上高地、北アルプス南部登山の出発点。ここからは様々なルートを通ってアルプスの山々へ行ける。
前回
バスターミナルから、南に引き返すように行くと焼岳、その途中の尾根を上がると西穂高岳、梓川沿いを真っ直ぐ行くと、横尾という分岐地点に出て、そこから涸沢方面に行くと、奥穂高、北穂高へ。横尾を槍沢の方に行くと槍ヶ岳へ。横尾の背中の斜面を登ると、蝶ヶ岳、常念岳へ。
そして、河童橋を渡り、岳沢に入り、重太郎新道を通ると、最短ルートで前穂高、奥穂高に行ける。今回は、この岳沢ルートを行く。
通常のメインルート、横尾、上高地を通って奥穂高に行くのと比較してみる。
「山と高原地図」で標準タイムは
地図上の距離も岳沢を通るほうが遥かに短い。
ということで、2時間半短縮できるから、後者のほうが楽、というのは間違いだ。いっきに斜面を駆け上がるルートということなので、急登が続くというハードルがそこにはある。
がしかし、いつもとは違った景色を見ながら山に登れる、という発見や喜びもある。なので、魅力的な後者を選んだわけである。
このルートの途中に「岳沢小屋」という山荘があり、そこのブログで詳しくこのルートを紹介している。落石、滑落など危険を伴うルートであるという事がしっかり書かれている。登りよりも下りの方が危険ということも書いてある。実際滑落はほとんどの登山において下りの際に起きやすい。気持ちのゆるみ、視線の移動、加重のかけ方、道迷い、などが登りよりも起因しやすく、結果、滑落事故につながりやすいのだという。確かにそんな気がする。私は登山行程最後の1%で大抵足をくじく。前回は、山荘敷地内の階段で足を捻ってしまった。
というわけで、背中に背負う荷物はなるべく減らす。そのほうがバランスも取りやすく、事故率が減るし、体力も保てる。
テント泊はやめる。
テント、銀マット、シェラフ、マット、枕、などが除かれる。
自炊をやめる。
バーナー、コッヘル、ガス、食器等が除かれる。
これで、まるで日帰り登山のパッケージスタイルに変わる。
少々味気ないが、味気を求めて危険度を増やすこともなかろう。
食料はすぐに食べれるようなパンをムギュッと潰してザックに入れる。
行動食のsoyjoy的なものは多めに準備して、ビタミン剤やアミノサプリも多めに持っていく。軽くなったその分、水分を多く運べる。岳沢小屋から穂高岳山荘まで水の補給はできないので、水分は多めが必要だ。気温も初日はまだ暑そうだし。
さて、河童橋から、しばらく木の歩道を観光客と共に歩く。
上高地の名所の湿地帯を通る。何だこの美しさは。
さらに、しばらく行くとぽつんと岳沢に入る登山口がある。ここが今回の出発地点である。
時刻は午前6時前。他に登山客は少ない。静かで気持ちがいい。
しばらくは樹林帯を進む道のようだ。天然の樹林帯、様々な木々の中を縫うようにして登っていく。
登山道は真っ直ぐではなく、小川を越え、くねくねと登っていく。気温はまだ低い。体は暖かくなっているので、 一枚上着を脱ぐ。私はだいたい一合目で今後のエネルギー消費から発生する暑さが始まる前に少し寒いけど薄着になる。暑いのは嫌いだ。寒いほうがまだいい。寒いからと言って、厚着でマラソンをする人はいない。
しばらくすると「天然クーラー」と書かれた風穴がある場所についた。
全くクーラーの気配はない。何なんだろう。
登山口から岳沢小屋まで10のチェックポイントにそれぞれ看板がある。「お、おう、まだまだか」と思ったり、「およよ、よしもうすぐだ」と思うことができる例の看板である。
メリット・デメリットを両方持っている看板だ。アレのたぐいは、たいてい3合目とか、6合目あたりが、まだまだか的な一番変化がなく感じるのはなぜなんだろう。
道は次第に直線になり、斜度もきつくなる。序盤も序盤にしては結構な坂道だ。左手にはガレ石の沢が広がっている。もうすぐ岳沢小屋な気配はしたが、まだ7割らしい。気にしない。
振り返ると上高地の建物が見える。思えば遠くまで来たものだ。
穂高の山々の次第に太陽を浴び、色づいてきた。
山稜は方角によって見える形が変わる。だけでなく、登るたびにも形は変わる。最初は低いところから見ると、実際の標高ではなく、手前にある山が高く見える。それが次第に登るに連れ、遠くの本当に高い山が高く見えてくる。
というわけで、私のジャンダルムへの道は始まったのである。
つづく