山と僕とカメラ

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登山初心者のバタバタ日記

立山縦走 その9 「一日目の夜、二日目の朝」編

目が覚めた。何時間寝ただろうか。横になってても、頭が痛くてしばらく眠れなく動けなかった。いつのまにかお薬が効いて、眠っていたのか。今は状態は良く、頭痛も治まっていた。あの痛みは、なんだったんだろう。

とにかく良くなったし、じゅうぶん横になったので、元気いっぱいだ。 

 

前回

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感覚がはっきりしてきた。外は暗い。もうすっかり夜のようだ。今宵は星が出ていることを願おう。

テントのファスナーを開け外を見る。

よし、星がいっぱいある。よしよし。

ヘッドライトの光を頼りにカメラと三脚の用意をする。三脚は直前にヨドバシカメラで買ったミニ三脚だ。忘れてきたから急遽手配した。これでこの三脚は3つめとなる。まあ、いろんなことに使えるのでいくつあっても、問題ない。

カメラはソニーのa7iii という小型のミラーレスカメラだ。小型の割にはフルサイズで撮れるという素晴らしい機材である。ミラーレスに関しては、ニコンcanonの追従が最近噂になっているが、とりあえずsonyも良いカメラだ。

雪の上で三脚を構える。外は全く寒くない。暖かい。生温い風が南のほうから吹いてくる。雪なのに、夜なのに不思議だった。

正面の剱岳が、真っ黒な姿を見せている。月は出ていないが、瞬く星の影響で、山のシルエットはわかる。

天の川も、見えている。

天の川というのは、我が銀河系の星々を地球からみた姿の一部である。全く宇宙は広い。

その天の川を写真でおさめる。

今回は自転を追従する機械は持ってきていないので、高感度にして、なるべく早いシャッターで撮る。絞りが明るいのと、高感度耐性があるカメラシステムが有利だ。今回はレンズはF4なので、全く有利ではない。F1.8くらいが望ましかった。秒数は15秒くらいが良いだろう。それ以上だと星が流れてしまう。地球は、自転により秒数が長いほど、写す星の点は、線になってしまう。それが何時間かかけると、同心円のよく星空写真にあるような写真になる。今回はそれは撮らずに、ちゃっちゃと天の川を撮る。

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と、そうこうしているうちに時間が経っていく。実際は少し冷えているのだろうか、肌寒くなってきた。

なんとなく撮れたので、撮影はこれくらいにして、引き上げる。明日は3時起きでテントをたたんで出発だ。

カメラを片付けて、再度寝に入る。やはりテントの中は暖かい。夏用のシュラフだったが、それでも暑いので、何も纏わずに寝ることにした。

あと、3時間くらいは寝れる。いや3時間しか寝れない。いや、どっちでもいい。とにかく寝よう。その前にカメラで撮った写真をスマホに転送し確認していると、いつの間にか時間が過ぎていく。いかんいかん。寝なきゃ。

3時過ぎに目覚ましが鳴る。隣近所にご迷惑半端ないであろう。すみませんでした。

もぞもぞと起きる。

なるべく無言で、お片づけをする。何張りかのテントも、中で光が動いている。

登山、トレッキングは太陽の出ている明るい時間、特に天気の安定している午前中をフル活用して行動することが基本である。そのため、日の出前の時間から起きて、出発する事も当たり前だ。そんな当たり前の事を、最近やっとわかった気がする。

テントを片付けいると次第に目が慣れたのか、明るくなってきたのか、幾分視界が良くなってきた。

Kさんたちもテントも畳んでいる。流石にその畳む姿は、山に慣れた人達の手さばき足さばきだ。無駄がない。そんな気がする。

私たちは、一応どうにか暗闇でテントを畳み終え、とにかく忘れ物だけはないように気をつけながら作業を終えた。

荷物をまとめて、出発する。昨日きた道は途中まで同じだ。途中で東に折れ、別山を目指すルートだ。

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雪の中をヘッドライトを点灯しながら歩く。きがつけばもう、明るい。ヘッドライトをつけているとその明るさに慣れてしまって、周りの微妙な暗さというか明るさには当然順応できない。というわけで、もう十分明るいのでライトを切った。

静かな薄い青色に包まれていた。

振り返れば剱岳の山肌がわかるようにもなっていた。

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朝のこういった時間は経過がものすごく早い。2分3分でどんどん明るくなる。

 

分岐点についた。後方を見るとKさんたちも来ている。

たしか彼らは、私達とはルートが違う。まっすぐ雷鳥沢に向かうはずだ。

もちろん彼らを待つ。それにしてもペースが早い。もうついた。

「ありがとうねー!今回も前回も。」

とか

「また、連絡しますねー!写真送りますー。」

とか、なんて言葉を交わしたか、はっきり一言一句は、覚えてはいないが感謝と感動を伝え、握手をし、別れた。

遠くなる彼らの方から手を振っているのが見える。こちらも手を振る。彼は延々と手を振っている。

いつまでも手を振り続けるのはそのKさんの滲み出る可愛らしい性格のせいだ。

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ありがとう。

きっとまたどこかで会えると直感しているので、別れは寂しくない。とりあえず山でなくとも、大阪マラソンの応援で会えるはずだ。

 

この別山までの斜面はズルズルザレザレだとKさんに教えてもらっていた。

たしかにザレザレだ。となりの雪渓を歩いた方がいいかもとも言われたが、なかなかな急角度だ。このまま行くことにした。

しんどい、胸が痛い。

斜面自体は急なだけにそんなに長くは続かなく、稜線が見えてきた。

計画ではあの稜線の先にある別山の山頂で朝ごはんを食べる。「別山」とは、れっきとした名前で「べっさん」と読むらしい。

きのうまで「べつやま」と覚えていた。山の名前は難しい。最近出会った名前でも、光岳、大天井岳。てかりだけ、おてんしょうだけ、と中々の難読だ。

最後の斜面を登り切る。向こう側に室堂平が見える。雪と岩場がまだら模様を作っていて、美しい。そしてきた道を振り返る。

さっきまでいたテント場がとても小さくみえる。その向こうには今までで一番スタイルの良い剱岳があった。

カールに包まれた優しい雪渓の向こうに、ズドンと構える荒々しくも頼もしい姿の剱岳。今度はスケジュールをたっぷり取ってあの岩山に登ろう。

頂上にはちいさな祠がある。まずは、今日の安全登山のお祈りをする。

ベンチに腰掛け、朝食の準備をする。

東側から、眩しい光が顔に当たった。

日の出である。

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剱岳は東の山が影になり、まだ日は当たっていない。

今日もいい天気になりそうだ。

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朝食は、パンとコーヒーだ。ウインナーを茹でて、パンに挟む。美味い。

コーヒーを飲んでいると、太陽が次第に剣岳の麓を照らし始めた。

尾根沿いに茂った草木の緑、谷あいの白い雪渓、ゴツゴツした岩肌、がはっきりと見える。先ほどまでの青一色の山とはまるで違う。

今日初めて見る、「彩色」である。この言い方が合っているのかわからない。

まだ、光が当たっていない場所もある、そこはまだ夜だ。だが、日が当たっているところはもう、昼のように明るい。

 

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 夢中でカメラのシャッターを切った。この山にも美しい朝が運ばれようとしている。

 

 と、ふと相方の方を見た。

泣いていた。

 

この景色を見て感動しない人はいない、と思って

「きれいだよねーー、ホントに」

と声を掛ける。

「そ、そうなんだけど、ブヒ、この、バターバトラーのフィナンシェが、美味しすぎて、この味で泣いてしもうた、ブヒブヒ。」

まじっすか。

これでもかというくらい、どこまでも、花より団子の人であった。

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立山縦走 その8 「山よりだんご」編

 何は無くとも、ビールである。がしがし、持ってきたビールは冷えてないので、隣の雪渓でまず、冷やす。

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テントも張り慣れて来た。とはいえ、テント泊を始めてまだ半年も経っていない私たちが「慣れた」と言ってもまだまだ不慣れだということはわかっている。まず、出入り口をどっちに向けると良いのだろう、と悩んだりする。景色が良い方がいいのか、通路側がいいのか、風の通り口がいいのか悪いのか、と毎回悩んだあげく、隣近所に習うのが通例となる。今回は地面が硬い。皆さん大きめの石に紐をくくっている。それ用に細引きを追加している人もいたので、次回まねしたい。

 

前回↓

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目の前の剱岳は雲を抱えたり、時折り風で雲が晴れ、その姿を見せたりとを繰り返している。それにしてもなんという勇姿であろうか。今いる場所よりもずっと下の方から尾根と谷が始まり、その荒々しい山肌は雪で覆われた谷の部分により、さらにコントラストを増し、大岩壁をまとっているのがはっきりわかる。そして山頂は、周りのどの山よりも高く天に突き刺さしている。尖った槍ヶ岳の「槍」とは対照に、図太い太古の剣のようだ。ここからでも、山容はとても大きく見えるのだが、あの剣先に行くには、ここからまだ3時間歩くのだ、距離はかなり離れているはずだ。それでこの大きさなのだから、ここから先、近づくにつれてその迫力はさらに増していくのであろう。

とか、思いながら、テントを張り終えた。シュラフを広げて一休み。この時、ようやっと靴が脱げる。

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「ダッハーーー!ひー!あっかーん!」

「はぅー、もー、もーええ、もーええわー」

実際はさらに日本語になっていない会話で成立していたはずだが、これでも表現としてわかりやすく書き直している。

 

しばし記憶がない。

日本を代表する山の麓、山を眺める、そんな事より睡眠欲が勝る。人間とはそんなもんだ。しばらく、スコスコと寝入った。

 

記憶が戻った。

 

お水を汲みに行く。

水場は少し離れた管理棟付近にある。

そこまでテクテク。蛇口からは湧水がダブダブと流れている。雪解け水なので死ぬほど冷たい。

手足を、冷やす。

気持ち良い。サイコーだ。

水を汲み終え、剱岳の方を見ると、もう少し下った所に、小屋が見えた。剱沢小屋だ。あちらのほうが景色が良さそうだ。

「手ぬぐいと、バッジ、売ってるかな」

「売ってるよね」

「行こか」

「行こう」

というわけで、下の小屋までさら降りた。近くに見えたが、意外と遠かった。

10分くらい雪の上をズブズブと歩き、着いた。

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そこから見る剱岳は先程より大きく見えた。

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「すごーい」

「でかいねー」

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小屋の周りは剱岳山頂から帰ってきた人で溢れている。皆、満足げだ。中には定番のルートではないであろう、明らかに装備がマックスの人たちもいる。どこから攻め入ったのであろうか、聞きたい。。。

剱岳に続く雪渓には登山者が小さく見える。

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カジュアルトラベラーの私たちに必要なのは、手ぬぐいとバッジだ。

カッコいい手ぬぐいゲット、カッコいいバッジは売り切れていたので、可愛いバッジをゲットした。

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しばし、外で記念写真を撮る。

イマイチまだ、山をバックにしてのポーズがわかりかねる。修行もしくはセンスが足りない。

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とふとみると、剱岳デイダラボッチかもしくは巨神兵が覆いかぶさっていた。

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来た道を戻る。微妙に坂になってるので、しんどい。剱岳を登った人には申し訳ないが、しんどい。

水場に戻り、テントに戻った。

 

腹が減った。

というわけで、クッキングタイム。

もう今日の剱岳はじゅうぶん見たのでクッキングタイム。

日本を代表する山の麓で、その山を眺める、そんな事より食欲が勝る。人間とはそんなもんだ。

今回は超簡単なカレーと牛丼。

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米はアルファ米で、カレーも牛丼のタネもフリーズドライ。お湯を沸かして注ぐだけ、たしかウインナーも一緒に茹でる。

だんだん調理が素早くなってきた。胃袋さん、も少しだよ。

と、そういえばと、冷やしていたビールのことを思い出した。

相方が取りに行った。

持って帰る時、ガシャンと落とした。

その衝撃で、缶に穴が空き、対処として指で塞いでいるようだ。でもその圧力に負け、ビールが飛び散っている。相方は、それを避けるように謎のステップでダンスをしている。

周りの皆も笑って応援している。

とりあえず撮った。

 

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ありがたくそのビールをいただく。

「カンパーイ」

「イェーイ」

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できたてのカレーと牛丼を食べる。牛丼、見た目は悪いが、味は良い。混ぜたカレーというのがあるだろう、あれの牛丼バージョンだと思っていただきたい。

「うめーー」

「おいすぃーーい」

昼ごはんからそんなに時間が経っていないが、明日も早いので、とっとと食べて、とっとと寝る計画だ。

それにしても美味しい。何故だろうか。ヤマメシは本当に美味い。

 

食べ終えると、なんだか頭が痛くなってきた。

どんどん痛くなる。

まさかの高山病か、もしくは、風邪か。

というわけで、本日の私はここで終わった。。。

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 続く

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立山縦走 その7 「偶然と必然の境目」編

「おおおー!?!おお??、、、!どどどど、どしてーー?!、なんでーー??!」

「いやー!!ジャンイチさんーーー!!」

「ひゃーーー!!」

「びっくりーー!!!わらけるーー!」

こんな事があるだろうか。あのゴールデンウィーク、涸沢で出会い、愉快な登山にしてくれた担々麺コンビが、また、目の前に現れた。こんな事なあるだろうか。

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前回

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なにも示し合わしてない、連絡も取り合ってない2組が、数ある山の中で、この立山の剱御前小舎という小さな広場にこの時間、いることが重なったのだ。

「いやー、久しぶりっすねー!」

「二度と会えないと思ってましたよ、正直」

確かにそうだ。約束してないと人はなかなか会えない。

お互い固い握手で、再会を祝った。

「しょっちゅうアルプス来てるんですね?」

と聞くと

「いやいや、僕らはゴールデンウィーク以来ですよ」と答えた。

そうなのだ、私たちはこれまた偶然にもあの日以来、こちらにやって来るタイミングも一緒だった。どちらかが多めに来ていたら、こういった可能性はぐんと上がるのだが。

「いやー、Kさん少し痩せましたね?」

「いや!ほんま?まじで?、やっぱり?実はマラソンしてて、今度何故か大阪マラソンに出るんですわ」

と、彼はニコニコ。東京なのに、大阪マラソンどこまでタフなんだ。

「わー、うらやます!私は落ちたよ!とりあえず応援に行きますわ」

「いやー、それにしても嬉しいなー」

ほんとに嬉しい、連絡を取り合っていたら、逆にこんなにスムーズに会えなかったかもしれない。「今度の日曜日、12時ちょうどに立山の山の上で集合しましょう」、いや無理だし。

「で、今回はどういった登山ですか?僕らは、さっき室堂から雷鳥坂でここまで来て、今から剱沢に降りて、テントで一泊して、剱岳には登らず、明日、立山縦走して帰るんですが」

と、聞いた。

Kさんは

「まじっすか?!僕らも剱沢にテントを張ってますよ!!!、今お散歩がてらにここまで上がってきたんです。そしたら、ジャンイチさん達がいて、びっくりしたんですわ。僕らは明日、ここを越えて、雷鳥沢に下りて帰ります。」

「えー!ほんまっすか!!テント場同じなんすね!どこまでもストーカーですね(笑)いやー、嬉しいわー。今宵も同じですねー。」

「テント場でだったら、もしかしたら発見できなかったかもしれないっすね」

たしかにそうだ、テント場ではお互いが見つけられず、すれ違ったかもしれない。ルートも今回は逆走で、ここだけで交差している。

「じゃあまた後で!ラーメンのびちゃいましたね」

「良いんですいいんです、うん、じゃあまた後で!!!」

とりあえず、テント場での再会を約束した。

なんと、清々しい人たちだろう。前回もそうだが、常にニコニコ笑顔で接してくれる。

 

「いやー、すごかったね、、、、びっくり」

「ほんとー、あるー?あるー?こんな事」

「ナイナイ、ないやろー、会えても来年のGWの涸沢だと思ってた」

「だよねー、嬉しーわわわわー」

と、2人で程よく伸びたラーメンをすすりながら感想をのべあった。

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今周りは多くの人がいる。そういう意味では、この人達全員と出会っているが、会話もしてないので、再会してもわからない。もし会話していても、忘れているかもしれない。

そもそも、普段の知人と、ここで偶然出会う確率の方が高いかもしれない。

人はもしかしたら、普段から何度もすれ違って会っているのかましれない。はじめましてと、挨拶している人に、すでに毎日電車であっているのかもしれないと、君の名は何という的な映画のテーマのような事を思い起こさせられた。

目の前に鎮座している剱岳、花より団子、山よりKさんである。

そして、なにより、安心感を得た。やはり聞ける人が近くにいるのは心強い。早速下のテント場の情報も得た。ほんとに下るだけで着くし、そんなに寒くないとの事。

心と時間に余裕が出て来たので、左にポコって立っている丘をのぼってみたりしてみた。ガスが入り、眺望は微妙だったが、そういえば今回初めてのピークであった。

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小屋前に戻り、剱岳の方に向かう。

ここからは下の道だ。今回はもう、しんどい登りはもうない。まあ、このくだりをある登るのだが、先程ほどではないし、夜明け前なので暑いこともないだろう。快適登山の始まりである。

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目的地のテント場も、もう見えている。そんなに遠くなさそうだ。その向こうに剱岳だ。次回は必ず登ろう。

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意気揚々と下る。気をつけないと、この辺でグキッと足首をひねるのが常だ。

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30分ぐらいだろうか、雪道と岩場を繰り返し、テント場に着いた。

先程より剱岳が大きくみえる。すごい。絶景だ。これは、登りたくなる山だ。

数多くのテントがあり、ほとんどの人が剱岳から帰って来た人たちのようだ。ここから剱岳に登らずに引き返すオシャレなプランを立てているのは、僕たち二人と、KさんそしてパートナーのMさんぐらいであろう。

迷うことなく、彼らを見つけることができた。

僕たちより早く、帰り着いていたのだ。流石素早い。

「いやー、、久しぶりっすねー」

「ほんまほんま」

「じゃあ程よい距離感のあの辺にテント張りますので(笑)」

「ごゆっくりとー」

 

同グループでの登山ではない場合、べったりとなりにいるのも何か気がひける。各自目的地以外に目的があり、それはのんびりするだとか、何か作って食べるとか、だったりする。その限られた時間を過ごすのにはやはり、気を遣った方がいい気がする。オトナな距離感だ。まあ、みている限り、Kさんはテント前で寝てばっかりだが。

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さてさて、私たちもテントを張り、一休みだ。

 

続く

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立山縦走 その6 再会編

彼らと初めて出会ったのは、今年のゴールデンウィーク穂高だった。

その時、私達は上高地から涸沢へ行き、一泊し、次の日の早朝、雪山を登って穂高岳山荘に着いた。まだ午前中であるが急登を登り終え、お腹がペコリンコであった。

アイゼンを外し、山荘に入る。暖かい。外とは全然違う居心地に心休まった。次は胃袋を落ち着かせる番だ。

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もちろんカレーライスを食べたい。山といえばカレーライスというのは地球のみならず、宇宙のあらゆる惑星でもきっとそうだろう。これほどマッチする食べ物はない。

と、メニューが書いてある壁を見るとカレーの他に「GW限定、担々麺」と書いてある。

「限定だって!!ここに来るのも滅多にない事だし、さらに期間限定とならば、この機会を逃すと、もう二度と食べれないね」

「確かに!どっちする?担々麺?カレー?」

「そりゃ、両方でしょー!」

「おーー!素晴らしい」

どっちがどっちを言った方が細かいことはさておき、私達は両方注文する事となった。

テーブルは大テーブルで向かいに1組の男女が座っていた。どうやら私達のアホなやり取りを聞いていたらしく

「よし、限定担々麺、見てから決めよう」

「(笑)」

なんと、私達の出される担々麺を見てから注文するという荒技を提案していたのだ。すごい。

「きっと美味しいですよー」

と、私は聞こえてましたよ感を絶妙な間合いで出し、彼らと会話を始めた。彼らもさっき涸沢からここまで来たようだ。

しばらくすると、例の担々麺がやって来た。

文句なしで美味しそうである。

これが3000メートルのキッチンのやる技なのかというほどである。

と向かいの彼が

「決めた、食べよう」

と、そのビジュアルですでに彼らの担々麺の注文は決まった。食は見た目も大切だなと思いました。

担々麺は本当に美味かった。カレーももちろん美味かった。

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食事を楽しんだ後、そのままチェックインをした。部屋は2組が相部屋というシステムである。まあ、疲れて寝てしまうから誰が来ても構わないし、そう思われたい。

また出発の準備にとりかかる。そう、今回は奥穂高に登る。周りの人達に色々アンケートした結果、今年の今日は状況も良く、皆無事に登頂できるだろうとのこと。ワクワクが止まらないが、ドキドキも止まらない。

詳しくは別途日記にて記しているので参考にしてもらいたい。

 GWの涸沢、穂高 その6 奥穂高 - 山と僕とカメラ

 

で、その奥穂高岳山頂にて、またまた先ほどの担々麺コンビに出くわした。そうか、目的地を聞いていなかった。というか殆どの人はここに登るだろう。パートナーは涸沢岳に登ったが。

久しぶりではない再開に喜びを感じる。孤高の場所というのは、1時間前に出会ったばかりの人でさえ恋しい。彼らは2人で登っていた。パートナーの女性もタフである。

山頂で写真を撮り合う。そう、あの有名な「ジャンダルムに行ってきた風の私」の写真は、担々麺の彼が撮ってくれたのだ。もう感謝しかない。

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天候の影響も考え、先に降りる。降りるときに、わたしは山荘に泊まりますと伝えると

「そうですよね?僕らと同じ部屋ですよ、笑笑」

と担々麺の彼は言った。マジすか。どこまでも出会いますね。と次の再会を約束して、先に降りた。

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その後は仲良く山荘で団欒し、半生を語り合い、半生を笑いあった。晩御飯もいっしょに食べ、いびきもかきあい、朝を迎えた。

日の出を拝み、朝食をすませると、では、また後で、とお互い挨拶する。

また後で、そう、下の涸沢でテントを張っているのも同じなのだ、そして、次の日、さらに下の徳沢に一泊するスケジュールまでも同じなのだった。というか、スケジュールがほぼ彼らと僕らは同じで、こうなる運命だったのだ。

足の速い彼らは、涸沢のテント場にて降りてくる私たちを待っていてくれた。どこまで愉快で人情味のある人達だろう。惚れてしまうやろ。

テントをたたみ、徳沢に下山する。

もちろんそこには一足先に着いた担々麺の彼らがいた。テントというプライベートの距離感をほどよく保ちつつ、かつ、いい感じにコミュニケーションを取れる間合いでテントを張る。

流石に次の日のスケジュールは違っていたが、お互いSNSを交換し、また来年も涸沢で会えるかなとお互い言いつつ、サヨナラを言った。

SNSはその後あまりやり取りはしていないが、きっとガツガツ登っているに違いない。

いい人達だったね、と、私達は上高地から大阪に帰った。

そんなとても良い思い出をいただいたあの担々麺の2人が、今、まさに、今、剱岳を背に、立山の山頂で、群衆をかき分け、私達に手を振り、まるで、私のカップラーメンを奪いにくる勢いで、大声で名前を呼び、こちらに突進してきている。なんたる運命。

 

続く

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立山縦走その5 とうとう出発編

見渡す限り、右を見ても左を見ても後ろを見ても山、山、山。これこそが立山連峰だ。

こんな絶景がみえる場所まで汗ひとつかかずに来れるすこしずっこいのも含めて、立山のいいところだと思う。富士山だって5合目からだ。駿河湾田子ノ浦から富士山に登るツワモノもいるらしい。ここも称名滝の下から這い上がって来た人もきっといるはずだ。すごすぎる。

 

前回↓

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外に出ると、水が湧いている場所がある。そこで皆、1日分の水を確保している。

「ヒャッホー冷たいーー」

そうなのだ、立山からの雪解け水なのか、とても冷たくて気持ちいい。ミネラルもたっぷり含んでいるだろう。これを命の水と言わないで何と言おう。

水は袋状の入れ物に入れ、ザックに入れてチューブで飲めるタイプを使っている。いわゆるハイドレーションだ。さらにペットボトルをショルダーハーネスに付けている。これだけで2.5キロは重くなってしまうが、これが無いと死んでしまうので、致し方ない。

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ザック選びは難しい。アウトドア用品店で、ザックを買う時、いいシルエットで背負い心地も良い感じで、それを購入するとしよう。それを実際に、出発前に実際の荷物をパッキングし、背負ってみる。購入時のあのトキメキとは裏腹に、何とも、憎たらしい重さを感じるのだ。シルエットに可愛げは全くない。ちょうどいい膨らみなんて、いらない。なるべく凹んで軽くなってほしい。

「おー、これにまだ水が入るんか」

と、出発前から凹んでしまわぬように、日頃から、生活はザックして、機材を詰め込んで仕事している。日頃の方がもちろん重い。でも、あまり効果はないような気がする。

今回のザックは、オサンティメーカーなのか、ガチなのかわからないメーカー「ハイパーライトマウンテンギア」だ。

強烈に軽い。何も入れずに背負ってたら、忘れてそのまま風呂に入りそうなぐらい軽い。というのも、生地はもちろん紙みたいな素材で、まあでも強い性質なはずであるが、それにファスナーや、ごついポケットなど、便利な機能のパーツは一切ない。あるのは大きな口の袋と、周りを網でかこったポケットである。いわゆるウルトラライト系のザックである。雪山以外のトレッキングはこれで十分だ。容量も大きくないので、自然と荷物も減る工夫をすることになる。荷物というものは、重くなればどんどん大きく重くなるし、軽くすればどんどん小さく軽くなる。不思議だ。

食事は全部「沸かすだけ」でできるものばかりだ。炒めたり、煮たりはしない。これが一番軽量化に貢献しているのかもしれない。フリーズドライアルファ米カップ麺などは基本的に「乾燥」している。ということは水分を含んでいないのだ。すなわち軽い、という事である。何日も続けてこれは精神的にしんどいが、一泊ならば何の問題もない。

さあ、やっとこさ、出発である。正面に雄山が見える。という事は私たちの行く先は7時の方向の雷鳥沢だ。

しばらくは呑気な遊歩道が続く。日傘をさしている優雅なお客さんも多い。ヘロヘロに疲れ切った人もいる。面白い光景だ。河童橋付近の上高地に似ている。ニコニコお土産を持って歩いている人の横で、ゴルゴ並みのマジ顔で一歩一歩、歩いている人もいる。この立山の遊歩道は、なぜが歩きにくい。石畳の隙間が広く、少し間違えば、グギッと足首をやってしまいかねない。慎重に足元を見ながら進む。

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先程から右手には大きな青い池が見えている。みくりが池だ。透明度の高い雪解け水でできた池は、青空を反射し、より青みを増している。目玉のように周りは雪で囲まれている。綺麗な丸が、描かれている。

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皆ここで写真を撮る。私も撮る。

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とはいえ、あんまりキョロキョロしてられない。ここで捻挫は勘弁だ。

「全然山見て歩けないね」

「足、痛めたら元も子もないからね、しばし辛抱」

憎っくき遊歩道はそのまま次第に下りの階段となる。

下には小さくテントが張られている広場がある。まずあそこのテント場まで、100メートルほど、階段で降りて、その先の目線よりはるかに高い山を登り返すわけだ。100メートルというのは距離ではなく、高低差だ。山に登り慣れてない以前の時期の私だったら、ありえないルートで即却下だ。だが今、私は精神的には慣れてきたのだ、何度も、降りて登るを繰り返す尾根に絶望感を抱いただろう。そうだ、私は強くなった。はずだった。

逆方向、テント場方面から登ってくる登山者はみな、息絶え絶えだ。瀕死だ。私も、逆ルートなら同じ顔をしていただろう。最後の最後に地獄の登り、大阪マラソンを走ったことがある人なら、あの35キロ地点の大きな登りの橋を想像してほしい、あれの10倍はある坂だ。なーむー。

数時間後には、向かいの山の稜線で同じように辛い顔をしているだろう事を想像しないようにしながらテント場を抜ける。ここは本当にいいテント場だろう。隣に温泉があり、周りは山々に囲まれている。私たちも、スケジュールに余裕があれば、ここにもよる予定だった。がしかし、日程が短いのでここにはテントは貼らずにすぐに帰る予定にした。

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テント場を抜けると橋がある。これがまた可愛い橋だ。いかにもアルプス!っていう感じでワクワク感がある。ほとんどの人は逆回りだろうから、「やっと、やっと帰ってきた、、、ただいま、、、」というお迎えの橋でもある。浄土橋というらしい。

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その橋を越えると、川沿い対岸に大きな雪の壁が見えた。そう3メートルはあるだろうか、まだこんなに積もっているとは、日本の7月とは思えない。

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登山道に入る。斜面だ。いきなり雪道歩きだ。いやっほう。と思ったらけっこうなズルズルの道で歩きにくい、とはいえアイゼンを装着する距離でも深さでもない。300メートルほど進むと、尾根に上がってしまい、雪道ではなくなるのだ。

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ここは我慢と黙々と歩く。上から駆け足で降りて来るトレイルランナー達がいた。真っ黒に日焼けしたいかにもな雰囲気だ。彼らの一人が膝やふくらはぎに雪を押し付けている。なるほどアイシングか。素晴らしい。

その人達とすれ違う、お疲れ様でした。雪の坂道はまだまだ続く。

と思ったらあろうかとか、さっきの屈曲なトレイルランナーズが追い越して登ってきた。

「え?!また登るんですか?」

と思わず聞いてしまった。

「はい!まだ上にメンバーがいるのでそれまでここで!」

ここで何をしようというのか、彼らは駆け上がり、消えていった。どんな心臓してるんだろう。

ようやく雪渓をぬけ、尾根に上がる。急にむわっと暑くなる。さっきまでは雪のおかげで涼しかったのだ。それが無くなり、ただの蒸し暑い夏となった。とはいえ18度くらいだからじゅうぶん涼しいはずなのだが、人間とはすぐに環境に慣れるダメな生き物だ。

降りて来る人が多い。登る人より多い。

ということは時刻的に遅めなのだ。山を越えさらに行った先の目的地、剱岳から降りてきた人たちだ。皆満足げなお顔をしている。その人達と入れ違いながら山を上がる。この山は特に名前はないんだろう。頂上というか、コルの状態の稜線が一旦の目的地である。そこに小屋があり、そこで昼飯を取る予定だ。

お花が咲いている。苦しいときの高山植物は本当に心が安らぐ。なんとなくお花の写真とかの気分もわかるようになってきた、わたくし。

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時間は充分にある。ゆっくりゆっくり上がる。

あとでいつも思うが、この登って行くときの思い出が、あまりない。ただ、ただ上がっているのだろう。右に時には左に曲がりながら登る。たまに下を見る。テント場が小さく見える。傾斜角は45度なんてあるわけではないので、テント場が小さく見えるのは、登ったからというよりも、遠くに離れたから、というのが正しい。

すこしは涼しくなってきた。お昼ご飯まであと少し。がんばろう。あとどれくらいだろう。パートナーは、ヒーヒー言っているが、「あと少しだよと」嘘をつき、励ます。

という事を何度か繰り返していると、雷鳥を見ないまま、頂上の建物が見えてきた。剱御前小舎だ。

今回のこの登りは本当にキツかった。何故だかわからないが、荷物も軽くしてるのだが、やたらとキツかった。

すと、振り返ると周りの景色もさらに雄大になっていた。

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「やったーー!地獄が終わったー!」

「わーいわーい」

そう、このルートで周回するというのは、登りはもうこれで終わりなのだ、あとは軽いアップダウンがあるだけだ。幸せの時間の始まりである。

頂上稜線に出ると人がいっぱいいた。皆思い思いの場所でご飯を食べている。

と、その向こうに剱岳がそびえ立っていた。

「すげー、すげーよー」

「すごいねー、大きいねー」

「写真、写真」

とそそくさと名峰の写真を撮る。

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「さあ、ご飯ご飯、どこで食べようか?」

「あの建物の木陰なんかどうでしょう?

「はい!そこで」

昼ごはんはカップラーメンとアルファ米の炊き込みご飯だ。

チャッチャッと、ザックから食材と器具を出す。ハイドレーションから水を入れるタイミングはパートナーはいつも素早い。この時だけは本当に素早い。理由は読めているがあえて言わない。

テーブルを出し、ジェットボイルで湯を沸かす。すぐに沸く。このジェットボイルは前回の穂高でも大活躍したので今回も抜擢された。多少重くなるシステムだが、短時間で湯がわくというのはなによりもありがたい。ガスも少量で賄える。

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沸き立ったお湯をカップラーメンに注ぐ。すぐにでも食べたいが3分待つ。すでにいい匂いがするのに待つ3分は長い。がしかし3分待つ。

1分

2分

よし、できた!!

と、まさに食べようとしたその時だ。

群衆の向こうから、黒い大柄の男がこっちに何かって手を振りながら奇声をあげて走ってくる。

こ、こわい、、そんなにもお腹が空いているならあげてもいい。なんだなんだ??

パートナーはこれまた奇声あげている。

はたと気がついた。なんと、あの人達だった。

 

続く

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立山縦走その4 出発直前編

何駅か停まるたびに、登山の姿ではない人達が降りる。そりゃそうだ。電車の終点の立山駅までにも、うちの田舎より立派な街が沢山ある。

そこまで通勤通学で通ってる人達がいててもおかしくない。遠くから夜行バスに乗ってわざわざ山に登りに行く私達をきっとモノ好きだなあと思っているに違いない。しかし、まだ登山の風貌以外の人もいる。この人達はまた別の目的があるのだ。

 

前回↓

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渓谷を通って次第に立派な山の中に入って行く。あと一駅という状況。「思えば遠くに来たものだ」と思ってしまう瞬間である。いかにも登山鉄道、という感じの橋を越える。電車の終点は、「立山駅」という名前だがまだまだ全然あの立山ではない立山市というだけだ。麓も麓だ。

そこからさらにケーブルカー、そしてバスに乗らなければならない。富山駅からここまで40分くらい電車に乗ったが、あと1時間はこれらに乗らないと着かない。私達が目指す「室堂」は富山と長野を結ぶ立山黒部アルペンルートの中間に位置し、その先は立山の山の中をトンネルをくぐって、反対側に出る。圧巻のトンネル工事である。そこをトロリーバスで抜ける。 そこからさらにロープウェイで山を下り、ケーブルカーに乗り換えると、そこにあの黒部ダムが鎮座している。

そこから黒部ダムを抜けてトロリーバスで赤沢岳の中を突っ切ると、長野県の扇沢に着く。そしてバスで長野駅に出れるのだ。なんとも山岳交通満載のアグレッシブなルートである。たまらん人も多いだろう。タモさんは間違いなく好きだろう。登山客ではない格好の人達はこのルートで、室堂を散策して、黒部ダムに行くのだ。

そうゆう事ができるカジュアルテイストを含んだ秘境なのである。その目的でこの交通網はひかれたのではない。そうあの黒部ダムを作るために山をぶち抜いたのである。大した国である。

立山黒部アルペンルートとは|立山黒部アルペンルート

と、いうわけで、ひとまず立山駅に着いた。しっかりと車内で朝ごはんを終えれた私達は意気揚々と乗り換えた。それも悠然と。周りのアナウンスでは、「ケーブルカーは2時間待ちです」と聞こえるのだが、私達には関係ない。そう、出発時に予約済みのケーブルカーに待たずに乗れるのである。素晴らしい。待たずに乗れるのは、宮島フェリーだけだと思っていた。

2時間待ちの大行列とは別の列に並ぶ。そこかしこのベンチでは、もう並んでさえいない諦めの人達も多い。黒部アルペングループの交通機関を使うと、こんなに融通がきくのか。マイカー派にはここが難点である。そう、ここまではマイカーが入れる。その先は、一般車は入れないのだ。

 

ほとんど待っている時間もなく、すんなりとケーブルカーに乗り換える。ものすごい手さばきでチケットのバーコードを読み取る駅員、この職人技は餃子の王将の餃子作りの手さばきに似ている。餃子一日3万個、チケット一日5万枚。食は王将にあり、である。

 

そして、通路を抜けて、ケーブルカーのホームでケーブルカーを待つ。ケーブルカーとは、井戸のつるべのような仕組みでまさにケーブルで繋がっている電車である。電車というか、箱である。おそらく電車自体に動力はない。上の滑車の部分に強力なモーターがあるのだ。そこを回して上に引っ張りあげるついでに、下にも下ろすというサイコーのセンスの乗り物である。ケーブルカーを閃いた最初の人は、その夜、眠れなかったであろう。

その発明の塊、ケーブルカーに乗る。登山日記であるはずなのに、また全然スタート地点に着いていないではないか、と思われるだろう。申し訳ない。もうすぐである。

満員すし詰めのケーブルカーが30度の傾斜角で一気に坂を登る。このスピードで歩けたらどんな山でも登れるだろうと考えているまもなく、約7分で上の駅に着いた。そう、ケーブルカーはそんなに長くないのでした。

 

上の駅に着くと、次はバスである。時刻表では出発まで20分くらい時間はあるので、ゆっくりできるかと思いきや、臨時バスがすぐに出発するとのアナウンス。ケーブルカー2便に対してバス1台というペースが通常なのだろうか、満員のケーブルカーに対して2倍のバスで運んでいるのであろう。

さすが、オープンしたてのこの7月時期、客足は多い。そんなことはつゆ知らず、トイレから帰ってきたパートナーは、「おー、ラッキーだね」と満足げである。この便にトイレ待ちで、間に合わなかった時のことを心配した私の動揺を返してください。

荷物をバスの下に入れてもらってバスに乗り込む。あと1時間寝れる。あと1時間で山登りが始まるのだ。しっかり休もう。

と思いきや、日本一の滝、称名滝、右に見えるは名峰薬師岳、そして広がる湿地帯、と寝させてはくれない名所に嬉しい悲鳴である。

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左に大日岳がそびえている。何度も何度もつづら折りを通る。次第に立派な立山山麓が見えてくる。あれに登るのだ。ワクワクが止まらない。

天気も快晴である。これからいくらでも良い景色が見えるというのに、乗客は夢中でカメラのシャッターをきっている。そういう私も。

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こういうことで旅行の、行きの写真は多めになる。次第にどんどん景色が良くなるからどんどん上書きされていくのだ。しかし、帰りといえば、もう見た絶景よりも、当然陳腐に見えてしまうので、一気に写真が減る。こういった経験は皆、あるだろう。今、皆それをしている。私も。ちらっと剱岳もみえた。いやっほう。

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と、ブツクサ言ってる間に、着いた。着きましたよ。室堂ターミナル。ここが終点であり、始点でもある。バスを降りる。

「おー、涼しいねー」

「涼しいーー!」

来た甲斐があった。灼熱地獄の日本列島において、気温15度の天国である。

荷物を背負って、いざ出発。

と、素直にいかないのだった。

そう、私は昨日の仕事から着替えては来たものの、ベースレイヤーなどはまだきておらず、ここでもう一度しっかりレイヤリングし直しである。街での着こなしは苦手だが、レイヤリングは、大好きである。そんな雑誌が特集であったような、なかったような。

着替えを済ませ、外に出ると、待っていたのは大絶景の立山山麓である。

ここを登るのだ。来てよかった。

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 続く↓

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立山縦走その3 富山地方鉄道編

窓の隙間から明るくなった街が見える。

スマートフォンで現在地を確認すると、どうやら富山駅近くまで来たようだ。天気は良い。

到着時刻に着きそうだ。実は、次の電車の乗り継ぎにあまり時間がなく、それを逃すと、30分は待たなければならないのである。

 

前回↓

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少しでも早く着いて出発したほうが、気温的にも、山行のスピードにも有利なので、できる限り早く出発したかった。

今日はスタート地点の室堂から雷鳥沢を通って雷鳥坂、剱御前小舎、そして剱沢キャンプ場まで、である。剱御前小舎で昼食、そして剱沢に降りる計画だ。当然テント泊なので、荷物が多い。

雷鳥沢でテント泊というのも考えたのだが、そこは室堂平の一番底部に当たる。誰が好き好んでここからスタートをするであろうか。

それならば、荷物を全部持ってのトレッキングにはなるが、初日に雷鳥坂を上がってしまって、次の日は頂上からのスタートと、ゆとりのある行程のほうが良いのではないかと思ったのだ。

剱沢の登り降りのぶん、少しUターンはするけれども、雷鳥沢から登るよりは数段マシだ。およそ300メートルの高低差がある。すこしゆとりを持ち過ぎだが、時間はあるに越したことはない。

二日目の予定は、名残惜しみながら、剱岳を背に、別山へ向かい、そこから稜線沿いに、富士ノ折立、大汝山、雄山、一ノ越、そして室堂に帰ってくるプランである。余裕があれば、浄土山に登り返しても良い、がきっとそんなことはしないだろう。余った時間はみくりが池温泉で使う。

 

富山駅についた。朝だからか、北だからか、若干涼しげである。もうこれで来たかいがあったというものだ。ザックを背負い、富山地方鉄道の発車ターミナルに向かう。

そこはJR富山駅と隣接しており、とてもアクセスが良い。「RAILWAYS」という映画で一躍有名になった。

ターミナルにつくと、すでに乗客が切符売り場に並んでいた。みな、とは言わないが、ほとんどの人が、ザックを持っていたので、立山に行くのだろう。と思った。

中にはそうでもない格好の人もいたのだが、この人達は、どこへ何をしに行くのか、そちらも気になった。

切符を買い、一旦落ち着いた。チケットは、これから乗る電車、そしてケーブルカー、そしてバスのすべて、そして復路まで一式購入できた。しかも、ケーブルカーは予約指定ができており待たずに乗れるというなんとも素晴らしいシステムである。このシステムに後で驚かされることとなることを僕たちはまだ知らない。というタイトルのアニメがあったような気がしてならない。

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ホームにはすでに電車が停まっている。始発駅なので、正面から車両が見れる。東京のことはよくわからないが、どうみても西武鉄道である。この富山地方鉄道は他社の旧型の車両を塗装を変えず、導入しているようだ。鉄道に愛を注いでいる人たちのメッカになっているかもしれない。そういえば、前回来たとき、京阪特急が北アルプス山麓を走っていておののいた。

ホームで待っていると電車が来た。京阪車両、テレビカーを期待していたのだが、来たのは東急であった。それはそれで面白い。

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さあ、いよいよ立山に向けて出発である。立山北アルプスの北部に位置し、雄山、大汝山や浄土山、大日岳、奥大日岳、そして剱岳という3000メートル級の山々で成り立った山域である。氷河も存在する。ブラタモリでもやっていたように高所にもかかわらず、広い湿地帯が広がっているのも特徴だ。そして、火山活動もあり、温泉もある。もう何でもありのテーマパークなのである。そこに、これから向かう。

 

次へ続く

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