする人は多いだろう。そういえばバス停からスタートした直ぐの場所で降ってきた人、彼にとってはゴール間近だが、すってころりんとコケていた。
一度きた道は、一度しか来てない道、勘違いも多い。あの先を曲がったら確か橋があって、とか思ってたら、全然まだまだ先だった。といった現象だ。これは登りの時に、何にも考えず、タラタラと無の境地で歩いていたからその記憶が、海馬からスパッと抜けてしまっているのだ。
そういうことを繰り返し、私たちはヨチヨチとチェックポイントの橋に着いた。
しばし休憩する。ここからはアイゼンは不必要はずす。
そう、今回から私のアイゼン、ペツルのリンクスのフロントにグリベルの「クランプオーマチック ベイルハンガー SP」を取り付けた。ペツル純正のハンガーはもう発売されておらず、ワンタッチの安全面の保険とでも言うと正しいだろうか、ベイルハンガーがほしかったところ、このグリベルのベイルハンガーがピッタリと装着できた。SCARPA モンブランPROにあうサイズはSP、ただし、自己責任で。
さて、ここからは、チェーンスパイクが欲しい。雪はあまりないものの、路面が凍っている箇所が多いのだ。無い物ねだりをしても仕方がないので、注意して降りる。なるべく土手沿いを歩いて、滑らないようにするも、我々は何回かフィギュアスケート並みのスピンをしてしまった。それはもう、走馬灯のオンパレードで、何度心の中で「あっかーーん!」と叫んだであろうか。なーむー。
さて今回、前回とGopro7というカメラを付けて歩いているのだが、このGopro7、やたらバッテリーの消費が激しい。1時間もたないし、氷点下では数秒も持たない。シビアな状況でのバッテリー交換はままならず、美味しいところで映像が切れることが多かった。 後日、いろいろ調べると、いや皆さまはご存知とは思うが、簡単に解決できた。
本体の横に蓋があり、その中にUSBの差込口がある。蓋は簡単に外せるので、スマートにUSBのケーブルを刺すことができる。そしてそのケーブルでモバイルバッテリーから電源を供給できる。本体付属の10倍ほどの容量を確保できるので、一日充分回すことができる。次回からその方法で撮影できるようになった。この場合、隣のHDMIのコネクターは専用のキャップで閉じておくと良い。カメラでパシャパシャ撮影しながら登るというのは、実は危険な行為なので、この撮りっぱなしの映像を後でキャプチャーすればある程度の記録写真として使用できる。
しんどい時の、写真はたいていない事が多いのだ。
さて、登山道は次第に「道路」という状況になる。轍には氷がびっしり付いているので相変わらず危険だ。慎重に。
そうして、次第におだやかな林道に戻ってきた。
なにか忘れてないか。。。
あ
ああ
そうだ、本日、夕方発のバスで帰れるかもしれないということだ。電波が通じなかったので、その連絡は今の今までできなかった。もし、16時台の茅野発のバスに間に合えば、夜には大阪に帰れるので、次の日の仕事まで充分に寝れる。これが深夜バスになると、朝についてしまうので、できれば16時台のバスに乗りたい。
運良く、電波は圏内になっていた。センターに電話をすると、「あと2席空いてます」とのこと。急いでその便に振り替えてもらう。
がしかし、ここでトラブル。私は楽天トラベルを通してバスを手配していたので、バス会社の直接の変更ができなかったのだ。
まず、楽天をキャンセルし、その上で改めて直接バス会社からチケットを手配しなければならなかった。当日便の楽天、ならびにバス会社のネットでの購入はできない。すべてがアナログ。私達は今歩いている。これは極めてややこしい。
そして、さらなる懸案事項勃発。
茅野までのバス、16時の高速バスに間に合う最終の路線バスがなんと14時台の美濃戸口発だった。15時台があると思いこんでいていた、それがなかったのだ。 現時点で、ペースは15時にバス停に着くかどうか。間に合わなかもしれない。これでは、16時のバスを手配して、深夜バスをキャンセルした場合、もし、14時の路線バスに乗れなかったら、大阪に帰る手段がなくなる。 一旦バスの変更は「14時のバスに間に合うまで保留」
まずは、とにかく14時の路線バスに間に合うように、急いで下山することにした。今までの呑気な下山行為が、物悲しい。いや、難所を焦って降りていては、怪我の元だったから、知らぬが仏ということか。
最近、毎回帰りに急いで歩いている。これもさだめなのか、ナウシカのババ様が脳裏をよぎる。
とにかく急ぐ、急ぎ慣れさえしている私達は、同意し合うこともなく、スピードを上げることに否定はない。
ここでまた例の、「ここを曲がったらゴール、、、じゃないんかい!!!」現象が多発する。
バスの出発予定時刻に近づいてきた。だがまだ、私達はつかない。
とにかく、歩みを止めることなく急いだ。間に合わなかったら呑気に待てば良い、ただひたすらに、今は急いだ。
予定時刻と同時に、バス停に停まっているバスが遠くに見えた。
どうだ、間に合うか。。。。間に合わないかもしれない。
走った。
相方をとりあえず無視して走った。私が間に合えば、土下座してでも待ってもらえばよい。
美濃戸口に着いた。バスはまだ発車していないが、今にも動きそうだ。
もうバスには満員の乗客。
はたして、私達の運命はいかに。。
続く