山と僕とカメラ

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登山初心者のバタバタ日記

初心者が登る2月の赤岳鉱泉から赤岳登山のレシピ

初心者が登る2月の赤岳鉱泉から赤岳登山のレシピ

 

 去年、今年と2月に赤岳に登ったので、その薄っぺらい経験からですが赤岳登山の参考になれば。

★今回のコース『美濃戸口〜地蔵尾根〜赤岳〜文三郎尾根』★

 

雪山初心者御用達のコース、『美濃戸口〜赤岳鉱泉〜地蔵尾根〜赤岳〜文三郎尾根〜赤岳鉱泉〜美濃戸口』危険箇所はほとんどありませんが、梯子や岩場はありますし、冬季の積雪、天候変化もあるので心して挑みましょう。積雪期以外来たことはありませんが、案外雪道は登りやすいものです。

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 赤岳は麓からの登山道が、なだらかで2月でも難なく赤岳鉱泉に行けること、初心者から上級者まで様々なコースが有ることからこの時期、特に人気です。というか、この時期は、ここに人は集中します。思いがけず知り合い、有名人、yotuber、ブロガーにも会えるでしょう。ただし、何度も言いますが、高気圧ど真ん中以外の日は、稜線は常に風が強く天候は不安定です。ましてや暖冬とはいえ、厳冬期です。日によって環境はコロコロかわります。今年登った日は爆風の氷点下で、次の日は無風の晴天でした。私が登った同じ日に八ヶ岳連峰で不幸があったようです。

 

■赤岳

山域: 八ヶ岳連峰

都道府県: 長野県 山梨県

標高: 2,899m

2万5千図: 八ヶ岳西部・八ヶ岳東部

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赤岳は八ヶ岳連峰の最高峰で、長野県茅野市南佐久郡南牧村、山梨北巨摩郡大泉村(現・北杜市)との境に位置している。山頂は赤岳頂上山荘のある北峰と、一等三角点がある南峰とに、わずかな距離をおいて分かれている。北峰からは県界尾根が、南峰の南にある竜頭峰からは真教寺尾根が、ともに山梨県側へ延び、縦走路は南方はキレットを経て権現岳へ、北方は横岳へと連続し、西方は中岳を経て阿弥陀岳へのルートも通じている。

 

引用

https://www.yamakei-online.com/yamanavi/yama.php?yama_id=450

 

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■美濃戸口から赤岳鉱泉までのアクセス

美濃戸口から北沢ルートで赤岳鉱泉に入るのが一番のメジャーなルートになります。途中休憩できる山小屋が何箇所かあります。南沢ルートと分岐するので注意。

美濃戸口(標高1490M)~赤岳鉱泉(標高2250M)距離約7キロメートル

前半は車道、後半は登山道です。

 

 ■雪の登山対策

雪山用の登山靴が必要です。保温性が保たれる事が大事です。雪山は常に地面が氷点下です。その温度を靴の中に入れない工夫が施された登山靴が必要です。雪山初シーズンで、靴を出発直前に購入したなら、事前に低山で履きなれておきましょう。靴ズレは地獄です。

その時期の雪の積もり方によりますが、赤岳鉱泉までは、軽アイゼンかチェーンスパイクが良かったです。刃の深い12本爪アイゼンでは下の岩場まで当たってしまい、足首を捻る可能性があります。メジャー登山道なので、トレースがしっかりついてます。スノーシューはここでは使わないです。

美濃戸口からの序盤の轍には見えない凍った路面がありますので、私のように転ばないようにしてください。心から凹みます。

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■赤岳鉱泉までの服装

今回、美濃戸口周辺はさほど寒くありませんでした。車で来ているので外に出たら相対的に寒いと思いますが、歩き始めるとすぐに暑くなりますので、雪があるからといえ、厚着ぎは汗冷えの危険がありますので、気をつけてください。アウタージャケットの下にベースレイヤー、もしくはアウターを脱いでミドルレイヤーで大丈夫です。ボトムも防寒しすぎなくても大丈夫ですが、脱着しにくいのでアウターから順に外しておきましょう。

グローブは薄手で大丈夫です。ですがアウターグローブをすぐに取り出せる場所に入れておきましょう。ヘルメット、ピッケルはまだここでは不要です。濡れるので薄手の予備は必要です。

■トレッキングポール

トレッキングポールがあれば体のバランスを取りやすいですが、無くても大丈夫です。赤岳鉱泉までずっと穏やかな道です。半分を越したあたりで、車道がなくなり、沢沿の雪道になりますが、ここもトレースがしっかりと付いているので歩行に問題はありません。トレッキングポール を使うと、足の負担は減りますが、正しく使わないと、前荷重になり、腕の負担が増え、合理的ではありません。簡単に言うと、前荷重にしすぎたら、腕立て伏せで歩くようなものです。バランスを取る程度で、前屈みにならず、重心は直下に置きましょう。

 

■行動食

赤岳鉱泉までは3時間ほどですので、軽くで大丈夫です。出発前に朝ごはんを食べたら、赤岳鉱泉までは要らないかもしれません。でも非常用に必ず持ち込んでください。水分は必要です。

 

■赤岳鉱泉までの登山道の状態

日陰の林道では道が凍っている場所がありますので気をつけて下さい。案外気がつきません。

所々に木製や金属製の橋があります。この部分で足を引っ掛けたり滑らしたりしそうです。慎重に進みましょう。

次第に山々が見えてきて、足元を見るのが疎かになります。真っ直な道ではないので気をつけて下さい。

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■泥除けと日焼け対策

ゲイターはつけておいた方が、防寒と泥除けになります。行きは午前中なので、進行方向に太陽を浴びますので、日焼け止めとサングラスは持って行きましょう。

 

■赤岳鉱泉という山小屋

3時間ほどで大きなガリガリ君が見えてきたら、そこが赤岳鉱泉です。

そびえ立つアイスクライミングのエリア付近は地面がスケートリンクのように凍っているので近づかないようにしてください。なお、アイスクライミングエリアは、ヘルメットと、アイゼンとサングラスを装備しないと色々危険なので入れません。興味本位でノーヘルで立ち入ると、注意されます。

赤岳鉱泉の建屋についたら、出入り口の外でアイゼン、チェーンスパイクを外します。中では装着も禁止です。

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■受付

赤岳鉱泉の入り口に入ると室内への扉の手前に、氷で凍った土間があります。ここでコケる人多いです。さっきまでつけていたアイゼン、チェーンスパイクがない事を、忘れるのです。慎重に。

宿の中に入ったらまず、右手前の受付で宿泊と食事の組み合わせを言って支払いを済ませます。一泊2食で10000円です。必ず山行の前に予約をしましょう。満員だと、少し先の行者小屋に案内されます。

https://userweb.alles.or.jp/akadake/

userweb.alles.or.jp

■下駄箱と乾燥室

しばらくすると部屋に案内されるので、それまでに、登山靴を脱いで雪を払い、下駄箱に置きましょう。荷札が置いてあるので名前を書いて靴に結びます。下駄箱付近床は溶けた雪で濡れてます。友達と来たなら靴を左右替えて場所も変えると、まあ、ないとは思いますが、まさかの盗難防止になります。入り口左に乾燥室がありますが、あまり乾燥してません。してませんが、ちゃんと乾きます。アウタージャケットなどは寝室に入ってそこで掛けた方が乾きやすいです。手袋やバラクラバ、ゲイター、ロープやハーネスなどごちゃごちゃしたものを乾燥室で干すと良いでしょう。取り違いに注意してください。特にゲイターは同じものや似たものが多いので間違いやすいです。乾燥室には棚があるので、2泊する時、部屋を変わる事があるので、デポするものをこの棚に置いておきます。そのために、大型の袋があった方が良いです。小さめのスタッフサック数個、となると他の人に間違えられてしまったり、落ちてしまって、変なとこに置かれてしまい、大切な何かを見失います。

■部屋

係の人に名前を呼ばれたら、部屋に案内されます。遅れないようについていきましょう。山小屋の人は仕事が多く忙しいのです。大部屋は二階か、向かいの棟になります。布団も指定されるので、間違えないようにしましょう。私は案内された場所に腰掛けてたら、「そこ、私の場所です」と他人に言われてしまいました。(小屋の管理人に確認すると、そのお客様が、説明を聞き間違えて場所を勘違いしたようですが、揉めたくないので、当人には伏せておきました。)

布団はキチキチに並んでいます。ので、ザックを置く場所も指定されます。

個室もありますがオプション予約が必要です。

■携帯の電波

赤岳鉱泉周辺は谷になっているので電波はほとんど入りません。充電が無料でできるコーナーが階段の下にあります。そこで、かすかにdocomoは電波が立つらしいです。小屋内にwifiがありますが、今回はうまく繋がりませんでした。どうしてもという時は、大同心に向かう道を15分ほど進むと電波が繋がりました。

■山荘での服

赤岳鉱泉内は気温がまちまちです。食堂内が一番安定して暖かいです。トイレに行く廊下には巨大なヒーターがあります。でも廊下は基本的に寒いです。部屋はストーブがあります。その付近は暖かいです。二階ベッド部分も暖かいです。脱ぎ着しやすいダウンジャケットがあれば良いでしょう。ダウンスリッパがあると床の底冷えを防げます。スリッパはありません。寝るときは暑いですが、深夜になると急に冷え込みます。体調管理に気を付けて。

 

売店

入り口横の売店が飲食物の受付になります。そこで食堂のメニューを注文します。ビールは自分ですぐ脇の冷蔵庫から取り出して会計します。パスタやカレーがあります。

■限定Tシャツ

限定のTシャツが売っているときがあります。宿泊の受付で購入できます。ただし、人気色が早く売り切れます。

■自炊エリア

自炊エリアにて火の使用が許可されてます。お湯を沸かしたりする場合もここで行います。食堂にて100円でお湯を買うこともできます。朝、早く起きて、ここでお湯を沸かしてポットに入れると良いでしょう。出発前は混みます。

 

■水

玄関に水タンクがあります。自由に汲めます。たまに混みます。

■ご飯

指定時刻の少し前から行列ができます。係の人に順に案内されます。する事が終わったら、少し早めに並んでるといいでしょう。

晩ご飯は、名物のステーキの日に当たれば万々歳です。ですが、ホッケという日もあります。その場合はもちもちの水餃子がついてきました。

朝食は鮭やサバがメインです。ご飯、味噌汁はおかわりできます。

ステーキを期待して、オリジナルスパイスを持参するのも良いでしょう。ホッケにかけても美味しいです。

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■消灯

消灯は9時です。一気に消えますので、それまでにトイレを済ませましょう。ヘッドライトを腕か首に巻いておきましょう。朝は5時半に強制的な明かりがつきます。耳栓があるといいでしょう。耳栓をすると目覚まし音に気がつかないデメリットに注意です。

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■トイレ

トイレはきれいです。そしてなんとあたたかい便座です。トイレットペーパーあります。

朝食後は男子トイレは異常に混みます。間に合わないかもしれないくらいです。早めに行きましょう。

■外のトイレ

実は外にもトイレがあります。とてもきれいですし、食後のラッシュタイムもここはガラガラです。おすすめです。靴紐は適当で良いですが、紐が地面につかないようにしましょう。気持ちの問題ですが。

■女子更衣室

女子更衣室が角にあります。安心ですね。

■玄関における注意

朝7時、出発時は非常に込み合います。一度靴を履くと忘れ物に気がついたときに面倒です。しっかり事前に確認しましょう。下駄箱付近は濡れているので靴下を濡らさないように気をつけましょう。そして出口を出た瞬間、例の氷の床に気をつけてください。

■忘れ物

ゲイターとチェーンスパイク、手袋等の忘れ物が多いようです。アイゼンを忘れていく人もいるようです。謎です。

 

▲ここからは赤岳に向かう状況です。

 

赤岳鉱泉を朝7時に出発し、地蔵尾根を通って赤岳山頂に向かいます。天候に注意して無理のない登山をしましょう。晴れてても今度は雪崩の可能性が浮上します。

 

■まずは行者小屋方面に

赤岳鉱泉からは赤岳以外にも、硫黄岳、大同心など、複数のルートが有り、登山者は平均的に散っていきます。周りに流されずにしっかり自分のルートを確認しましょう。

地蔵尾根に向かうには、赤岳鉱泉を右手に進み、外のトイレ側に行きます。すぐに林の中に入っていく道になります。全て雪道ですので、アイゼンを装着します。実際にはチェーンスパイクでも大丈夫ですが、行者小屋までの歩行トレーニングと思ってください。出発前にしっかりとアイゼンが靴に噛んでいるか確かめましょう。ここで初めてアイゼンを付けるということになりますので、うっかりミスに注意です。靴とアイゼンの組み合わせがシーズン初となることもあるでしょう。サイズ調整に時間を取られないように、自宅で調節しておきましょう。段ボールを何枚か床に置いてください。フローリングがえらい事になります。初めてなら前日に履いて、ルート確認を散歩がてらにしておくと、一石二鳥で、暗い朝方でも不安はなくなります。そうそう、出発時、暗ければヘッドライトはつけておきましょう。すぐに明るくはなりますが。ヘッドライトの消し忘れに注意してください。

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■トレッキングポール

必ずしもいるとは限りませんが、バランスをとるのにあってもよいかと思います。ただし、後半は使いませんので重い荷物にもなります。積雪後はトレース脇の雪は圧縮されてないので、ポールを挿してもズボズボと入っていくことがありますので注意してください。一本だけという作戦はいいかもしれません。

■装備、服装

行者小屋までは上り坂が続きますので体が発熱し、暑いです。ですので、出発時は寒いかもしれませんが、林の中は風もありませんのでアウターは脱いでも良いかもしれません。事前に天候をしっかり読んでおきましょう。ヘルメットはここではまだ大丈夫です。バラクラバは最初からつけたほうが良いです。耳や鼻、ほっぺたが冷たくなるのを防げます。

 

■ペース

時間が十分にあるなら最初はゆっくり歩きましょう。汗をかかないように。なだらかな上りはどうしてもペースが上がってしまいます。そして疲れてしまったり、汗をいっぱい出してしまいがちです。

これから向かう森林限界を超えた後半の急登は今度はペースは落ちますので案外疲れません。ジョギングからジャングルジムに変わったと思えばよいでしょう。寒いので汗はあんまりかかないし、心拍も上がりません。温度計があると、客観的に判断できます。ドンドン下がる外気温に注意しましょう。

 

■行者小屋にて装備チェック

林を抜けると行者小屋に到着です。美濃戸からここ行者小屋まではあくまでトレッキングです。ここからが「登山」になることをしっかり認識しましょう。まずは落ち着いてトイレをすませ、再度装備のチェックをします。

このあとの出発時は直後の林の急登で暑くなるのでフル装備ではなく、少し脱ぎますが休憩中は寒いので着込みましょう。

■チェック項目

○アイゼンの装着状態

12本爪のアイゼンを用意しましょう。できればワンタッチ、セミワンタッチアイゼンが外れにくくで良いです。しっかり前後のコバに噛んでるか、紐が緩んでないか確認します。凍ってて気が付かないときがあります。

 

○靴紐チェック

ゲイターに包まれているので気が付きにくいですが、ほどけている場合があります。また、赤岳鉱泉出発時のバタバタで、緩めの締め方になっている場合があります。私は大抵緩んでいます。また、締め過ぎにも注意です。いつもより分厚い靴下を履いていると、ついつい締め付け過ぎになりやすいです。そうなると、血が通わなくなり、冷えます。

○レイヤリング

レイヤリングが適切か確認します。登頂まで、着ている服を無駄に脱がないよう重ね着の工夫しましょう。上下ゴアテックスが安心です。天気に左右されましょう。

 

○暖かい飲み物

ポットにお湯が入っているか確認します。取り出しやすい場所に入れましょう。もし忘れたら面倒ですが、ここで沸かして入れましょう。

○ゴーグル、ヘルメット

ここからゴーグル、ヘルメットを装着しても良いでしょう。ヘルメットのあごひもを確認しましょう。ニットキャップをかぶると調整が必要です。ゴーグルをヘルメットの上に乗せたままだと結露が凍ってしまいます。電熱ゴーグルは曇りません。お高いですが、おすすめです。

私はABOMのゴーグルです。電池内蔵ですが、更にヘルメットに付けたモバイルバッテリーを接続し、絶対に電池切れを起こさない工夫をしています。

 

 

○グローブ

分厚いグローブに変更します。この先から一気に気温が下がります。急登で暑くても末端部はその影響は少なく、外気温に影響されます。内部に一枚薄手の手袋をしておくと、細かい作業に便利です。ですが、分厚いグローブで全てできる方が安全です。

 

○ザックの整理

ここからは風も強くなるし、平らな場所もありません。ザック内部の整理をする最後の場所です。ザック下部には防水サックに入れた予備の下着やソックス。非常食と水。上部にはダウンジャケット、予備のグローブ、お湯ポット、緊急キットなどをいれます。

 

○相互チェック

パートナーがいる場合は、冗談抜きでお互いの装備をチェックしましょう。顎下の部分は見えなかったり、ザックの紐が緩んでる箇所は自分では気が付きにくいものです。また、バーナーやツェルトなどの共同アイテムの場所確認、お互いのアウターや予備装備の場所なども確認しておきましょう。グローブが飛ばされた場合、ザックを下ろすことなく、取り出し合うことができます。風か強く声が聞こえない場合があります。笛を持っておくといいかもしれません。

 

■地蔵尾根

準備ができたら出発です。案外時間がかかっていると思いますが、落ち着いタイムテーブルを確認しましょう。行者小屋に来た先程の道を少し戻り、分岐右側の尾根を登ります。行者小屋からまっすぐ行く道もあり、そちらに向かう人もいますが、そちらは文三郎尾根のルートです。自身のルートをしっかり確認しましょう。スマホGPSアプリを積極的に使用しましょう。ただし、操作は素手にならないように、凍傷の危険があります。

地蔵尾根はジグザグの急登ですが、分岐点もなく登りやすいルートです。樹林帯に挟まれているので森林限界までは風はあまりありません。暑くなりすぎないようにペースとレイヤリングを考えましょう。15分で暑くなるようなら着すぎなので、手遅れになる前に一旦停止し、服装の再装備をしましょう。登山では、「そのうち」とか「あとで」は危険です。思ったなら「今」しましょう。

尾根を進むとハシゴに着きます。ハシゴ部分はボトルネックになるので登る人、下る人で混み合います。焦らないでおきましょう。1つ目のハシゴはまだ森林限界ではありません。まだまだ先は長いです。

■携帯電波

この辺りで携帯の電波が入ります。ピコピコとなり始めます。LINEの通知はおいといて、まずは天気などを再確認しましょう。出発前の情報と大きく変わっている事があります。ただし、素手の時間は極力短めに。タッチペンがあると厚いグローブでもスマホの操作は簡単です。

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森林限界

しばらく進むと森林限界を超えます。

ここまでトレッキングポール の人はピッケルに持ち替えましょう。梯子は半分雪で埋まっています。風に気をつけながら、そして金属同士の低抵抗に気をつけて、一歩づつ階段を登っていきましょう。鎖があるので掴めますが、たわみに振り回されないように慎重に登っていきましょう。下って来る人がいますので、譲り合って通過してください。登りより下の方が危険なので、下り優先です。

次第に地蔵尾根は細くなります。ですが過度に怖がらずにバランス良く歩きましょう。トレース以外は柔らかい雪の状態かもしれません。ピッケルを差して逆にバランスを崩さないよう、ピッケルにあまり体重をかけないようにしましょう。

トラバースが何箇所かあります。雪面の足場をよく考えて渡りましょう。斜め直登のトレースがある場合がありますが、下りで使った跡かもしれません。この場合、これを登ると体力を大幅に使うラッセルを強いられることになりますので、急がば回ってください。

景色も良くなり、次第に状況になれてくる頃ですが、こういう時に事故は起こります。決して気を緩めることなく登っていきましょう。

 

■地蔵尾根終了、稜線へ

稜線に近づくとお地蔵さんが見えます。ここが地蔵尾根の終了点です。ここから稜線沿いに右側に行くと赤岳です。尾根向こうからも風が吹いてくる場合があります。バランスを取りながら進みましょう。視界が良ければすぐそこに赤岳天望荘が見えます。まずはそこに向かいましょう。

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■赤岳天望荘

赤岳天望荘(標高 2,722m)

冬季の営業期間にご注意ください。

稜線沿いの爆風のオアシス赤岳天望荘、アイゼンを履いたまま中にはいれます。右のテーブルに装備などを置いてアイゼンを外しましょう。中は暖かく、雪で濡れた手袋やバラクラバ、ニットキャップを乾かすことができます。その間に地下道を通ってトイレに行ったり、昼食をとったりしましょう。

カレーや、牛丼、おしるこなど、温かい食事が待ってます。

天気が良ければ赤岳がすぐそこに見えます。高く急に見えますが、実際はなだらかな上り坂です。

山というのはきれいな円錐ではありません。富士山もしかりです。その姿を見て左右の切れ落ちる角度が自分が進む稜線の角度だと勘違いすることがあります。でも実際はその角度よりもなだらかな場合が多いです。その逆もありますが。地図を見て山の等高線がどうなっているか確認しましょう。

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■赤岳に出発

十分体力を回復させたらいよいよ赤岳に向かいましょう。

アイゼンと装備を慌てずしっかり確認しながら装着します。ゴーグルを一度きれいにしておくといいでしょう。ここからカメラを持ってる人は撮りながら歩くことになるでしょう。ですが、くれぐれも気をつけてください。一歩踏み間違えると滑落してしまいます。

出入り口を右側に回り込むと赤岳の姿がはっきり見えます。ビクトリーロードですね。天気が良ければ左に富士山が見えるでしょう。意外と大きなその姿は感動モノです。

なだらかな稜線なので、ジグザグに登る道がいくつもありますが、どこが安全で登りやすいか見極めて登りましょう。二番手の人はその様子を見て、同じ道を使うか、別の道を使うか考えましょう。決して同じ道を通らないといけないということはありません。ありませんが、その別道が安全という保証もありません。路面が凍ってますので、くれぐれも気をつけてください。そうこうしているうちにすぐに赤岳の山頂に到着します。山頂に赤岳頂上山荘がありますが、冬季は閉じています。

メンバーが全員揃うまで風よけとして使いましょう。ここから真の頂点まで細い尾根を通ります。向こうから来る人がいないか確認して進みましょう。

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■赤岳登頂

赤岳山頂(標高2899m)

赤岳山頂は周囲360度のパノラマが広がっています。正面に阿弥陀岳、振り返ると横岳が見えます。

風は強い場合があります。長居はせず下山に向けて切り替えましょう。

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■下山ルート

ここからの下山は二種類あります。一つは来たルートを引き返す地蔵尾根コース。もう一つは周回ルートになる文三郎尾根コース。今回は文三郎尾根コースをたどります。

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文三郎尾根へ

赤岳山頂直下を下ります。いきなりの雪壁なので、十分注意して降りましょう。複数ならばロープを出して安全を確保することも選択肢としてありです。距離は短いですが、だからといって簡単であるとは言い切れません。岩と氷と雪のミックス帯を気をつけて降りると、分岐点に出ます。右側に下降するルートが文三郎尾根コースです。そちらに向かいます。

文三郎尾根

急で広い岩稜帯で登山道も単純ではありません。そこしか通れない道をうねうねと進んでいきます。稜線を降り、向かいに大きな阿弥陀岳があるからでしょうか、風はそう吹いてないかもしれません。ただ足元に気をつけて降りましょう。細尾根やトラバースが続きますが、焦らず進みましょう。

次第に近くなる阿弥陀岳は圧巻です。時間を確認しながら景色を楽しみましょう。もし晴れていたならラッキーです。もうそんな日に来れることはないかもしれません。振り向くを荒々しい岩稜帯が見えます。あそこを降りてきたのかと不思議な気持ちになるでしょう。

樹林帯に入ると風もなくなります。もうゴーグルを外しても大丈夫です。サングラスに換えましょう。暫く進むと懐かしの行者小屋が見えてきます。

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■赤岳鉱泉にもどる

ここからは来た道を戻るので想像しやすいでしょう。峠を超えるともう下り坂しかありません。おめでとうございます。この日に帰る人と、もう一泊する人がいます。大抵はこの日に帰る人でしょう。その場合は時間を考えながらスケジュールを組みましょう。

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■アイスクライミング体験

赤岳鉱泉では定期的に予約制でアイスクライミング体験会が行われています。午前中にありますので、さらに一泊して体験するのも良いでしょう。とてもいい経験になります。

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■下山

晴れていれば思い切ってジャケットを脱いでもいいかもしれません。

赤岳鉱泉からの下山はチェーンスパイクで良いでしょう。豪雪の場合はまた別の選択肢となるでしょう。登りよりも軽快にルートを歩けるでしょう。あ、もうこんなところ、と楽しくなります。

標高が低くなるとたまに雪面がなくなることがあります。チェーンスパイクの脱ぎどころが難しいです。外したとたん、滑って転ぶ場合があります。つけているつもりにならないで慎重に歩きましょう。

車道が広くなり、だんだん勾配もゆるくなります。どの登山もそうですが、序盤が異常に長く感じます。我慢してあるきましょう。そうすれば、じきに美濃戸口が見えてきます。お疲れさまでした。

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木曽駒ヶ岳 宝剣岳 年末年始 厳冬期登山 下山編

暇な小屋生活

小屋の中は昨日とは違い、静かだ。知り合った人たちと団欒という名の暇をつぶして時間をを使う。濡れたものを乾かすエリアには一組のグループがいて、彼らは山岳写真の会の人たち。そんな会があるのかと、一つ賢くなった。

たまに外の様子を見に行くが、やっぱり天候は良くならない。

時間は淡々と過ぎていき、夕ごはんの時間になった。

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晩ごはん

今夜もボリューム満点のメニュー、エビフライにメンチカツ、牛皿、魚煮付け。なんだこれすごい、、、。

 

前回

www.yamakamera.com

 

 

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食べ切れるのかまたもや不安になる。ゆっくり噛み締める。うまい。そしてなんだか皿がゴージャスだ。この皿もまた下から持ってきたのだろう。普通は軽いプラスチックの皿だが、ガッツリこれは陶器だ。重い。思い。

青年はなぜだかあんまり食べない。お腹はペコペコらしいのに。年長のおじさんが気がついた。そうだ、彼は宗教上食べれないのだ。何ということだ。。。

聞けば、食べる人もいるらしい、グレーゾーンがあるようだが、彼は立派な精神なので、手を付けない。酒も飲まない。そしてスリムでうらやましい。

どうにかがんばって完食した。山登りでは痩せない。

寝るまでの時間を使ってザックの話

今回小屋ではほとんどの時間、この食堂で過ごしている。二回の寝室は寝るときしか入らない。装備の整理も食堂だ。なんならザックも食堂に置きっぱなしにしている。

今回のザックは、Hyperlite mountain gearのPRISM PACKだ。

素材はダイニーマ製、サイドにスキー板等を装着できる。ヒップベルトと、上蓋は取り外し可能、40リットルで、900グラム以下。素晴らしい。

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 ただし、白いので汚れが目立つ。毎回帰宅後、お風呂で汚れを落とす。愛だよ愛。この黒モデルがでたら、相当売れるだろう。この素材は黒、あるのかな?

明日はとっとと下山するだけだ。天気が良ければドローンでもあげよう。天気が良いと言うのは、農家なら適度な雨と晴れが続くことだが、山では風だ。風が一番危ない。体が吹っ飛んでいく。

夜になっても天気は優れない。ああ、昨日夜景撮っとけばよかった。と、祭りの後にいつも思う。

 

なぜ山に登るのか

なんで山に登るのか?といろんな人に聞かれるので、自分でも考えてみることが増えた。

いろいろ考えた結果、「なぜ山に登るのかを考えるために山に登る」これがいちばんしっくりきた。まいどまいど、答えは見当たらないし、毎回答えが違うかもしれない。

ただ、山頂でカップラーメンを食べる、というのは、一つある。下山後のビールのためにというのも、あるといえばある。

また、登山はスポーツのカテゴリーでもあるのでややこしくなる。勝ち負け、そしてタイム更新などを考えない真剣勝負のスポーツを「なぜするのか」ということだろうか。ボクシングでも、サッカーでも100メートル走でも、勝者はもちろん敗者も、そしてタイム更新しなかった人も、みんな笑顔で笑って終わるスポーツ、のようなものだ。もし、観客がそれを見たなら、いささか茶番に見えてしまうだろう。その競技者に、怪我のリスクもあるのに、勝ち負けもないのになんで(ここでいう架空の)サッカーをやっているのか、不思議に思うだろう、それと同じかもしれない。

 

そんなこんなで、明日の準備を終え、寝る。

布団の脇にヘッドライトスマホ、水をおいて寝る。これはどこでも必須だ。山小屋はインフラは完備してない。災害時に近い感覚が良いだろう。山に入ると財布は殆どいらない。宿泊費、食費、トイレ使用費以外に使うことはまあない。ああ、バッジと手ぬぐいくらいか。

 日の出

数時間がたち、日の出前に起きる。新年2回目の日の出を拝みに準備する。どうやら天気は回復しているらしい。カメラとピッケルを持って外に出る。爽やかな紫の朝。昨日と全く同じだ。同室の消防士の男性と一緒に中岳に登ってみた。昨日とは違った朝焼けが見えた。

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元気玉を持つときは、自分の手の影をレンズに来るように動かすとかんたんだ。

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来てよかった、これが「なぜ山に登るのか」の答えかと聞かれると、そうではない気もするが、あってる部分もあるような気がする。

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ご満悦で小屋に戻ると朝ごはん、素晴らしい。

朝食

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朝は毎度適量で嬉しい。

みんなで、今後も会えたらいいねと語り合い、かつ、細かい連絡先は交換しない感じで分かれる。これが良い。連絡を取り合えば、偶然会えることがなくなる。

とおもっていたら、そうはいかなくなった。おじさんの一人が、手袋をなくしてしまったようで、私の予備を貸すことにした。なので、連絡先を教えて、後日返送してもらうことになった。でも、それはそれで、ほっこりした。

ドローン

私は一人残り、ドローンの準備をする。mavicminiという超軽量のドローンだ。若干風が心配なのだが、それもテストだ。

外に出てドローンを飛ばす、上空に上げるとものすごい勢いで気体が揺れた。荒波に揉まれる小舟のようだ。とりあえず風のない層を探しながら上昇させる。なんとか1フライトはできたが、地形上、常に風が吹いている状況だ。あまり無理はできない。それに199グラムという凧みたいな重さのものを上げているのだ。致し方ない。

バッテリーを換えてもう一度上昇させると、一気に風にもっていかれた。まさに凧。こういうときは低空で帰ってくるか、その場に着地させるのがよい。その場に居続けると、ホバリングできず吹っ飛んでいく。

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剣岳を回そうかと思ったが、とてもじゃないので諦めた。やっぱり、phantomくらい持ってこないと風はきつい。

 

下山

とっとと片付けて下山に切り替える。

おじさん二人は先に千畳敷に降りた。若者は木曽駒ヶ岳に登ってから降りると言っていた。

お世話になった宝剣山荘に別れを告げて下山する。

 

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天気は良好、往路とは全く違う状況だ。登ってくる人の迷惑にならないように、横に避けてザクザクと降りる。一気に降りたのでロープウェイまで15分もかからなかった。

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振り返ると行きは見れなかった、見事な千畳敷が見えた。ああ来てよかった。

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早くも再会

建屋に入ると、先行の二人に会えた。というわけで、無事下山を祝ってビールで乾杯。

手袋もその場で受け取ることができて一石二鳥だった。

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ロープウェイの時間まで結構あるのでダラダラと過ごす。ここまでは簡単に来れるので、お洋服で来ている人も多い。お洋服以外の人とは山でもう全員とさっきすれ違った。

もうすぐロープウェイの時間というときに、若者が降りてきた。さっそく全員揃って再開してしまった。こういうものだ。ロープウェイに乗り込みに移動する。

テーブルに高そうなカメラがぽつんと置かれていた。明らかに手袋おじさんの忘れ物だ。大丈夫か、この先。

その後も、バスを降りるまで、一緒だった。

バス停で、それぞれに分かれて解散した。私は例によって温泉に入って、カツ丼を食べて、ビールを飲んで、そして、バスに揺られて大阪に帰ったのであった。

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後日談

帰宅、数日後のある日。 

手袋を貸したおじさんから、お手紙と写真が届いた。カメラの忘れ物のお礼の文面だった。

山に登ってよかったなと、思った。

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おしまい。
 

木曽駒ヶ岳 宝剣岳 年末年始 厳冬期登山 写真撮影編

安心の宝剣山荘

木曽駒ヶ岳からのスノートレッキングを終え、宝剣山荘に戻ってきた。相変わらず狭い通路を通り、食堂に入る。誰もいない。アイゼンを外し、中に上がる。手袋を外して上着を脱ぐ。それらをハンガーにかけて、ストーブの熱で乾かす。天井がガタガタ鳴っている。主人が掃除をしている音だ。昨日とはうってかわって静かな食堂の中、元旦から2日にかけての今日はやはり人が少ないのだろうか。もしかしたら今夜は、僕1人なのではなかろうかと不安になってくる。そのうち何人か増えるだろうと、根拠なく期待しながら昼ごはんの用意をはじめる。そうしていると、チラホラと登山者が、入ってきて休憩を始める。よかった。そして、どうか帰らないで、泊まってくれますように。

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前回

 

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ランチ

本日のランチは「牛飯」のアルファ米に無理やりミートソースの素を入れてみる謎のレシピだ。もちろん家で試作などしていない。ぶっつけ本番のチャレンジメニューだ。お腹に入れば一緒なので気にしない。でも本当はおいしくなってほしい。

昨日と同じテーブルで、お湯を沸かす。持ってきた水がもったいないので、外で雪を取ってきてそれを沸かすことにした。いったん中に入ってあったまった後の外は泣きそうに辛い。雪をどっさりコッヘルに入れて、少し水を注ぐ。鍋との接地面を増やす事で、融ける時間が早くなる。サウナが高温でも耐えれるのは、気体だからだ。あれがお湯なら死んでいる。それと同じだろう。

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お湯を沸かしている間、読みかけの「岳」を読む。そういえば昨日第一巻の初めに、アイゼンを外して斜面を登る青年が滑落するという、最近富士山であった例の件が被ったのを思い出す。山に来て、自然は美しいとか健康だとか人は言うし、僕も思うけど、確かにそういう面もあるが、それは人間が勝手に思ってるだけで、自然は人間に気に入ってもらえるように山をそびえ立ててるわけでも、なんでもない。ましてや、安全に登れるように形作ってくれるわけではない。下山して道路を歩くとよくわかる。

とぶつぶつ考えているうちにアルファ米は炊き上がった。ミートソースの粉を入れる。混ぜる。食べてみる。うまくもまずくもない。

これは、もうないかな。

 

続けてコーヒーを淹れる。インスタントだが、カップに注ぐといい香りがする。おいしい。

まさかのGopro フリーズ

撮り終えたGoproを確認する。先程の木曽駒ヶ岳の映像は青空と雪のコントラストの気持ちの良い動画が撮れている。その一つ前の宝剣岳の動画は、ん、おかしい。

ない。なくはないが、出発してすぐに途絶えた。やってしまった。おそらくバッテリーのケーブルが外れていて、低温で止まってしまっている。あれだけ苦労したのに。無念。といって明日、再アタックするほど愚かではないので、すんなり諦める。はあ。。

主人が宿泊受付を始めると、食堂の数人が窓口に並んだ。よかった。あの人達は確実に宿泊だ。

私は、食事前に宿泊の手続きを済ませていた。聞けば同室のようだ。ソロおじさん3人が同室だ。あと、若者一人は別室だ。何か意図的なものを感じてしまう。

暇なので会話をする。おじさん一人は地元の人で、息子が大学卒業するまで、自由にできるお金が限られることを楽しく話してくれた。もうひとりは名古屋のおじさんで消防士。若者はマレーシアかシンガポールだったか、あのへんのルーツの豊橋の青年だった。彼は日本に来て2年だが、もう20座ほど日本の名峰を登っている。若いってすごい。今日出会う前日も乗鞍岳に行ったそうで、明日からは谷川岳に行くらしい。すごすぎる。

写真撮影

天気は若干悪くなってきた。がしかし、「晴天の写真よりも天気が変わる頃のほうが良い」という事になったので、頑張って行くことにした。

完全防寒で外に出る。風が強く、雲なのか、霧なのか、とにかく白色の風が吹いている。

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剣岳は見えたり、見えなかったり。山荘裏手の撮影ポイントに向かう。そこは先程まで晴天だった帰り道に見定めていた場所だ。谷の際なので気をつけないといけない。

撮影場所に付き、雲が切れるのを待つ。たまに見える山頂部を意識してじっと見つめておく。そうしないといざ張れた瞬間にカメラをフレーミングできないからだ。雲が切れても5秒ほどでまた雲の中に山は消えてしまうのだ。

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体に吹き付ける風は谷からなので、向かい風だ。座ると踏ん張りがきかないし、いざ撮影のタイミングというときに惜しい数秒を使ってしまう。ゆえにじっと耐えながら風に向かい合って立っている。だが時折、風が急に反転することがある。向かい風に体を預けて前かがみでていると、急に背中をドスンと押される風に変わるのだ。目の前は崖なので、それは恐ろしい。こうやって稜線でふっとばされるのだなと、痛感した。前後左右の風を意識しながら、じっと時を待つ。

カメラはSONYのa7iiiに16-35/F4 低温にも強いカメラだ。

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振り返ると木曽駒ヶ岳の方は青空だ。その青空の空洞が宝剣岳にきてくれればいいのだが、残念ながら風向きはそうなっておらず、東の方に晴れ間は向かっていく。それでもたまに西の空からの太陽が眩しく輝くことがある。それも晴れ間を表しているので、まだかまだかと、カメラを構えて待つ。

待つこと1時間。すっと宝剣岳が目の前に現れた。雲が切れたのだ。いそいでフレーミングし、シャッターを押す。そこにずっとある山なのに、撮り方はスポーツの撮影だ。一瞬を逃してはいけない。

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シャッターを押しながら、構図を変えて撮っていく。ショータイムは数秒で終わった。その後の第二波を待っていたが、宝剣岳はそれ以降姿を表さないので、諦めて撮影は終了することにした。

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山荘に戻るとカメラは一気に白くなった。もうこれで当分は撮影できない。

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 つづく

 

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木曽駒ヶ岳 宝剣岳 年末年始 厳冬期登山 宝剣岳登頂編

9時 宝剣岳に向かう

出逢った人達と、お別れを言って宝剣岳に出発する。まずは小屋を出てすぐ右手の斜面にそって進む。ここからまっすぐ宝剣岳に向かって登って行く。宝剣岳の容姿は、東側カール部はストーンと斜面がまっすぐそして雪が深く積もって雪庇になってるが、西側はゴツゴツの岩が露出し、険しい表情をしている。風の影響だろう。西側から吹いた風が山を越し、カール側へぬけた時、気圧の差で東のカール側から風が吹き込む。紙の平らにして上の方に息を吹きかけたら紙が持ち上がるのと同じだ。

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前回

 

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まずは千畳敷を見ながら雪庇に気をつけて稜線を登る。山頂までの距離は大したことないが、登山のリスクは距離ではない。

踏み跡が無いのでゆっくりゆっくり進んでいく。とりつきまで来ると、その迫力に圧倒される。しかし、引きで見てたほど斜面の角度はキツくない、気がする。

稜線沿いに進んでいくが、落ち方が急だったので、少し戻って巻いて登る事にした。稜線はやめてそのまま夏道らしきルートを見つけたのでそちらを選んだ。やや上に上がりながら、先の岩バックナンバーまでトラバースする。雪山のトラバースは恐ろしい。ステップが2箇所抜けたら落ちてしまう。アイゼンをしっかりと蹴り込むが雪の締まりが悪い。チェーンを掘り起こしてピッケルを引っかけて横這いで進んでいく。

雪に埋もれた岩場に着いた。ここからまっすぐ上に登るのだが、ミックス帯なので、慎重に登って行く。雪が深いと思ってアイゼンを蹴り込んだらそこだけ浅く、岩で脚全体が弾かれる事があるので、ゆっくりゆっくり足を置いていく。たまに出てくるチェーンにピッケルを引っ掛けて登る。だが、そのままチェーン沿いに進むと思っていたルートではなくなりそうだ。右側に巻く道はチェーンはあるが切り立っていたので、そちらには行かず、雪壁を直上する事にした。そもそも宝剣岳はもとより木曽駒ヶ岳もこの時期にしか来たことがないので、夏の状態は知らない。先入観がないのはいい事だ。

雪壁はこれまでで一番急で柔らかかった。両手を決めてしっかりステップを作って登る。下りのためでもある。だが、じーっとしていたらそのうち崩れておちそうでもあるので、サクサクと登る気持ちで慎重に足を上げていく。上を見るとゴールが見えている。20メートルか、それ以下か、それ以上か、分からないが、とにかくあそこに着くまで、同じ動きを繰り返す。パソコンも安定している時に、無理にアップデートしたら調子が悪くなる。あれと同じだ。このペースが今日の今の雪には良いのだろう。足を置くときに下が見えるのだが、それはもう恐ろしい。どこまでも落ちて行けそうだ。だが、風もなく吹雪いてもいない。落ち着いて登っていく。

 

雪壁のリップにピッケルを掛けたとき、安心して少し泣きそうになったのは誰にも言えない。そのまま体を持ち上げて立ち上がる。

向こうには千畳敷が広がり、見渡す限り、雪山が広がる。下には山小屋が見える。高度感は大した事はないが、全く気を抜けなかった。慎重に山頂部に上がる。宝剣岳、まずは登頂成功。

剣岳登頂

写真を撮る。少し時間をもらっていろいろ考える。あまり長居はしたくない。あっという間に天気が変わるのが通常運転の宝剣岳だ。とっとと降りたい。登りたいし、登ったらすぐにでも降りたい山は例え難い。ずっと居たい山もある。でも、ここは早く降りたい。

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ホワイトアウトしたら嫌だ。

雪壁のリップに戻る。いつも思うのだが、身長の分、高さが増し、そして斜面の角度に対して身体が前傾しているので、余計に急に見える。斜面が80度ならば、その上からまっすぐ立って見たら10度分前屈みになっているので実際の斜面より急に見えるのだ、多分。

そしてクライムダウン一歩目を決めるのが一番怖い。しっかり手を伸ばしておけないし、今回は雪がゆるいので片足では支えられない。ゆっくり両足を置いてそして一歩づつ降りる。登りで作ったステップはお役に立たないようでサクサクと崩れていく。マジか、、と、思いつつ、それでもゆっくりなるべく雪をこわさなように降りていく。何度かアックスに体重がかかりそうになった。いつまで続くかわからない雪壁を下りる。まだまだあるが、確実に降りているので、気を抜かず、かつ緊張しすぎないようにリラックスして身体を動かすよう、したいのだがそうは思ってもそうはならない。とにかく雪を信じて降りていく。登りでサヨナラしたチェーンがやや右にあった。届かないので、二歩、右に進み、チェーンをピッケルで引っかける。ようやくリラックスできた。そのままチェーンにピッケルを掛けながら降りていく。何という安心感と、セコ技。これで良いのだ。

あとは自分の踏み跡を辿って降りていくだけだ。とは言えまだまだ足場は悪いし雪壁下りもある。最大の難所を越えれたからと言って、今後無事故である保証は無い。私はよく下山終了直前に足首を捻る。心の緩みは足首の緩み、だ。

焦る気持ちを抑えてゆっくり進んで行く。そのコントロール不完全の心の中心に宝剣岳に登れたという熱いものがあるのがわかる。

切れた崖のルートが、終わり、なだらかな斜面に出た時、安心感に包まれた。そこからの記憶はあんまり無いが、小屋の主人に無事帰ってきた事は報告した記憶がある。これは良い思い出なのだろう。でも、こんなソロ、オススメはしない。せめて2人以上で。

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10時 宝剣山荘到着

小屋に入って装備を外す。時間にして1時間もかかってなかったが、午前中まるまる使った気分だった。

小屋では一人ぼっちだ。今夜、私以外で泊まる人はいるのだろうか。不安になった。

そういえば、ここ宝剣山荘はドリンクが売っているが、水もビールも、同じ300円だ。どうなってるんだろう。重さで値段が決まる、そんな気がする。

落ち着くと、暇になった。

明日はゆっくり下山するだけだし、午後から天気が変わるかもしれないので、木曽駒ヶ岳まで行く事にした。

一旦切ったgoproを再度入れる。バッテリーコードが外れていたので繋ぎ合わせる。

ピッケルは一本で良い。

木曽駒ヶ岳へ出発

晴天の中、今度は先ほど登った宝剣岳を背にして進む。すぐ小高い丘が見えるのだが、中岳という中間の山だ。あの先にまだ見えない木曽駒ヶ岳がある。中岳も木曽駒ヶ岳千畳敷から登ると、斜面は短いのでトレッキングにちょうどいい。ただ、景色が短調なので、振り返って宝剣岳を見る事をお勧めする。という事で、木曽駒ヶ岳は、帰り道の方が楽しい。行きはただひたすら、なだらかな斜面を2回登り、1回降るだけだ。中岳のとりつきに見慣れたザックが2個、捨てたあった。置いてあった。あのテント泊2人のだ。気持ちは大いにわかった。中岳の斜面はどこを通っても大丈夫なくらいなだらかで丸い。その頂上部にその2人がいた。お別れをしたのにまたすぐに会えた。よかった。

今度こそお別れを言って木曽駒ヶ岳に出発した。一旦登った中岳を下りる。ここはぜひアップダウンなしで、トラバースしたいが、冬は危険すぎて正規ルートでは無い。

目の前には既に木曽駒ヶ岳が見えていた。こんもりとした山だ。どこから見て「駒」なのだろうか。

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そうぶつぶつ思いながら進んで行く。程なく山頂に到着。ここには祠があるので、初詣をする。寒いのですぐさま引き換えす。

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思った通り、帰りは宝剣岳を見ながら歩けるのでとても良い。来た道を引き返し、たまに写真を撮りながら小屋の方に戻る。

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今夜も晴れるといいな。

続く

 

 

 

木曽駒ヶ岳 宝剣岳 年末年始 厳冬期登山 初日の出編

2020年1月1日 元旦

朝、目を覚ますと、部屋は電気がついて明るく、既に同室の人は誰もいなかった。食堂に降りると、宿泊のみんなが外に出る準備をしていた。日の出までまだ1時間くらいはあるが、初日の出を、思い思いの場所で見るためだ。中岳に行くもよし、伊那前に行くももし、木曽駒ヶ岳に行くもよし。私も防寒の用意をしてカメラを持って外に出る用意をする。どうやら天気は絶好のようだ。だが外でじっとしてる行為はとても寒い。

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持ってきた服を全部着込んで外にでる。寒い。風は強いので、ドローンはやめておく。すぐそこの乗越から日の出は見れるので、その周辺をうろうろする。伊那前岳の方に人が集まっている。そこからはモルゲンロートの宝剣岳がきれいに見える。空は青から赤紫に変わっていく。

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前回

 

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初日の出

乗越の高台にて日の出を待つ。次第に向かいの南アルプスの稜線がキラキラと輝き始める。写真ではなぜか表せない微妙な光だ。その向こうの富士山の斜面が明るくなる。一瞬眩い光が差し込んでくる。日の出だ。

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一斉に歓喜の声があがる。目が慣れると太陽の輪郭が見えた。太陽はぐんぐん登りまさに正月の朝、というめでたい光景となった。

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感慨深いものを感じながらじっと太陽を見つめる。この一瞬はもう二度とこないのだ。これは毎日の事だが、いつもは気にしない。

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一通り太陽が出切ったところで、小屋に戻る。初日の出を拝む、というのはどういう事なのだろう?宗教なのか、民族的文化なのか、いまいち確信がない。

 

 

初朝食

7時30分、ちょうど良い感じで朝ごはんができた。例によって、主人ワンオペの作業なのでみんなで配膳を手伝う。朝はなんと、やはり、去年と同じく、プチおせちっぽい献立だみんなで新年の挨拶をしながらゆっくりいただく。

(写真は去年の朝食。今回、撮り忘れた。)

 

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今日は特に急ぐことはない日だ。こういう日を設けるのはとても稀で贅沢だが、焦って無理して行動するよりもはるかにリスクが低くなるからそ安全面では良い。たしかに予備日1日あれば、他の山にも行けるだろう。だが、今回の目的は一点、宝剣岳登頂なので、3日間で一番状況が良い時に登りたかったので、余裕のあるスケジュールを組んだ。昨日が良くて今日が悪化していたら、昨日登っていただろうし、昨日しか登れないならば、諦めてたかもしれない。今日の午前でまとめて登って麓まで降りる事もできるかもしれないが、それはそれ、万事がうまくいったならばの本当の予備日ができただけだ。

 

剣岳

とにかく、私は、今、宝剣岳に登るにはうってつけの状況を得た。風も弱まっている。

皆は木曽駒ヶ岳に行く準備をしている。天気が良いので皆、昨日行けなかった木曽駒ヶ岳に登るのだ。時間と共に人は少なくなっていく。荷物を全て食堂に下ろして、片隅で準備を進める。goproをヘルメットにとりつけ、これまたヘルメットに取り付けた予備バッテリーと繋ぐ。これで止まらないはずだ。

カメラはザックに入れる。ハーネスにセルフビレイコードを結びつける。メインロープはなし。スリングを数本持っていく。

暑くはならないので、着込む。ピッケルを2本、アイゼンをしっかり確認する。ゴーグル、グローブ、ちゃんとある。

いざ出発。外に出ると、テント組の人たちも出発の準備をしている。主人がちょうどいたので、宝剣岳の状況を聞いてみる。ルートは2種類あって、夏道のトラバースか、稜線沿いの冬道。

状況は悪くないとのことだった。安心。でも過信は良くない。人はぞれぞれ違う。小屋開けの準備で千畳敷から小屋まで毎日アイゼン無しで3往復するというツワモノの「大丈夫」はなかなかハードルが高い。

とにかく、天候が悪くなる前に出発。Goproも回っている。ゴーグルのヒーターもランプが点灯している。

 

つづく。

 

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木曽駒ヶ岳 宝剣岳 年末年始 厳冬期登山 年越し山荘編

木曽駒ヶ岳 宝剣岳 年末年始 厳冬期登山 年越し山荘編

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宝剣山荘

剣岳のすぐ脇にある2階建ての山小屋、宝剣山荘。今回の入り口はおそらく冬季用の非常口で、いつもなら広い掃き出しの扉が玄関となる。そこはまだ板に覆われていた。その外はまだ雪にうもれている。狭い通路、まるで炭鉱のような通路を身をかがめながら入る。何度か頭をぶつけ中に入った。暖かい。ストーブが部屋を温め、温度差は30度ほどあるだろう。早速装備を剥がす。アイゼンを外すのがもどかしい。この山荘はベニヤ板までしかアイゼンで入ってはいけないことを覚えておこう。アウターを干し、手袋も干し、軽くなった体でストーブの近くに椅子をおいて座った。一回はほぼ食堂になっていて、食事タイム以外は休憩の間として使われる。ちょうど25mプールぐらいの空間だ。そこに15ほどのテーブルが有り、折りたたみ椅子が備わっている。入口近くは土間のようなコーナがあり、物干しとストーブがある。ベンチもあるし岳も全巻ある。ドラゴンボールもある。続々と人が入ってくる。この中の何割かは宿泊者で、残りは日帰り登山者だ。外は非常に状況が悪い。見たところ、木曽駒ヶ岳の方に向かう人はいないようだ。いや、もしかしたらいたかもしれないが、小屋に入ってきた人たちでもう一度外に出るような動きをする人はいなかった。私も本来なら荷を整理して木曽駒ヶ岳までののんびりしたスノートレッキングをするつもりだったが、天気が悪すぎるので良くなるまで待機することにした。皆もそうだろう。

 

前回

 

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昼ごはんはカレーメシ

荷物からバーナーとシェラカップを出し、湯を沸かす。昼ごはんだ。今回のバーナーはスノーピークの小さいあれだ。出発準備当初は燃費効率のためにジェットボイルを考えていたが、かさばるので小型軽量の仕組みに変えた。メニューはNISSINのカレーメシだ。カレーメシ自体はかさばるので、アルファ米の袋に詰め替えて持ってきた。これはとてもいいアイデアだった。ご飯自体も数分で戻るし小型になる。今後もこのやり方は使われるだろう。

お湯がわき、カレーメシに湯を注ぐ。もちろん湯量も事前にメモし、マジックで袋に書いている。

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まさに準備万端。人は食べるために生きていることがわかる。

数分後、出来上がったであろうカレーメシをスプーンでかき混ぜる。さけるチーズを裂いて投入する。完成。

下であったツワモノクレイジーテント泊の二人組と会話できた。彼らも大阪から来たようだ。

食べながら会話を続ける。うまい。うますぎる。

彼らは今からテントを張らないといけない。あの過酷な状況で。おそろしい。

カレーを食べ終え、コーヒーを飲む。インスタントだが熱い飲み物はうまい。きっと白湯でもうまい。

宿泊手続きが始まる。結構な人数が宿泊しそうだ。よかった。

みんながのんびりご飯を食べている。外に出ていく者はやはりいない。明日が晴れるか心配だ。予報は良いようだが、ここは山だ。信用ならない。

 

ザックを2階の部屋に持って上がる。4名でギュウギュウの部屋に3名が泊まることになった。こんなもんだ。広い広い。

下に降りる。大してすることがないので、何もしない。ただダラダラとお喋りをする。ビールも飲んだだろうか。

2時をまわる頃には人は整理され、宿泊者のみとなった。40人ほどだろうか、想像以上に多かった。

テント設営

外でテント泊の二人組が気になったので、様子を見に行く。

テントは張れていた。よかった。スノーブロックを積めるだけ積んで風に備える手伝いをした。近くにソロテント泊の若者クレイジーガイがいた。彼はまだテントが張れていないようで、ちょうど私のテントと同じものだったので設営を手伝った。ペグが雪用がなかったので、コンビニ袋をかき集めて渡した。ここもスノーブロックを積めるだけ積んだ。他にすることがないときは、何事でも夢中になれるタイプなのか、私は。

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無事両者とも設営が完了したので小屋に戻る。天国だ。

雪山のテント泊が初めてだという二人組の一人、こんな過酷なデビューとはなかなか万能の神もいたずらがすぎる。ただ、どうしようもなくなったら、この小屋にはいいってくればよいのだから、神は優しいのかもしれない。極端だ。

夕方近くになり、ご飯の準備が始まる。昨年と同じならば、めちゃくちゃ量が多いはずだ。なので、昼後以来、おやつなどは口にしていない。どう考えても食べ切れなくなることは明確だ。外はいつの間には天気は回復していた。明日の日の出は間違いない。テンションが荒ぶる。

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大忙しの宝剣山荘

厨房で主人一人が準備をしている。噂ではもうひとり来る予定だったが、これなくなったので一人で切り盛りしているらしい。ありえない。すさまじい手際の良さでご飯の準備が整っていく。彼一人が配膳まで全てやっていたら、ご飯をよそうまで時間がかかりすぎる。そう察した食いしん坊の人たちが配膳をかって出た。小さなカウンターに出されたご飯をどんどんテーブルに運ぶ。そう、ここは自衛隊駐屯地、一人のためではなく皆のために。と見せかけて早くご飯が食べたいだけなのだが、なぜか、主人が感謝してくれて、ビールを一本頂いてしまった。

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最後の晩餐

魚のフライ、メンチカツコロッケ、サバの味噌煮、ビーフシチュー。やはり、とんでもない量だ。

2019年最後の晩餐をいただく。

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同席の人たちと楽しい会話をする。話題は絶対にあるなと思ったがやはり、富士山滑落の件だ。良い悪いとは特に思ってないが、自分ならどうしただろうという感じだった。一人のおじさんは元旦に富士登山をおこなったことがあるかなりのツワモノだった。ほかにもありえない距離の縦走をしたという。下には下がいるが、上にはもっと上がいる。そんな気持ちになった。

満腹この上ない状態で食事を終えた。本来の「宿泊」ならこのあと温泉とかになるのだが、ここは吹雪の山荘、することは飲酒と雑談と、読書しかない。もちろん写経などしてるひとなど一人もいない。

テレビは付いていたので雑音代わりにはなった。テント泊の人たちが食事を始めたので、持ってきたワインとおつまみを持っていき混じった。

そのご飯がかなり凝っていて、アヒージョや、ローストビーフなど、おおよそ山では食べれないものがずらりとテーブルに並んだ。だがしかし、いは満腹なので、目で味わいながら酒を飲んだ。

そういえば、ソロテントの若者がいない。天国へおいでと声をかけ、彼も席に入った。空腹だったので、美味しそうにパクパク食べた。

もうすぐ12時になろうとしたとき、あのソワソワ感が食堂を包んだ。今年はにぎやかだ。その賑やかさをひっぱているのが「2020」と形つくられたメガネを掛けている若者たちだった。場が和む。ストイック過ぎるのもにぎやかすぎるのも、嫌なので丁度いい。

年越し

カウントダウンが始まり、2020年になった。

あけましておめでとうございます。と乾杯をしあう。なんと幸せな空間だろう。まいにちが年越しなら人間は戦争をしないかもしれない。

ちなみに水色のフリースのおじさんが、厳冬期富士登山をした人だ。

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落ち着いたところで席に戻り、あらためて新年の挨拶をする。

ダラダラと時を過ごしていると、消灯の時間になったので、慌てて片付け、私は2階へ、彼らはテントにそれぞれ向かった。

そこからは、グッスリ寝た。星の撮影もしたかったが、また明日の夜もあるので、撮影しないで寝た。後々後悔することとなすことなど、このときの私はもちろん知らない。

 

続く

 

 

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木曽駒ヶ岳 宝剣岳 年末年始 厳冬期登山 登山開始編

木曽駒ヶ岳 宝剣岳 年末年始 厳冬期登山 登山開始編

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 前回

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 バスチケットとロープウェイチケット

昨年と同じタイムスケジュールだが、前回と違うのが今回はチケットをバラで買ったので、登山バスとロープウェイのチケットを菅の台で買わなければならなかった。前回は大阪から千畳敷まで一枚のチケットで行けるものを使ったのでその必要はなかった。

そして去年は多くの人がバス停に並んでいたように記憶している。そのため、バスは8時15分だが、早めに行ってチケットを買って並んでおこうと思ったのだ。

このことは予想通りだったのだが、まだチケットブースは開店しておらず、かつ、前回と比べて人もまばらだった。もう少し遅くても良かったと思う。

チケットブースの前の階段に座り、空いた時間で準備を進める。ゲイターを履いてギアを外につける。ヘルメットはバックパックにつけるより満員バスならば、かぶったほうがザックを持ちやすいはずだ。トイレもあるので済ませる。

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それでもまだ時間があった。最近ハマってる詰将棋のアプリをする。3手詰なのになかなか難しい。

基本的に相手玉将の周辺1マスにすべてこちらのコマを利かすわけだが、そうできないマスは相手のコマをうまく誘導してそこに導く。これが結構難しい。

そんなこんなでチケット売り場も開いて無事購入完了。人も増えてきた。バス停に並びバスを待つ。

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大きな虹が歓迎

まもなくバスが来るというときに山の方に大きな虹ができた。そう、この日は朝から霧が濃く、次第に晴れつつも湿気の多い日だったのだ。上の方は流石に雨ではなく雪だろう、だが晴天は望めないかもしれない。

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バス待ちをしている中に明らかにテント泊のバックパックを背負っている二人がいた。CRAZYガイたちにエールを送る会話をする。

バスが来た。直ちに乗り込む。

バスは数名をバス停に残し、出発した。だがおそらく彼らを運ぶ臨時便が出ているはずだ。でなければ1時間待たないといけない。そんなつらい感じの残されかたではなかったように思えたからだ。

バスはつづら道を駆け上がりどんどん登っていくが、雪は非常に少ない。

ロープウェイの乗り場についた。だがしかしここでも雪はほとんどなく、雨上がりの様相だった。不安で仕方がない。

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ロープウェイの出発時刻も計算されているので程なく出発。もう半ば諦めた精神状態で外界を見る。やはり雪は少ない。地元の人にとってはとても良い。過ごしやすい冬で良かった。雪なんて春までたまる粗大ごみだ。次第にガスが濃くなっていく。ガラス窓も曇っているので、真っ白で何も見えない。

千畳敷に到着

荒んだ気持ちでいたせいか、ロープウェイ山頂駅、千畳敷につくとそこは猛吹雪だった。ドキドキしながら最終準備に取り掛かる。行動食のパンを一つ食べる。上着のポリゴン4は着ないでザックの上部に詰める。ゴーグルをつける。電熱ゴーグルなので曇ることはない。goproはガスガスなのでつけない。トレッキングポールは役に立たなさそうだ。アイゼンを装着し出発。

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9時50分登山開始

真っ白。看板がかろうじて見えるだけでどこがルートか、初めてなら見当がつかないはずだ。

視界は10メートルはありそうだ。先に行く人や、帰ってくる人が小さくは見えないが、近くにいると見える。

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建屋右手の坂を降りて千畳敷に出る。広いなだらかな場所なので、方向がつかめない。2方向に人がいて、一方からはこちらに向かってきてるので、上の状況を聞いてみたところ、彼は迷って引き返すところだったようだ。もう一方の人のトレースを見つけながら進む。なんとなく点々と人が先に進んでるのが見えた。目を放すと人影が消えてしまう。足元は粉雪がつもり、トレース以外は埋まる。トレースでも埋まる。

やや迷走

ようやく斜面にたどり着いたが、先のほうで停滞している。嫌な予感というか、状況は予感ならずとも悪い。GPSがそういえば先程からピーピーなっていた。ただのアラームかと思っていたが、もしかしてと確認すると、ルートを大きく30メートルほどそれていた。このカールはすり鉢状なので、大きく迷うことはないが、ショックだった。大きな声でルートの間違いをそれぞれ共有し合う。こういうときは恥ずかしがってはいけない。先頭の人も手振りで確認できた。コースに戻るべく斜面をトラバースする。私の後ろについていた人には申し訳ないことをした。しばらくして、目指す谷が見えてきた。一安心。コースにも復帰した。

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あとは延々と登るだけだ。頂上の尾根は全く見えない。淡々とグラウンドを周回し、誰かが「あと1周」と言われるまで走り続ける気持ちに近い。

前の人のトレースは間合いを開けると消える。それほど雪に締まりはなく、崩れていく。

 

埋まる斜面

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斜面の傾斜はしいだいに角度を増していく。これがきつい。まるでサラサラの砂丘を登ってるようで、埋まってしまって上に登れない。そういうのを何度か繰り返していくと、視界に柵のようなものが見えた。あれは間違いではなければ、乗越浄土の柵だ。いつのまにここまできたのだろう。なんだかワープしたかのようだ。

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先頭集団は、何故は柵の方ではなく、左手のストイックな斜面を選択した。まじか、、、、。

私もそれに追従することにした。記憶はないが、しんどかった。

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11時20分乗越浄土到着

斜面を乗り越え、まさに乗越浄土についた。そして予想通り、猛吹雪。さっきまでかいた内部の汗が冷えていく。この先にあるはずの宝剣山荘を目指す。もちろん左手にそびえている宝剣岳はガスで見えない。何度もいうが、ガスはもともと気体を意味するので「ガスで見えない」は表現上おかしい。

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宝剣山荘についた。天国についた。

入り口は左手のトンネルのような低い横穴から入っていく。

中に入る。暖かい。天国だ。

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つづく

 

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