熊が出た様子も周りの登山者からはうかがえない。どうやら居ないようだ。よかった。レオナルド熊もいないようだが。
かつて幼き頃、修学旅行で北海道にスキーに行った。その時、宿泊したホテル内で「おい、みんな、田中邦衛がおるど!見に行こうやあ!」と騒ぎになった。当時私は「田中邦衛」を知らなかったので、騒ぎには乗らなかった。次の日、スキー場で「おい!田中邦衛がスキーしとるど!」とまた騒ぎになったが、誰が誰だか、いまいちピンとこなかった。その後、「ビデオで私をスキーに連れてって」を見て、あ、この人見たかも、と嘘かホントか微妙な記憶が思い出された。
前回
かわいらしい避難小屋についた。
ここからは雪があれば一気に直登できるのだが、まだまだ夏道だ。しかもぬかるんだ泥と少しの雪と岩、足元8割、周りの景色2割で視線が移動する。黙々と登っていく。
左手に尾根が伸びているがそれが次第に傾斜を増していくのを見ると、いま自分たちが登っている傾斜がなかなか急であることがわかる。
周りには3メートルくらいの立木が点在しているが、これが全部埋まるくらい雪が積もるのだから、すごい。
高度を上げるごとにしだいに寒くなってくる。ここからは山頂の様子がしっかり見てとれるので、元気が湧いてくる。早くあそこに行きたい。頂上まで行けばもうそれ以上登らなくていい。降りて好きなものを食べて飲むことができる。そんな気持ちが湧いてくる。
雪も次第に積もってきた。うれしい。
麓をみれば、これまたきれいな景色だ。下界だ。少し上がっただけで周りは別世界になる。 これもまた登山の醍醐味だろう。
少し小腹が空いてきた。
ベンチとテーブルがある。休憩せざるを得ない。
ベビースターラーメン。うまい。これほど「ほおばる」食べ方にあう食べ物はない。
そして、これほど何十年も食べ続けれる食べ物もそうない。ホームランバーも5円があるよも、もう見ない。
あれよあれよという間に食べきってしまった。貴重な食料が。。。
山頂まで、もうすこし。
周りにも登山客がたくさんいる。みな楽しそうだ。山頂を目の前にすると、みな疲れていても笑顔だ。私達もそうだ。そして、無駄な荷重もたいして苦にならない。調子がいい。
休憩を終え、あるき始める。淡々と、ひたすら淡々と。
山頂部が近づいてきた。
先行する人たちが山頂の尾根の向こうに消えていく様子が見える。もうゴールが近い。
尾根に上がると風が強そうなので、上着を羽織る。
風が吹いてからの衣替えは非常にめんどくさい。
そしてついに、着いた。
伊吹山山頂。
風はさほどではないが、やはり寒い。まだまだ雪山というほどではないが、伊吹山、周りの景色はやはり見ごたえがある。
トイレは休業中、売店も休業中、ヤマトタケルは変わりなく鎮座していた。
靴に着いていた泥は雪ですっかりきれいになっていた。
しかし、復路でまたドロドロになるのだが、これは致し方ない。
こやの木陰でランチを食べる。
この伊吹山は火気厳禁なので、サーモスの魔法瓶にお湯を入れてきた。それでカップラーメンをいただく。
相方が積み重ねたおにぎりとみかんが、少し早いお正月のようだ。
雪山にカップラーメンはにあう。
そして、3分後にいただくことになるこの味も、雪山にあうだろう。
3分後
想像以上に合う。
うまい。
泣きそうになる。
食後、みはらしを楽しむ。北の山々はどこまでも続き、南は琵琶湖と町並み。遠くには名古屋も見える。
素晴らしい。
山に登ると、自分がちっぽけに見えるというのがあるが、今回の感じでいうと、世界がちっぽけに見える、といったところだろうか。
そう、こういった平常時では気が付かない感触を登山は与えてくれる。
そこに何もなくても、周りを見渡すことで何かを感じる。大切なことだ。
と、ひしひしと、感じながらビールを飲むにいたり、今回の登山は無事下山と相成った。