山と僕とカメラ

登山初心者のバタバタ日記

北穂高岳敗走記 その7  岳沢小屋に向けて編

上高地というのはどこからどこまでを言うのかはよくわからないが、北アルプス南部の穂高の麓を流れる梓川周辺地域の勾配のない平地部分を指す、と私は思う。ここには登山以外にもハイキングや、森林浴、宿泊といったカジュアルな観光でも充分楽しめる場所であるからして、その人口のほうが多いと考えると、歩きやすい平地部分という意味を含ませて「上高地」とくくるのが自然だと思う。そしてその中心部が「上高地バスターミナル」。上高地へは一般車の乗り入れは禁止されているので、ここに来るには、バスかタクシーの二択になる。そしてそれら交通機関は、この上高地バスターミナルで発着する。

 

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今回は一旦ここ上高地バスターミナルに戻って荷物をおいて、岳沢に再出発する。有料の荷物預かり所があるので、そこに預けると便利である。

そこから有名な河童橋を渡り、湿地帯域を眺めながら木道を歩いて岳沢登山口に進む。15分もかからない。ここまでは散歩道なのでいろんな観光客がいる。

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心配していた相方の体調も良さそうである。

ここにはこの前に来たばっかりなので、大体の距離感はわかる。はじめての登山道というのは、「もうすぐ」というカンが働かなく急にゴールになったりするので、力を抜いて歩くタイミングが難しい。結局ゴール直前まで必死で登って、目的地で急ブレーキで止まる、そんな事が多い。そうならないように、地図やGPSをこまめに確認しながら行く癖をつけなければならない。

また、複数登山で、私のような初心者が陥りやすいのが、ナビを相手任せにしてしまって、現在地も距離感も、はたまたルート選択も気にせず歩いてしまう。それがお互いとなると、もう遭難まっしぐらだ。ソロでは、流石にそうはなりにくいのだが、3人以上の登山は気をつけたほうがいいと思う。二人よりも、雑談が増え、思わぬ道迷いになりそうだ。まだそんな経験はないが、街ではよくやってしまう。

登山口からは傾斜のある樹林帯を進む。いきなり「登山」の雰囲気だ。くねくねと小川に沿って木道を進むのだが、「低地+苔」が私達に牙を剥く。一人が滑ったところは、二人目も滑る、おおいにマーフィーが効いている。

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勾配はあるものの、荷物がゼロに等しいので心拍数はさほど上がらない。時刻的にはまだ速度データが取れてないので微妙だが、おそらくはそんなに急がなくても大丈夫。

暫く行くと、例によって朝は効いていない「風穴」がある。やっぱり今回も効いていない。

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ここからは次第に見晴らしが良くなる。上高地が見える。

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岳沢を降りてきた登山客とすれ違うことが増えてきた。このルートはやや体育会系男子的な登山客が多い。メインルートの重太郎新道だけではなく、ほかにもさらなる険しいルートがあるので、そちらから降りてくる人もここを通る。お疲れ様、ごゆっくりお風呂に使ってほしい。

中盤からは傾斜がきつくなる。時間は大丈夫、こまめに休憩を入れても充分時間内に到着できそうだ。

ピストンルートなので、スタート地点からストップウォッチで測っておけば、測定しやすい。もし、時間がかかりすぎて折り返さないといけなくなったとしても、かかった時間のトータル2倍でスタート地点に帰る計算なので、単純に2をかければいい。逆に言うと、進んだ分の2倍の時間を考えて進めば良いということだろうか。

岳沢小屋でもカレーの時間を最低30分とすると、トータルの時間猶予から30分を引き、その残った時間を2で割ると片道の使える時間が出る。平地ならば何も気にせず計算で出せるが、傾斜のある登山道や、しんどさとは別の登りにくいルートでは実際の計測値を参照しないと大きく時間がずれてしまう。

というわけで全行程の1/4程度で、だいたい間に合うことがわかった。

相方にも楽しく登山してもらいたいので、ぎりぎり疲れないペース、ぎりぎりゆっくり歩く。

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だがそれも、次第にゆっくりになっていく。傾斜がますますきつくなってきたのだ。だが半分は超えているので、気持ち的には切れていないようだ。

そんなとき、向こうからひょいひょいと降りてくる人がいた。たしかに人だが、彼女は、そう、女性だ、その女性は西洋の顔をして、綺麗に髪を結い、白いあたたかそうなショールをまとって降りてきている。近づいてみると、恐ろしく綺麗だ。北欧風のことばで挨拶をされ、すれ違った。相方とはこのとき10メートルほど距離があったので、立ち止まって振り返り、二人がすれ違う様子を見た。

相方も彼女が通り過ぎた後を追うように振り返っていた。やはり、相方もこの登山道にいるはずのない雰囲気を北欧白ショール女性に感じたのだろう。

そのあと、相方と目を合わせ「まじか?」「ありえん」といった言葉にならないコンタクトを交わした。

おかげでそこからの登山道は彼女のプロファイリングに没頭し、きつい斜面を乗り越えるに良い結果となった。

その後、一人のおばあさんが先行しているのが見えてきた。だが急激に距離が詰まっていく。私達のペースはそんなに早くない、そう、おばあさんがゆっくりすぎるのだ。そしておばあさんが止まってしまったので、声をかけてみた。やはりしんどそうだ。大丈夫だろうか。ここから岳沢小屋までは、後少し。とはいえこのペースだと1時間はかかるかもしれない。小屋から先に行くのは難しい。そもそも、この登山道でこの疲労度だと、重太郎新道なんて不可能だ。

人の心配よりも相方の心配だ。大丈夫そうだ。カレーってすごい。

やがて川を渡る場所に出た。もう少しだ。ここを抜ければもう小屋だ。先程からチラチラと建屋が見えている。時間も充分にある。もう、気にすること無しだ。

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最後の坂を終え、建物の敷地に入る。

着いたのだ。カレーに。

その足で、小屋に向かう。

入り口にメニューが書かれていた。

ビーフカレー辛口中辛、チキンカレー、キーマカレー、ベジタブルカレー」

なんという豊富なメニュー展開だろう。ほかにもナポリタン、カニのトマトクリームパスタなんかがある。

想像以上、想像の乗算である。

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私はこういう選択肢の場合、きまって「キーマカレー」だ。キマだけに。

相方はいろいろ考えた挙げ句、チキンカレーにしたようだ。

見晴らしのよいテーブルにて出来上がるのを待つ。

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上高地が見下ろせる。思えばよくここまで登ってきてくれた。ありがとう。

ありがとうカレー。

と、ぼけーっとしていると、寒くなってきた。ちょうどいい、ここのTシャツを買って着替えよう。と小屋に行く。

微妙なグリーンのTシャツを買う。ちょうどカレーもできたようだ、グッドタイミング。

山岳に似つかわしくない、カレー皿とガラスのコップ、それがお盆に乗っている。すごい。と同時に運べるか不安になった。すでにTシャツを持っている。

カレーを2セット渡された。石畳と階段が待っている。大丈夫だろうか。一応聞いてみた。

「今までひっくり返した人はいますか?」

「いませんよ♪」

「・・・・・・」

第一号になる自信たっぷりでカレーを運んだが、第一号になること無く、テーブルに着いた。よかった。

目の前にあるカレーは、上高地より美しく、崇高であった。

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スプーンですくい上げ、口に入れる。

ガラムマサラの複雑な辛味と甘み、そしてミンチ肉を噛むごとにでてくる旨味が口の中を泳ぐ。白米は弾力がある、そして、カレーの濃さを絶妙に和らげる。ガラスコップの水は透き通っており、喉に流し込むと、一気に浸透し、胃の形がわかる。

今度はチーズを振りかける。

芳醇な匂いが鼻をくすぐる。塩味がまして疲れた体を蘇らせる。

今までこれほどうまいカレーを食べたことはない。

この感想は、カレーを食べるごとに思うことだが、気にしない。

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もう一度言おう。岳沢小屋のカレーは美味い。

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まだ、つづく。

 

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