この辺からすでに、早くおりて美味しいご飯を食べて、ビールが飲みたい、と思うようになる。じゃあなぜ登るのか、というと。
その美味しいご飯とビールは、その日山頂まで上がってそして無事に降りた事とセットになってはじめて「美味しい」と感じたい、のだろう。美味しいは、美味しいのだが、やはり楽しくももしかしたら疲れ切るかもしれない、何でもいいからとにかく「やり切った感」とともに下山の無事を祝いたいのだ。
山頂では、特に「ビール飲みたい」とか「腹一杯食べたい」とかはあまり思わないのもそれが一因なのかもしれない。もしα波が図れるなら、下山後の脳はa派で溢れてるだろう。
まずそのために、今やるべきは、目の前の山を登る事だ。
しばらく進むと、はっきりと伊吹山を見ながら進むルートになる。
そうしているうちに、5合目のベンチにやってきた。
ここからは、一気に駆け上がりたい。しかし、夏道はジグザグなので、山頂部を目指しながらというわけではなく、もどかしく右へ左へと切り返しながら登っていく。
次第に気温が下がってきた。一枚着て、更にザックの一番上にアウタージャケットとダウンジャケットを入れる。おそらく、これを着るときは、とりあえず、さっさと取り出したくなるほどの寒さだ。
そういえば、先程からトレッキングポールはしまっている。一眼カメラとトレッキングポールを持ち替えながらというのは、落下の可能性が大きいので、トレッキングポールは持たない。そのかわり、しっかりと地面の状況を確認しながら歩くので、下ばっかり見てしまう。登山では、両目が左右ではなく、上下についていたらいいのにと、思う事がある。足元と、目的地の確認で首の上げ下げを繰り返し、肩がこるのは私だけだろうか。私だけなのだろうか。
と、ぶつぶつ言ってる間に(実際には言ってないが、もっとくだらない話をしている)例の可愛い避難小屋が見えてきた。
雪も次第に積もってきた。アイゼンやチェーンスパイクをするほどでもないただ白い、その程度だ。
故に地面はじゃりじゃりとぬかるんで最悪の状態だ。足をすくわれないように慎重に登る。
そういえば、登山口であるおじさんが「5合目あたりで熊らしき物が出たらしいので気をつけてください」と言っていたのを思い出した。右手の林が非常に怪しいので、たまにそっちを見ながら進む。レオナルド熊、くまだまさし、そういった類いの熊なら良いのだが。
続く