山と僕とカメラ

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登山初心者のバタバタ日記

岳沢からジャンダルムへ その6  奥穂高岳から穂高岳山荘編

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時刻はまだ13時半

本日は1時間ほど降りた穂高岳山荘に宿泊するだけなので、まだまだ時間がある。

明日の目的地、今回の目的地、ジャンダルム様が真正面にそびえ立っている。たくましく立派な出で立ちである。

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明日はそんなに天気は良くないという情報だった。今日は天気はまだいい。今日も行けそうな気がするが、時間的に、あと体力的にやはり、明日に回した方が良さそうだ。それで天気が悪く、行く事が出来なければそれはそれで良いではないか。山はいつでもそこにある。

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ザックからドローンを取り出して上げてみる。まず、奥穂高周辺、そして稜線沿いにジャンダルムへ。ナウシカではないので風は見えない。高度に気をつけ、谷に入らないように慎重に飛行させる。ジャンダルムまで、足で行くと1時間だが、ドローンでは、ものの1分でジャンダルム頂上に着く。なんとももどかしい。

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明日会うべきエンジェルのモニュメントがあるのを確認し、飛行を終える。やはり、ジャンダルムは少し複雑な形をしている。

まってろよと、誓う。

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荷物をまとめて奥穂高から下山する。ここからはしばらく稜線を岩場を乗り越えながら進んで行く。正面には涸沢岳、その向こうに槍ヶ岳が見える。ゴールデンウィークに来た時は、左に見える岩場の斜面が雪壁になっていて、そこをピッケルを突き刺しながら上がって降りた。が、夏はこうやってなんの苦もなくおりれるのだから、季節によって山はこれほどまで、姿を変えるのだなと、嬉しくもドキドキも両方の感情が込み上げてきた。

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岩場を下りて行くと、今夜の宿、穂高岳山荘が見えてきた。まだまだ下の方だが、人がいるのがよく見える。テラスと言うか、お庭もあんなに広かったのか、とびっくりした。前回はただの雪の塊だった場所が、きれいな石畳に覆われたお庭になっている。

前回5月の穂高岳山荘はこんなかんじだった。

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そこで、登山客がゆっくり休んでいる。早くあそこに行きたい。

前回はほぼ直登で登っていったが、夏道は斜面をジグザグに道が作られている。何度もいうが、道ではなく、ただの通りやすい岩の連続だ。

ようやく見覚えのある梯子にやってきた。もう山荘は目の前だ。うれしい。ただいま。早く寝かせておくれ。

最後の岩を下りる。もうそこが山荘の敷地だ。素晴らしい。

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そそくさと館内に入り、宿泊の手続きを済ませ、中に入る。

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靴を脱ぐ、ふう。

ザックを下ろす、ふう。

スリッパに履き替え、売店でビールを買う、うほ。

テラスに出て、ビールを飲む。ふうううううう!!!

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たまらなく気持ちいい。

最高という言葉があるなら、今こそ使いどきだ。

最高だ。

わざわざ地上から持ってきたポテトチップスをつまみにいただく。

うれしい、なんにも言えねー。

今まで生きてきた中で一番幸せです。

チョー気持ちいい。

初めて自分を褒めたいと思います。

わが柔道に悔い無し。

と、まるで金メダルをとったかのような気持ちが次々とこみ上げてきた。

下には涸沢のテントが見える。この時間なので、まだそこからここに登ってくる人がいる。そうだ、頑張れ、ビールは目前だ。とエールを送った。

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テラスに綺麗なデッキのようなものがあり、そこに寝転がる。

気温がちょうどいい。風もちょうどいい。眠気もちょうどいい。

ぐっすり寝てしまった。

なにか考え事をしていたはずなのだが、そんなことを私の脳みそが許すはずもなく、思考を終えてしまった。

何時間、ねたであろう。スッキリした状態から考えると、1時間半は寝させてもらった気がする。何時間寝たかは、忘れてしまった。だが、スッキリ、心地よい気持ちになった。残りのビールを飲み干し、部屋に戻る。汗で濡れた下着などを乾燥室に干す。明日の準備をする。

ヘッドランプ、ハーネス、を出す。行動食も今一度整理する。

明日は、3時に起きて4時出発の予定だ。早いに越したことはない。

日の出は5時位なので、4時半には明るくなってきているはずだ。なので最初の30分岳ヘッドランプ、あとは、次第に見えてくるだろう。なるべく早く、奥穂高岳に戻り、時間をしっかり使ってジャンダルムに挑みたかった。

そうこうしていると、晩御飯の時間となった。まってましたよ。

食堂にいき、隣界隈の皆でご飯をいれ、味噌汁を注ぐ。おひつ、お鍋前のタスクだ。

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みな、そそくさと食べ始める。わたしも黙々ともぐもぐいただく。

おかわりもした。明日もいっぱい歩く。

それにしても、この3000メートルでこの食事、前回に引き続き、ほんとにありがたい。

心していただいた。

みなそそくさと食事をする理由は、実は、日の入りの時間にかさなっているからである。

そう、本日はとても天気がいいので、夕日は間違いない。すでにその美しさの片鱗を夕食前に見た。

わたしも、カメラを持って涸沢岳まで上がる予定にしていた。

なので、そそくさと食事を終え、実はすでに食堂に持ち込んでいたカメラと上着を持ち、すでに玄関においていたブーツを履き、そそくさと外に出た。

涸沢岳に上がるまでもなく美しい。美しい夕日だ。

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雲海をまとい、笠ヶ岳の向こうにオレンジ色の火の玉が輝いていた。

涸沢岳は、ここ山荘から15分かそこらで登れる山である。初めてだったが、登山道も丁寧に作られていて登りやすかった。頂上にはすでに何名かが登っていた。テント泊の人や、自炊の人であろう、すでに夕日を楽しんでかれこれ30分という顔をしている。

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座り心地のいい場所を見つけて座る。

きれいだ。本当に綺麗だった。

オレンジと、紫と青と赤と、黒の世界。

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左の穂高の岩肌やジャンダルムはより荒々しく存在感を放っていいる。右手には北穂高から大キレット、そして槍ヶ岳が見える。

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何だこの贅沢空間。そして、贅沢な一日。振り返れば6時から12時間、山を登り、空を見上げ、汗をかき、山並みに喜び、そよ風に癒やされ、そして、今、夕日に包まれている。なんという一日だ。

シャッターを切る。

夕日は刻々と地平線に近づく。それと共に彩りも変わっていく。上空は暗くなり、日を浴びたオレンジと影の紫が混じり始めるは。右手のキレットはその険しさを一瞬、増したかと思うと、一転、優しい空間に包まれていた。雲海は時間と共に高さを変えている。

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ふと、左後ろに白いパラソルを感じた。

まさか。

そのまさかであった。

あの健脚婦人が、またもこの涸沢岳で、白いパラソルをさして夕日をじっと見ていた。

すごい。

この人は、ほんとにこの北アルプスの景色が好きなんだろう。

初めて見た時は、高台から岳沢を眺めおろしていた。

二回目は奥穂高から、富士山の方をじっと見ていた。

そして、今、夕日が沈むのをじっと見ている。

きっと、それだけではなかろう、色んな所で、立ち止まり、じっと景色を見てきた一日に違いない。すばらしい。

ふと気がつくと、もう夕日が終わろうとしていた。

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太陽は、沈みつつある中でも色彩を操り、様々な空気を色に変え、私達に見せてくれた。それはまるで花火大会の様に、まだか、まだ終わりじゃないか、まだあるか。といった風に、クライマックスとエンディングを何度も引きのばすのであった。

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そう、気がつけばすっかり陽は沈んでいるが、それでも残りの紫色と藍色が空を包み、遠く離れた月を照らし、それらと穂高の山並みがみごとに色合いを整えていた。

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しかし、このままでは真っ暗になってしまう。私はヘッドライトを持ってきていない。

すこしばかり名残惜しさを山頂に残して涸沢岳を下りた。

振り返ると、まだパラソルの御婦人は沈んだ夕日を見ていた。

いつかまた会えるだろうか。

 

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 つづく

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