初心者が登る2月の赤岳鉱泉から赤岳登山のレシピ
去年、今年と2月に赤岳に登ったので、その薄っぺらい経験からですが赤岳登山の参考になれば。
★今回のコース『美濃戸口〜地蔵尾根〜赤岳〜文三郎尾根』★
雪山初心者御用達のコース、『美濃戸口〜赤岳鉱泉〜地蔵尾根〜赤岳〜文三郎尾根〜赤岳鉱泉〜美濃戸口』危険箇所はほとんどありませんが、梯子や岩場はありますし、冬季の積雪、天候変化もあるので心して挑みましょう。積雪期以外来たことはありませんが、案外雪道は登りやすいものです。
赤岳は麓からの登山道が、なだらかで2月でも難なく赤岳鉱泉に行けること、初心者から上級者まで様々なコースが有ることからこの時期、特に人気です。というか、この時期は、ここに人は集中します。思いがけず知り合い、有名人、yotuber、ブロガーにも会えるでしょう。ただし、何度も言いますが、高気圧ど真ん中以外の日は、稜線は常に風が強く天候は不安定です。ましてや暖冬とはいえ、厳冬期です。日によって環境はコロコロかわります。今年登った日は爆風の氷点下で、次の日は無風の晴天でした。私が登った同じ日に八ヶ岳連峰で不幸があったようです。
■赤岳
山域: 八ヶ岳連峰
標高: 2,899m
赤岳は八ヶ岳連峰の最高峰で、長野県茅野市、南佐久郡南牧村、山梨北巨摩郡大泉村(現・北杜市)との境に位置している。山頂は赤岳頂上山荘のある北峰と、一等三角点がある南峰とに、わずかな距離をおいて分かれている。北峰からは県界尾根が、南峰の南にある竜頭峰からは真教寺尾根が、ともに山梨県側へ延び、縦走路は南方はキレットを経て権現岳へ、北方は横岳へと連続し、西方は中岳を経て阿弥陀岳へのルートも通じている。
引用
https://www.yamakei-online.com/yamanavi/yama.php?yama_id=450
■美濃戸口から赤岳鉱泉までのアクセス
美濃戸口から北沢ルートで赤岳鉱泉に入るのが一番のメジャーなルートになります。途中休憩できる山小屋が何箇所かあります。南沢ルートと分岐するので注意。
美濃戸口(標高1490M)~赤岳鉱泉(標高2250M)距離約7キロメートル
前半は車道、後半は登山道です。
■雪の登山対策
雪山用の登山靴が必要です。保温性が保たれる事が大事です。雪山は常に地面が氷点下です。その温度を靴の中に入れない工夫が施された登山靴が必要です。雪山初シーズンで、靴を出発直前に購入したなら、事前に低山で履きなれておきましょう。靴ズレは地獄です。
その時期の雪の積もり方によりますが、赤岳鉱泉までは、軽アイゼンかチェーンスパイクが良かったです。刃の深い12本爪アイゼンでは下の岩場まで当たってしまい、足首を捻る可能性があります。メジャー登山道なので、トレースがしっかりついてます。スノーシューはここでは使わないです。
美濃戸口からの序盤の轍には見えない凍った路面がありますので、私のように転ばないようにしてください。心から凹みます。
■赤岳鉱泉までの服装
今回、美濃戸口周辺はさほど寒くありませんでした。車で来ているので外に出たら相対的に寒いと思いますが、歩き始めるとすぐに暑くなりますので、雪があるからといえ、厚着ぎは汗冷えの危険がありますので、気をつけてください。アウタージャケットの下にベースレイヤー、もしくはアウターを脱いでミドルレイヤーで大丈夫です。ボトムも防寒しすぎなくても大丈夫ですが、脱着しにくいのでアウターから順に外しておきましょう。
グローブは薄手で大丈夫です。ですがアウターグローブをすぐに取り出せる場所に入れておきましょう。ヘルメット、ピッケルはまだここでは不要です。濡れるので薄手の予備は必要です。
■トレッキングポール
トレッキングポールがあれば体のバランスを取りやすいですが、無くても大丈夫です。赤岳鉱泉までずっと穏やかな道です。半分を越したあたりで、車道がなくなり、沢沿の雪道になりますが、ここもトレースがしっかりと付いているので歩行に問題はありません。トレッキングポール を使うと、足の負担は減りますが、正しく使わないと、前荷重になり、腕の負担が増え、合理的ではありません。簡単に言うと、前荷重にしすぎたら、腕立て伏せで歩くようなものです。バランスを取る程度で、前屈みにならず、重心は直下に置きましょう。
■行動食
赤岳鉱泉までは3時間ほどですので、軽くで大丈夫です。出発前に朝ごはんを食べたら、赤岳鉱泉までは要らないかもしれません。でも非常用に必ず持ち込んでください。水分は必要です。
■赤岳鉱泉までの登山道の状態
日陰の林道では道が凍っている場所がありますので気をつけて下さい。案外気がつきません。
所々に木製や金属製の橋があります。この部分で足を引っ掛けたり滑らしたりしそうです。慎重に進みましょう。
次第に山々が見えてきて、足元を見るのが疎かになります。真っ直な道ではないので気をつけて下さい。
■泥除けと日焼け対策
ゲイターはつけておいた方が、防寒と泥除けになります。行きは午前中なので、進行方向に太陽を浴びますので、日焼け止めとサングラスは持って行きましょう。
■赤岳鉱泉という山小屋
3時間ほどで大きなガリガリ君が見えてきたら、そこが赤岳鉱泉です。
そびえ立つアイスクライミングのエリア付近は地面がスケートリンクのように凍っているので近づかないようにしてください。なお、アイスクライミングエリアは、ヘルメットと、アイゼンとサングラスを装備しないと色々危険なので入れません。興味本位でノーヘルで立ち入ると、注意されます。
赤岳鉱泉の建屋についたら、出入り口の外でアイゼン、チェーンスパイクを外します。中では装着も禁止です。
■受付
赤岳鉱泉の入り口に入ると室内への扉の手前に、氷で凍った土間があります。ここでコケる人多いです。さっきまでつけていたアイゼン、チェーンスパイクがない事を、忘れるのです。慎重に。
宿の中に入ったらまず、右手前の受付で宿泊と食事の組み合わせを言って支払いを済ませます。一泊2食で10000円です。必ず山行の前に予約をしましょう。満員だと、少し先の行者小屋に案内されます。
https://userweb.alles.or.jp/akadake/
■下駄箱と乾燥室
しばらくすると部屋に案内されるので、それまでに、登山靴を脱いで雪を払い、下駄箱に置きましょう。荷札が置いてあるので名前を書いて靴に結びます。下駄箱付近床は溶けた雪で濡れてます。友達と来たなら靴を左右替えて場所も変えると、まあ、ないとは思いますが、まさかの盗難防止になります。入り口左に乾燥室がありますが、あまり乾燥してません。してませんが、ちゃんと乾きます。アウタージャケットなどは寝室に入ってそこで掛けた方が乾きやすいです。手袋やバラクラバ、ゲイター、ロープやハーネスなどごちゃごちゃしたものを乾燥室で干すと良いでしょう。取り違いに注意してください。特にゲイターは同じものや似たものが多いので間違いやすいです。乾燥室には棚があるので、2泊する時、部屋を変わる事があるので、デポするものをこの棚に置いておきます。そのために、大型の袋があった方が良いです。小さめのスタッフサック数個、となると他の人に間違えられてしまったり、落ちてしまって、変なとこに置かれてしまい、大切な何かを見失います。
■部屋
係の人に名前を呼ばれたら、部屋に案内されます。遅れないようについていきましょう。山小屋の人は仕事が多く忙しいのです。大部屋は二階か、向かいの棟になります。布団も指定されるので、間違えないようにしましょう。私は案内された場所に腰掛けてたら、「そこ、私の場所です」と他人に言われてしまいました。(小屋の管理人に確認すると、そのお客様が、説明を聞き間違えて場所を勘違いしたようですが、揉めたくないので、当人には伏せておきました。)
布団はキチキチに並んでいます。ので、ザックを置く場所も指定されます。
個室もありますがオプション予約が必要です。
■携帯の電波
赤岳鉱泉周辺は谷になっているので電波はほとんど入りません。充電が無料でできるコーナーが階段の下にあります。そこで、かすかにdocomoは電波が立つらしいです。小屋内にwifiがありますが、今回はうまく繋がりませんでした。どうしてもという時は、大同心に向かう道を15分ほど進むと電波が繋がりました。
■山荘での服
赤岳鉱泉内は気温がまちまちです。食堂内が一番安定して暖かいです。トイレに行く廊下には巨大なヒーターがあります。でも廊下は基本的に寒いです。部屋はストーブがあります。その付近は暖かいです。二階ベッド部分も暖かいです。脱ぎ着しやすいダウンジャケットがあれば良いでしょう。ダウンスリッパがあると床の底冷えを防げます。スリッパはありません。寝るときは暑いですが、深夜になると急に冷え込みます。体調管理に気を付けて。
■売店
入り口横の売店が飲食物の受付になります。そこで食堂のメニューを注文します。ビールは自分ですぐ脇の冷蔵庫から取り出して会計します。パスタやカレーがあります。
■限定Tシャツ
限定のTシャツが売っているときがあります。宿泊の受付で購入できます。ただし、人気色が早く売り切れます。
■自炊エリア
自炊エリアにて火の使用が許可されてます。お湯を沸かしたりする場合もここで行います。食堂にて100円でお湯を買うこともできます。朝、早く起きて、ここでお湯を沸かしてポットに入れると良いでしょう。出発前は混みます。
■水
玄関に水タンクがあります。自由に汲めます。たまに混みます。
■ご飯
指定時刻の少し前から行列ができます。係の人に順に案内されます。する事が終わったら、少し早めに並んでるといいでしょう。
晩ご飯は、名物のステーキの日に当たれば万々歳です。ですが、ホッケという日もあります。その場合はもちもちの水餃子がついてきました。
朝食は鮭やサバがメインです。ご飯、味噌汁はおかわりできます。
ステーキを期待して、オリジナルスパイスを持参するのも良いでしょう。ホッケにかけても美味しいです。
■消灯
消灯は9時です。一気に消えますので、それまでにトイレを済ませましょう。ヘッドライトを腕か首に巻いておきましょう。朝は5時半に強制的な明かりがつきます。耳栓があるといいでしょう。耳栓をすると目覚まし音に気がつかないデメリットに注意です。
■トイレ
トイレはきれいです。そしてなんとあたたかい便座です。トイレットペーパーあります。
朝食後は男子トイレは異常に混みます。間に合わないかもしれないくらいです。早めに行きましょう。
■外のトイレ
実は外にもトイレがあります。とてもきれいですし、食後のラッシュタイムもここはガラガラです。おすすめです。靴紐は適当で良いですが、紐が地面につかないようにしましょう。気持ちの問題ですが。
■女子更衣室
女子更衣室が角にあります。安心ですね。
■玄関における注意
朝7時、出発時は非常に込み合います。一度靴を履くと忘れ物に気がついたときに面倒です。しっかり事前に確認しましょう。下駄箱付近は濡れているので靴下を濡らさないように気をつけましょう。そして出口を出た瞬間、例の氷の床に気をつけてください。
■忘れ物
ゲイターとチェーンスパイク、手袋等の忘れ物が多いようです。アイゼンを忘れていく人もいるようです。謎です。
▲ここからは赤岳に向かう状況です。
赤岳鉱泉を朝7時に出発し、地蔵尾根を通って赤岳山頂に向かいます。天候に注意して無理のない登山をしましょう。晴れてても今度は雪崩の可能性が浮上します。
■まずは行者小屋方面に
赤岳鉱泉からは赤岳以外にも、硫黄岳、大同心など、複数のルートが有り、登山者は平均的に散っていきます。周りに流されずにしっかり自分のルートを確認しましょう。
地蔵尾根に向かうには、赤岳鉱泉を右手に進み、外のトイレ側に行きます。すぐに林の中に入っていく道になります。全て雪道ですので、アイゼンを装着します。実際にはチェーンスパイクでも大丈夫ですが、行者小屋までの歩行トレーニングと思ってください。出発前にしっかりとアイゼンが靴に噛んでいるか確かめましょう。ここで初めてアイゼンを付けるということになりますので、うっかりミスに注意です。靴とアイゼンの組み合わせがシーズン初となることもあるでしょう。サイズ調整に時間を取られないように、自宅で調節しておきましょう。段ボールを何枚か床に置いてください。フローリングがえらい事になります。初めてなら前日に履いて、ルート確認を散歩がてらにしておくと、一石二鳥で、暗い朝方でも不安はなくなります。そうそう、出発時、暗ければヘッドライトはつけておきましょう。すぐに明るくはなりますが。ヘッドライトの消し忘れに注意してください。
■トレッキングポール
必ずしもいるとは限りませんが、バランスをとるのにあってもよいかと思います。ただし、後半は使いませんので重い荷物にもなります。積雪後はトレース脇の雪は圧縮されてないので、ポールを挿してもズボズボと入っていくことがありますので注意してください。一本だけという作戦はいいかもしれません。
■装備、服装
行者小屋までは上り坂が続きますので体が発熱し、暑いです。ですので、出発時は寒いかもしれませんが、林の中は風もありませんのでアウターは脱いでも良いかもしれません。事前に天候をしっかり読んでおきましょう。ヘルメットはここではまだ大丈夫です。バラクラバは最初からつけたほうが良いです。耳や鼻、ほっぺたが冷たくなるのを防げます。
■ペース
時間が十分にあるなら最初はゆっくり歩きましょう。汗をかかないように。なだらかな上りはどうしてもペースが上がってしまいます。そして疲れてしまったり、汗をいっぱい出してしまいがちです。
これから向かう森林限界を超えた後半の急登は今度はペースは落ちますので案外疲れません。ジョギングからジャングルジムに変わったと思えばよいでしょう。寒いので汗はあんまりかかないし、心拍も上がりません。温度計があると、客観的に判断できます。ドンドン下がる外気温に注意しましょう。
■行者小屋にて装備チェック
林を抜けると行者小屋に到着です。美濃戸からここ行者小屋まではあくまでトレッキングです。ここからが「登山」になることをしっかり認識しましょう。まずは落ち着いてトイレをすませ、再度装備のチェックをします。
このあとの出発時は直後の林の急登で暑くなるのでフル装備ではなく、少し脱ぎますが休憩中は寒いので着込みましょう。
■チェック項目
○アイゼンの装着状態
12本爪のアイゼンを用意しましょう。できればワンタッチ、セミワンタッチアイゼンが外れにくくで良いです。しっかり前後のコバに噛んでるか、紐が緩んでないか確認します。凍ってて気が付かないときがあります。
○靴紐チェック
ゲイターに包まれているので気が付きにくいですが、ほどけている場合があります。また、赤岳鉱泉出発時のバタバタで、緩めの締め方になっている場合があります。私は大抵緩んでいます。また、締め過ぎにも注意です。いつもより分厚い靴下を履いていると、ついつい締め付け過ぎになりやすいです。そうなると、血が通わなくなり、冷えます。
○レイヤリング
レイヤリングが適切か確認します。登頂まで、着ている服を無駄に脱がないよう重ね着の工夫しましょう。上下ゴアテックスが安心です。天気に左右されましょう。
○暖かい飲み物
ポットにお湯が入っているか確認します。取り出しやすい場所に入れましょう。もし忘れたら面倒ですが、ここで沸かして入れましょう。
○ゴーグル、ヘルメット
ここからゴーグル、ヘルメットを装着しても良いでしょう。ヘルメットのあごひもを確認しましょう。ニットキャップをかぶると調整が必要です。ゴーグルをヘルメットの上に乗せたままだと結露が凍ってしまいます。電熱ゴーグルは曇りません。お高いですが、おすすめです。
私はABOMのゴーグルです。電池内蔵ですが、更にヘルメットに付けたモバイルバッテリーを接続し、絶対に電池切れを起こさない工夫をしています。
○グローブ
分厚いグローブに変更します。この先から一気に気温が下がります。急登で暑くても末端部はその影響は少なく、外気温に影響されます。内部に一枚薄手の手袋をしておくと、細かい作業に便利です。ですが、分厚いグローブで全てできる方が安全です。
○ザックの整理
ここからは風も強くなるし、平らな場所もありません。ザック内部の整理をする最後の場所です。ザック下部には防水サックに入れた予備の下着やソックス。非常食と水。上部にはダウンジャケット、予備のグローブ、お湯ポット、緊急キットなどをいれます。
○相互チェック
パートナーがいる場合は、冗談抜きでお互いの装備をチェックしましょう。顎下の部分は見えなかったり、ザックの紐が緩んでる箇所は自分では気が付きにくいものです。また、バーナーやツェルトなどの共同アイテムの場所確認、お互いのアウターや予備装備の場所なども確認しておきましょう。グローブが飛ばされた場合、ザックを下ろすことなく、取り出し合うことができます。風か強く声が聞こえない場合があります。笛を持っておくといいかもしれません。
■地蔵尾根
準備ができたら出発です。案外時間がかかっていると思いますが、落ち着いタイムテーブルを確認しましょう。行者小屋に来た先程の道を少し戻り、分岐右側の尾根を登ります。行者小屋からまっすぐ行く道もあり、そちらに向かう人もいますが、そちらは文三郎尾根のルートです。自身のルートをしっかり確認しましょう。スマホのGPSアプリを積極的に使用しましょう。ただし、操作は素手にならないように、凍傷の危険があります。
地蔵尾根はジグザグの急登ですが、分岐点もなく登りやすいルートです。樹林帯に挟まれているので森林限界までは風はあまりありません。暑くなりすぎないようにペースとレイヤリングを考えましょう。15分で暑くなるようなら着すぎなので、手遅れになる前に一旦停止し、服装の再装備をしましょう。登山では、「そのうち」とか「あとで」は危険です。思ったなら「今」しましょう。
尾根を進むとハシゴに着きます。ハシゴ部分はボトルネックになるので登る人、下る人で混み合います。焦らないでおきましょう。1つ目のハシゴはまだ森林限界ではありません。まだまだ先は長いです。
■携帯電波
この辺りで携帯の電波が入ります。ピコピコとなり始めます。LINEの通知はおいといて、まずは天気などを再確認しましょう。出発前の情報と大きく変わっている事があります。ただし、素手の時間は極力短めに。タッチペンがあると厚いグローブでもスマホの操作は簡単です。
■森林限界へ
しばらく進むと森林限界を超えます。
ここまでトレッキングポール の人はピッケルに持ち替えましょう。梯子は半分雪で埋まっています。風に気をつけながら、そして金属同士の低抵抗に気をつけて、一歩づつ階段を登っていきましょう。鎖があるので掴めますが、たわみに振り回されないように慎重に登っていきましょう。下って来る人がいますので、譲り合って通過してください。登りより下の方が危険なので、下り優先です。
次第に地蔵尾根は細くなります。ですが過度に怖がらずにバランス良く歩きましょう。トレース以外は柔らかい雪の状態かもしれません。ピッケルを差して逆にバランスを崩さないよう、ピッケルにあまり体重をかけないようにしましょう。
トラバースが何箇所かあります。雪面の足場をよく考えて渡りましょう。斜め直登のトレースがある場合がありますが、下りで使った跡かもしれません。この場合、これを登ると体力を大幅に使うラッセルを強いられることになりますので、急がば回ってください。
景色も良くなり、次第に状況になれてくる頃ですが、こういう時に事故は起こります。決して気を緩めることなく登っていきましょう。
■地蔵尾根終了、稜線へ
稜線に近づくとお地蔵さんが見えます。ここが地蔵尾根の終了点です。ここから稜線沿いに右側に行くと赤岳です。尾根向こうからも風が吹いてくる場合があります。バランスを取りながら進みましょう。視界が良ければすぐそこに赤岳天望荘が見えます。まずはそこに向かいましょう。
■赤岳天望荘
赤岳天望荘(標高 2,722m)
冬季の営業期間にご注意ください。
稜線沿いの爆風のオアシス赤岳天望荘、アイゼンを履いたまま中にはいれます。右のテーブルに装備などを置いてアイゼンを外しましょう。中は暖かく、雪で濡れた手袋やバラクラバ、ニットキャップを乾かすことができます。その間に地下道を通ってトイレに行ったり、昼食をとったりしましょう。
カレーや、牛丼、おしるこなど、温かい食事が待ってます。
天気が良ければ赤岳がすぐそこに見えます。高く急に見えますが、実際はなだらかな上り坂です。
山というのはきれいな円錐ではありません。富士山もしかりです。その姿を見て左右の切れ落ちる角度が自分が進む稜線の角度だと勘違いすることがあります。でも実際はその角度よりもなだらかな場合が多いです。その逆もありますが。地図を見て山の等高線がどうなっているか確認しましょう。
■赤岳に出発
十分体力を回復させたらいよいよ赤岳に向かいましょう。
アイゼンと装備を慌てずしっかり確認しながら装着します。ゴーグルを一度きれいにしておくといいでしょう。ここからカメラを持ってる人は撮りながら歩くことになるでしょう。ですが、くれぐれも気をつけてください。一歩踏み間違えると滑落してしまいます。
出入り口を右側に回り込むと赤岳の姿がはっきり見えます。ビクトリーロードですね。天気が良ければ左に富士山が見えるでしょう。意外と大きなその姿は感動モノです。
なだらかな稜線なので、ジグザグに登る道がいくつもありますが、どこが安全で登りやすいか見極めて登りましょう。二番手の人はその様子を見て、同じ道を使うか、別の道を使うか考えましょう。決して同じ道を通らないといけないということはありません。ありませんが、その別道が安全という保証もありません。路面が凍ってますので、くれぐれも気をつけてください。そうこうしているうちにすぐに赤岳の山頂に到着します。山頂に赤岳頂上山荘がありますが、冬季は閉じています。
メンバーが全員揃うまで風よけとして使いましょう。ここから真の頂点まで細い尾根を通ります。向こうから来る人がいないか確認して進みましょう。
■赤岳登頂
赤岳山頂(標高2899m)
赤岳山頂は周囲360度のパノラマが広がっています。正面に阿弥陀岳、振り返ると横岳が見えます。
風は強い場合があります。長居はせず下山に向けて切り替えましょう。
■下山ルート
ここからの下山は二種類あります。一つは来たルートを引き返す地蔵尾根コース。もう一つは周回ルートになる文三郎尾根コース。今回は文三郎尾根コースをたどります。
■文三郎尾根へ
赤岳山頂直下を下ります。いきなりの雪壁なので、十分注意して降りましょう。複数ならばロープを出して安全を確保することも選択肢としてありです。距離は短いですが、だからといって簡単であるとは言い切れません。岩と氷と雪のミックス帯を気をつけて降りると、分岐点に出ます。右側に下降するルートが文三郎尾根コースです。そちらに向かいます。
■文三郎尾根
急で広い岩稜帯で登山道も単純ではありません。そこしか通れない道をうねうねと進んでいきます。稜線を降り、向かいに大きな阿弥陀岳があるからでしょうか、風はそう吹いてないかもしれません。ただ足元に気をつけて降りましょう。細尾根やトラバースが続きますが、焦らず進みましょう。
次第に近くなる阿弥陀岳は圧巻です。時間を確認しながら景色を楽しみましょう。もし晴れていたならラッキーです。もうそんな日に来れることはないかもしれません。振り向くを荒々しい岩稜帯が見えます。あそこを降りてきたのかと不思議な気持ちになるでしょう。
樹林帯に入ると風もなくなります。もうゴーグルを外しても大丈夫です。サングラスに換えましょう。暫く進むと懐かしの行者小屋が見えてきます。
■赤岳鉱泉にもどる
ここからは来た道を戻るので想像しやすいでしょう。峠を超えるともう下り坂しかありません。おめでとうございます。この日に帰る人と、もう一泊する人がいます。大抵はこの日に帰る人でしょう。その場合は時間を考えながらスケジュールを組みましょう。
■アイスクライミング体験
赤岳鉱泉では定期的に予約制でアイスクライミング体験会が行われています。午前中にありますので、さらに一泊して体験するのも良いでしょう。とてもいい経験になります。
■下山
晴れていれば思い切ってジャケットを脱いでもいいかもしれません。
赤岳鉱泉からの下山はチェーンスパイクで良いでしょう。豪雪の場合はまた別の選択肢となるでしょう。登りよりも軽快にルートを歩けるでしょう。あ、もうこんなところ、と楽しくなります。
標高が低くなるとたまに雪面がなくなることがあります。チェーンスパイクの脱ぎどころが難しいです。外したとたん、滑って転ぶ場合があります。つけているつもりにならないで慎重に歩きましょう。
車道が広くなり、だんだん勾配もゆるくなります。どの登山もそうですが、序盤が異常に長く感じます。我慢してあるきましょう。そうすれば、じきに美濃戸口が見えてきます。お疲れさまでした。