何は無くとも、ビールである。がしがし、持ってきたビールは冷えてないので、隣の雪渓でまず、冷やす。
テントも張り慣れて来た。とはいえ、テント泊を始めてまだ半年も経っていない私たちが「慣れた」と言ってもまだまだ不慣れだということはわかっている。まず、出入り口をどっちに向けると良いのだろう、と悩んだりする。景色が良い方がいいのか、通路側がいいのか、風の通り口がいいのか悪いのか、と毎回悩んだあげく、隣近所に習うのが通例となる。今回は地面が硬い。皆さん大きめの石に紐をくくっている。それ用に細引きを追加している人もいたので、次回まねしたい。
前回↓
目の前の剱岳は雲を抱えたり、時折り風で雲が晴れ、その姿を見せたりとを繰り返している。それにしてもなんという勇姿であろうか。今いる場所よりもずっと下の方から尾根と谷が始まり、その荒々しい山肌は雪で覆われた谷の部分により、さらにコントラストを増し、大岩壁をまとっているのがはっきりわかる。そして山頂は、周りのどの山よりも高く天に突き刺さしている。尖った槍ヶ岳の「槍」とは対照に、図太い太古の剣のようだ。ここからでも、山容はとても大きく見えるのだが、あの剣先に行くには、ここからまだ3時間歩くのだ、距離はかなり離れているはずだ。それでこの大きさなのだから、ここから先、近づくにつれてその迫力はさらに増していくのであろう。
とか、思いながら、テントを張り終えた。シュラフを広げて一休み。この時、ようやっと靴が脱げる。
「ダッハーーー!ひー!あっかーん!」
「はぅー、もー、もーええ、もーええわー」
実際はさらに日本語になっていない会話で成立していたはずだが、これでも表現としてわかりやすく書き直している。
しばし記憶がない。
日本を代表する山の麓、山を眺める、そんな事より睡眠欲が勝る。人間とはそんなもんだ。しばらく、スコスコと寝入った。
記憶が戻った。
お水を汲みに行く。
水場は少し離れた管理棟付近にある。
そこまでテクテク。蛇口からは湧水がダブダブと流れている。雪解け水なので死ぬほど冷たい。
手足を、冷やす。
気持ち良い。サイコーだ。
水を汲み終え、剱岳の方を見ると、もう少し下った所に、小屋が見えた。剱沢小屋だ。あちらのほうが景色が良さそうだ。
「手ぬぐいと、バッジ、売ってるかな」
「売ってるよね」
「行こか」
「行こう」
というわけで、下の小屋までさら降りた。近くに見えたが、意外と遠かった。
10分くらい雪の上をズブズブと歩き、着いた。
そこから見る剱岳は先程より大きく見えた。
「すごーい」
「でかいねー」
小屋の周りは剱岳山頂から帰ってきた人で溢れている。皆、満足げだ。中には定番のルートではないであろう、明らかに装備がマックスの人たちもいる。どこから攻め入ったのであろうか、聞きたい。。。
剱岳に続く雪渓には登山者が小さく見える。
カジュアルトラベラーの私たちに必要なのは、手ぬぐいとバッジだ。
カッコいい手ぬぐいゲット、カッコいいバッジは売り切れていたので、可愛いバッジをゲットした。
しばし、外で記念写真を撮る。
イマイチまだ、山をバックにしてのポーズがわかりかねる。修行もしくはセンスが足りない。
とふとみると、剱岳にデイダラボッチかもしくは巨神兵が覆いかぶさっていた。
来た道を戻る。微妙に坂になってるので、しんどい。剱岳を登った人には申し訳ないが、しんどい。
水場に戻り、テントに戻った。
腹が減った。
というわけで、クッキングタイム。
もう今日の剱岳はじゅうぶん見たのでクッキングタイム。
日本を代表する山の麓で、その山を眺める、そんな事より食欲が勝る。人間とはそんなもんだ。
今回は超簡単なカレーと牛丼。
米はアルファ米で、カレーも牛丼のタネもフリーズドライ。お湯を沸かして注ぐだけ、たしかウインナーも一緒に茹でる。
だんだん調理が素早くなってきた。胃袋さん、も少しだよ。
と、そういえばと、冷やしていたビールのことを思い出した。
相方が取りに行った。
持って帰る時、ガシャンと落とした。
その衝撃で、缶に穴が空き、対処として指で塞いでいるようだ。でもその圧力に負け、ビールが飛び散っている。相方は、それを避けるように謎のステップでダンスをしている。
周りの皆も笑って応援している。
とりあえず撮った。
ありがたくそのビールをいただく。
「カンパーイ」
「イェーイ」
できたてのカレーと牛丼を食べる。牛丼、見た目は悪いが、味は良い。混ぜたカレーというのがあるだろう、あれの牛丼バージョンだと思っていただきたい。
「うめーー」
「おいすぃーーい」
昼ごはんからそんなに時間が経っていないが、明日も早いので、とっとと食べて、とっとと寝る計画だ。
それにしても美味しい。何故だろうか。ヤマメシは本当に美味い。
食べ終えると、なんだか頭が痛くなってきた。
どんどん痛くなる。
まさかの高山病か、もしくは、風邪か。
というわけで、本日の私はここで終わった。。。
続く