地蔵岳への道
普通の道といって岩場を降りるので、正確には道ではない。
さっきと比べると、岩場でも安全度が高いので、「道」だ。
さっきまで下に見えていた地蔵岳が、今度は高く見える。それほど降りてきたということだ。
前回
登山は、距離や高さがどれくらい変化したかが、パッと見ただけではわからないことが多い。そこで、経過時間でおおよその距離を算段することが多い。
急激な上り下りは、全く進んでないのに時間だけがたったりして、しかも真上からの平面上の距離は殆ど動いてないが、断面を見ると数百メートル降りていることもある。そして、運動量、またはしんどさ、でどれくらい登ったかを考えることもある。
息が上がる度合いで傾斜角が増加し、疲れる。ただし、下りの場合は、ほとんど心拍に変化がないので、あっという間にとんでもない高さを降りた感覚を覚えることがある。おそらく夢中になっているので、時間のことは飛んでいる。
というわけで、あっという間にずいぶんと降りた気になった。
暫く行くと、分岐点に出た。左の斜面を降りると滝に出るショートコースだ。
今回はここは使わず、ぐるっと一周する予定だ。せっかく来たのだから。
後でわかったが、この日、このショートコースを使わず、ぐるっと一周を選んだのは私達だけだった。
来た方向を見ると、最初の鎖場がかなり高くに見えた。
あれをまた登るのか、、、、高いな。。。
さて目の前に岩がそびえ立っている。
なるほど、これが地蔵の足元か、なかなかの出で立ちだ。
ここからは、人工物はないのでしっかりと観察してから登っていく。
地蔵岳登頂
大きな段差が3つほど。まっすぐ登ればいいのだが、右に巻いたほうが楽に見えた。
だがそっちに回ると、下に地面がなくなってしまう。恐る恐る登っていく。
そして、ふたりとも、無事、地蔵岳の山頂に着いた。
地蔵さんはいなかった。
アンカーが打たれてるので、この向こう側の壁を上り下りするのだろう。楽しそうだ。いつかその日が来るだろうか。
「地蔵岳」と書かれたプレートをもって記念写真。
それにしても見事な景色だ。
隣にこの地蔵岳に似たような山がある。不行岳だ。
地蔵岳を降りる
少し休憩して引き返すことにした。
下から一人、女性の方が登ってこられた。
足運びは軽く、かなりのツワモノに見えた。
垂直に近い岩場は足元が見えないので、下りの最初が肝心だ。
慎重に降りていく。
下りとはいえ、あっという間という感じではなく、一体いつまで降りるんだという感覚だ。
土のある場所について、毎度ながらホッとする。
その直後、山頂ですれ違った人が、もう、降りてきた。何という速さだ。
そして、私達を追い越し、谷へと更に降りていった。前世はカモシカだろうか。
私達は来た道を戻っていった。すべて上りの岩場なので、なかなかしんどい。
下りでは気にもとめなかった段差が、壁となって立ちはだかる。こんちくしょう。
鎖場は避け、安全な迂回路を選んだ。といっても、ゴリゴリの岩場だった。他の山なら迂回路ではない。
振り返ると地蔵岳
やっとこさ、スタート地点に帰ってきた。
何という素晴らしいオプションコースなのだろうか。
さっきまでいた地蔵岳が素敵に見えている。
この急激なアップダウン、ちょうどいいくらいの岩場。皆に愛されるはずだ。
大天井岳手前の分岐点を右に行って周回道に。
ここからは、なだらかな尾根道を延々と進んでいく。最高峰はまだ先だ。一回は踏んどかないともやもやする。
「新道下山道」と書かれた分岐点についた。ここから下山するのは、一体どういったコースだろう。もし、岩場がなければ安全に下れるエスケイプルートということか。
尾根にも杉林が植林されている。当時戦後復興の勢いを感じれる。
なだらかな尾根を行く私たちは、「俳句はアートなのか」だの「アーティストとミュージシャンの違い」だの「最初のアにアクセントのアーティストと平坦な言い方のアーティストの使い方の違い」などを答えを出すこともなく会話しながら歩いていった。アイドルなどに使う「アーティスト」は、メディア全体が、アイドル本人にばれないように、へりくだりつつ小馬鹿にしている表現という結論は出た。
なんだかんだで、明白なイベントも出来事もなく、雪彦山最高峰に着いた。
なるほど、誰も来ない理由がわかった。この周回路は、岩場を目指す登山者にはまったく興味ない道だ。トレラン系の道だ。ただし、日頃運動をしていない我ら、この後、きっとラーメンを啜る我らにはちょうどいい。
山頂も見晴らしは、そこまでない。
そしてまだ全体の半分も歩いていないときたもんだ。
休憩を終えて更に先に進んでいく。目指すは次の山頂、鉾立山。この三山で雪彦山というらしい。
まだ昼ごはんにもなっていないのに、私達の会話は「下山後のラーメン」についてだった。
以前、木曽駒ケ岳に行った時に食べた「幸楽苑」というラーメンチェーン店が尼崎にもあるらしいので、帰りはそこで食べようということだ。
話はメニューに及び、煮玉子を入れるかどうかに花が咲いた。まったくもって景色に興味のない感じがわかる。相変わらずの杉林尾根だ。
暫く行くと、峠に出た。平たい鞍部の典型的な峠だ。下山道は「ドロカベコース」とマジックで書かれている。地獄が見れそうだ。
峠を越えて行く。
とちゅう、木の棒を拾った。これはいい。トレッキングポール代わりにちょうどいいし、要らなくなったら捨てれる。
峠の坂道を登りきると、ありましたよ、山頂。やっとこさの3つ目。ここも相変わらず、見晴らしは良くない。お腹も空いていないので、ランチは下山中のどこかですることにした。
ここからが本当の下山だ。しばらく尾根道を進んで、途中から川沿いの谷筋を通って滝のある場所に進むルート。途中何回かあったエスケイプルート全てに合流するはずだ。
つづく