平日の伊吹山に出発
~伊吹山~
もう何度目だろうか。いや、失礼、、まだ数度目だ。
今回は平日単独の伊吹山登山、というのも今週は週末に出かけられないので、仕事の合間を縫って平日に来たというわけである。
例によって早朝の電車に乗る。
しかも平日である。私以外に登山者などいない。
いつものルートなのでこの辺の状況は割愛する。
詳しくは過去の記事を参照いただきたい。
私は米原駅で電車を乗り換えて、近江長岡駅に着いた。7時16分。
近江長岡駅到着
ここから7時45分発のバスに、、、
と思っていたのが間違いだった。なんとバスは8時45分であった。
土日は8時15分にバスがある、平日はない。。
唖然とした、がタクシーが一台停まっていた。
なんと!ありがたい。
すかさずタクシーに乗り込み伊吹登山口まで運んでもらう。
いやはや、危うい危うい。1時間待つか、1時間歩くか天秤にかけるしかない状況だった。
タクシーの運転手さんもよくわかってらっしゃる。4人ぐらいいればバス代とトントンということでおそらく2000円くらいなんだろう。
そしてやはり話題は「今年は雪がない」だった。
伊吹山に来たのは、先々週だっただろうか、あまり覚えてないが、去年よりも雪は少なかった。もちろん今回もないであろう。もしかしたら、少し増えてるかもしれないが、特にドカ雪も降っていないので、あまり期待はしていない。
「1960円」
なっとくの料金を払い、登山口に着いた。これで、早い時間からビールが飲める。
車が一台停まっていた。登山者がいるようだ。どうやら二人組。私と同じジャケットを着てらっしゃる。連なって歩くのは、なんとなく恥ずかしい。だが、ちょっとうれしい。
私の最近来ているアウタージャケットはfinetrack社の「エバーブレスアクロジャケット」という製品である。
GORE-TEXとほぼ同性能だが、伸縮性があり、柔らかいので、運動しやすい。
コレ↑
伊吹登山口到着
気温、今日はさほど寒くない。むしろ暖かくなりそうな感じだ。
いつもすぐに脱ぎたくなるので、今回は、もう事前に脱いでしまうことにした。
ベースレイヤーの下に着る肌着とアウターだけ着て、べースレイヤーとミドルレイヤーはザックの中に入れた。多少寒いが、今だけだろう。ゲイターをつけ、いざ出発。
登山口には案内所があり、そこに入山金のような300円を入れ出発する。
もう一組の登山者さんと、同じタイミングになってしまった。しまった。
おはようございますと、あいさつし、お互い出発する。
本日は、鹿の駆除をしているようで、地元の人により、ビラがまかれていた。
出発直後にもらう一枚の紙は、なんとも居場所に困る。
出だしは寒い。
階段を上がり、右手に曲がると、見慣れた登山道に入る。
相変わらず雪はない。このまま、山頂までないかもしれない、ということはない。伊吹山、遠くから見て、先のほうは白かった。
絶対ないのだが、出だしは、緑の初夏で、中腹に桜が咲いていて、次第に紅葉になり、最後は雪山になって山頂に着く、という奇異な山があればきっと大人気だろう。どれか二つはありそうだが。
折り返しの道を登りながら、心拍や疲れの調子を確認する。ここがマイペースで簡単に登れたら、あとは楽な気がする。実際には勾配は一番緩やかなのだが、そんな気がするのだ。
マラソン大会でも、最初の1キロ当たりが、なんとなくしんどい。もうちょっと寝たかったなとか、雨になって中止ならよかったのになとか、ネガティブなことをよく考えていた。一流アスリートの出だしの心境はどんなものなのか、インタビューしてくれる人はいないのだろうか。視聴者の共感を得るにはばっちりである。
「いやー出だしきつかったですね、台風でも来て中止になれば、家でゴロゴロできたなーと思いながら最初の1キロを走りました。そこが一番の正念場でしたね。」とか聞きたい。
さて、つづら折りの道はまだまだ続く。
どうやら調子は悪くない。というか、今回は荷物が軽い。
この杉林は、トラップが一か所ある。
少し辺りが抜けた角が見える場所があるのだが、これが1合目の手前の感じによく似ているのだ。
ああ、意外と早かったなと、ついてみると、まだまだ先でなんなら、ここつづら折りのなかで一番の直線が待っているのだ。毎回この心理戦に負けてしまう。ああ、そうだったそうだったと、打ちひしがれながら登っていくわけである。
それにしても本当に冬なのだろうか、全く雪がない。前回よりもない。
そのかわり、地面がぬかるんできた。いく人もの足首をひねってきたであろう、石とぬかるみの道をひたすら歩いていく。
微妙な感じで作られてある階段も、そこは通らずへりを歩く。そのほうが楽だし、安全な気がする。
そこを一往復すると、真の1合目手前が見えてくる、はずである。祈るばかりだ。
よかった。間違いなかった。
杉林は終わり、広い空が見えてきた。
いつの間にか日差しが差し込んで、青い空と変わっていた。
宿屋が見える。とりあえずあそこのベンチで、休憩をとることにした。
一合目到着
しかし相変わらずの無雪期登山状態だ。前回は向こうに見える草原はスキー場のように雪だったが、今回はただの牧草地だ。
一呼吸して出発する。
こういうたいして疲れていないときに座って休むと、余計に疲れる。
歩きながら休むに限る。
耕されたような道を登っていく。
ここも階段状になっているのだが、端を歩く。多少乾いているので、思ったよりも滑らない。
振り返ってみるが、まだまだ標高は低い。そりゃそうだ。
ところどころ滑った跡がある。スキーのそれではなく、足跡だ。下山時間はおそらくこの凍った地面も緩んでしまっているだろう、帰りが恐怖だ。
タクシーのおじさんの話を思い出した。
この付近にかつては大阪セメントという会社があってその労働者でにぎわったようだ。だが、それも撤退した後は、人口が減少し、街に空き家が目立ってきたということだ。
最近はこの先の奥伊吹スキー場に海外からの観光客が来るらしい。京都に行ったついでにスキーができるなんてなんと、コンパクトでバラエティに満ちた国なんでしょう。ジャパン。
ぬかるみをまたぎながら進んでいく。風はなく、穏やかだ。遠くにヘリが飛んでいる。自衛隊だろうか。そのむこうに霊仙山が見えた。
右へ左へと曲がった後は、まだ見えぬ伊吹山の方向に向かって突き進む道となる。
なんのことはなく、10分ほどで二合目に着いた。なんなんだろう、この距離感の違い。1合目目では20分かかっている。
二合目
そういえば、登山地図には「3合目までタクシーで行ける」と書いている。本当だろうか。謎の多い山、伊吹山。
一番最初にゲイターの部分が暑くなってきた。ということは、レイヤリングは間違いなかったということだ。特に暑くない。
ふくらはぎよ、辛抱せい。
うしろから熊鈴の音が聞こえる。
熊鈴の音は、遠くまで聞こえるので、次第に近づいている。そして先のほうにその熊鈴の登山者が見えた。
高速道路でもある現象だが、車はある程度群れになって進むらしい。おそらくは、そのほうがスピードの管理がしやすいからだろう。誰かについていけば、まあ、スピードの出しすぎなどは比較的気にしなくていいという心情だろう。
それと同じなのだろうか、登山でも、やや群れ人る傾向があるように思える。安心感というのがあるだろうか。ある程度距離をとってついていくことがあるが、先を曲がると、その人が、いなくなってると、やや不安になるのは私だけだろうか。
熊鈴のおじさまを追い越させていただき、先に進んだ。
気が付けば誰もが、おお、琵琶湖だ!とまず思う場所まで来ていた。霊仙山の見え方で、現在の標高を感じる。
そこからはまた石がゴロゴロした道になる。
やや影になっているおかげか、ここから雪が残り始めた。
地面から突き出ている、おそらくは階段のストッパーの杭に気を付けて進む。
このへんから一面すすきの草原である。
小高い丘があり、その向こう側がいつもお世話になっております。伊吹山があるはずである。
山というのは、どこからがその固有名詞の山なのだろうかと、ぶつぶつ思いながら進む。
例えば富士山はすそ野、いや海岸から富士山なのだろうか?
峠をまたいだら、あっちの山、こっちの山、というのはなんとなくわかる。
槍ヶ岳の一合目はどこなのだろうか?そもそもは一合目なんて存在するのか。
もしかしたら、頂上のみ山の名前がついているのか?
人生と同じだ。今何をしているのか、頂に立たないとわからない。その頂の先にもっと高い山があったり、振り向いたら、スタート地点のほうが高かったりする。天保山のように。
うだうだと、つづく。