山と僕とカメラ

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登山初心者のバタバタ日記

剱岳の夏登山 その4 剱岳登頂編(剱沢キャンプ場〜剱岳ピストン)

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お盆の剱岳別山尾根ルートは多くの登山者で賑わう

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前回

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さて、剣山荘からの登山者はテント場がないのでみんな「小屋泊」である。そして我々の剱沢キャンプ場からは「テント泊」の登山者がそれぞれ剱岳に向かう。気のせいか、小屋泊の人達の方が元気に見える。気のせいではなかろう。剣山荘はトイレがすこぶる良いらしい。ちなみに剱沢キャンプ場のテント場は2箇所あるので混雑することはあまりない。清潔度は問うてはいけないが悪くない。

剣山荘を後にし、まずはなだらかな尾根を登り、一服剱に向かう。なだらかとはいえ、ゴロゴロの石の道なので気が緩まない。高山植物が朝日に輝き、そんな私を応援してくれる。f:id:fujikixblog:20190828114655j:plain

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まずは一服剱を目指してウォーミングアップ

さわやかな尾根のなだらかなパートはすぐに終わり、続いて本格的な斜面が始まる。出だしだろうが、終盤であろうが岩が衝撃に反応し移動する確率いわゆる滑落する確率は元気であろうが、疲れていようが変わらない。それによる怪我の程度も変わらない。疲れと油断の総量は常に同程度だと思う。

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私は足首をひねる癖がついてるので、テーピングで足首はガチガチにしている。それでもひどい捻挫をしたときは、テーピングを引き裂いて、足をひねってしまうのであるからして、けっして処置をしているからといって油断してはいけない。

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前に行く人が踏んだ石が必ずしも安定しているとは限らない。昨日、嫌という程味わった。その人の体重や石を踏む位置で決まる。

なるべく一度に次のステップに体重はかけない。じわーっと乗せて、ふむふむ大丈夫だなと確認してから体重移動をすると良い。これは浮石のザレ場に限らず、斜面の登りでも同様で急に岩が剥がれる事があるので気をつけないといけない。先日も落石か何かで富士山山頂間際で事故があったようだ。たとえ小石でも落石が落石を呼び、段々と大きな岩を落としてしまう。浮足で滑らして落とした石は後ろの人に当たるので、そういう意味でもゆっくり丁寧に歩き、保険には入っておいた方が良い。

 

 

振り向けば剱沢キャンプ場は遠く小さくなっていた。剱岳に登る登山者はとても多く、前にもたっぷり、後ろにもたっぷりといる。色んなパーティが「今日は人が多い」と言っている。初めてなので「こんなもんなのか」と思っていたが、そうか、多いのか。

気がつくと、朝焼けからの金色に満ちた空気は失われ、代わりにくっきりと鮮やかな光景に変わっていた。

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一服剱の頂上は一服させられる見事な前剱を見ることができる

5時50分 一服剱に着いた。

確かに一服したくなる。間違いないのだ。という理由は、斜度のキツい登山道だった、という単純な理由だけではなく、その一服剱の山頂から見える、次に向かう前剱が一旦降りてまた登る、ゆえに大きく見えるので、連続して休まず進む気持ちにはならないからであろう。私達も文字通り、一服した。

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張り付いて登っている人が見える。

この日は暑くなるということで、上下半袖だが、日焼け防止に長袖を下に着ている。

前半で日焼けすると、その後の行程が辛くなる。

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先程述べたように、剱岳に行くこの別山尾根ルートは、「一服剱」「前剱」そして本命の「剱岳」という三部構成になっている。そのため、ピークハントを続けるアップダウンのある縦走のようなルートとなっている。結果登る総距離も長い。がしかし、景色はとても良い。

ここからは更に足元が厳しくなる。すでに鎖で確保されたルートが始まっているが、事故はそうではない場所で起きやすい。大勢がいるとより正常化バイアスが発生しやすいので、いつものように気をつけないといけない。おしゃべりは1点支持ができるほどの平坦な場所でのみだ。

 一服剱の頂上から前剱側に降りる。そこには登山者自動監視システムの機械がおいてあった。こうゆうのをドンドン広めてほしい。

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まずは急な斜面を下りてゆく。特に決まったステップはないという印象の場所。行き帰りで違う道を選んだり、ボトルネックになりやすい場所はトーナメント表のようにステップが分岐している。こうゆう場所で、安易に一番外側を選び続けると、凄まじい崖っぷちでまさに手詰まり息詰まりになるので、めんどくさくても目的地点をさかのぼったルートファインディングをしたほうが良い。足元ばかり見ててはいけない。でも、足元にはきれいな花が咲いている。困ったものだ。

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相変わらずこの花の名前も知らない。 

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武蔵谷であろうか、雪渓が残っている。このあと飽きるほどみることになるが、初見は新鮮である。そのさきにちょうどテント場が見える。地図からして真砂沢ロッジのテント場だろう。整備された街とは違い、見えるからここからも行ける、というのは、ほとんどの人は無理だ。だが、遭難しかけると誰もがそうしてしまい、結果さらに状況を悪くしてしまうのだろう。

一旦コルが終わると、前剱の取り付きに着く。一服剱とは岩稜帯が違うのか、硬い岩盤の岩場へと変わってきた。険しいが、登りやすい。

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振り向けば、一服剱が低く見えていた。嬉しさも募る。テント場と一服剱が重なっていることからも結構な高度を稼いだ事がわかる。100mをまっすぐ歩く道と、100m垂直に登る斜面とでは必要なエネルギー量は大きく違う。フルマラソンの距離を真上に上げると、流れ星が輝く高度にまで上がる。

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行きは良い良い帰りはつらそうな斜面が続く。

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振り向けばどんどん上に上がっているのがわかる。

しがみついた岩の隙間にチアリーダーがいた。

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真砂沢ロッジが先程よりも近く見えた。明日はそこを通る予定だ。

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6時50分 前剱頂上到着

なんだかんだ、この前剱は結構疲れた。まだまだ先はあるのだが、それにしても結構な登りであった。

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ここからの眺めもとても良い。正面にはようやく堂々とした剱岳が見えた。

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見るところによると、タテバイあたりが急峻で、残る山頂まではなだらかなようだ。おそらくは先程登った前剱のほうが、しんどい。

剱沢キャンプ場がある立山別山方面に目をやる。きれいだ。

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まだ新緑の色味の立山が美しい。

剱岳に向かうこの先は、沢や尾根を通っているクライマーの頑張る姿も見れる。叫び声が聞こえるが、これはビレイ解除とか、ロープいっぱいですとかの合図だ。こちらとあちらと、ルートは別としてどちらが安全かというと、実はロープで繋がれているあちらの方が何かあったとき安全度が高い。手ぶらのこちらはよりいっそう気を引きしまねいといけない。

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少々休憩の後、出発。例によって一気にまた下降する。その先にはなんと頑丈そうな橋があった。あれがあるとないとでは大きく違うのだろう。

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靴幅分もいかない登山道が続くが、この辺に来ると皆、なれてくる。
振り返ると白山が見えるが、もう白くない。

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それにしても暑い。日の当たる側はじっとしていられないくらい。反対側になると割と涼しい。花もまた涼しげだがこの花の名前もまだ知らない。

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大渋滞が始まった。

溜まる場所も、抜く場所も譲る場所もないので、この先100人くらいのなかの一番ゆっくりの人のペースになっているそれがタテバイの上まで続く。要するにこの先のタテバイのペースで動いているということだ。

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そして、ゆっくりと牛歩戦術のように列は進んでいく。

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難所はなるべく前の人が終わった後に通過したほうが良い。だから結局列は伸びるのだが、仕方がない。難しい場所はステップがあるのでこれを頼りに進んでいける。ただし、補助ステップのほかにも、ナチュラルなステップやホールドがたくさんあるので活用するとより楽に登れる。そもそも鎖がちょうど良い高さにないことがほとんどだ。そしてピンとははられていないので、振られることがあるから注意だ。余裕があればセルフをとっておくと、今回のような渋滞にはとても良い。だがセルフを取るときは鎖ではなく打ち付けたアンカーの輪のほうが安定する。両手も離せて良い。

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(photo by Mr.K)

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先程の日陰が後方に見える。

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そして今度はスラブを降りる。この先にタテバイがある。人もいっぱいいる。

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8時30分タテバイ前のトラバースに到着も大渋滞

何ということだ。多すぎる。私達は多すぎた。とはいえ、ヨコバイから上がるわけにもいかず、淡々と待つのだが、雪渓の照り返しと直射日光で眩しさと暑さは凄まじい。

ここはテーマパークと化したのだ。大人気アトラクション「タテバイ ザ 4D」だ。きっと裸眼で3Dと重力移動が味わえる。

9時、ようやく、タテバイの膝下に着く。

長かった。とりあえず何でもいいから日陰を探す。むこうでほいほい登ってるマルチピッチの人たちが少しうらやましい。私達の前にいたパーティがかれこれ10分くらいイケメンについて話している女子たちが前にいる。内容は忘れたがドコドコ山に行くと良いとか、役に立つかどうかわからない情報がタテバイの麓にこだまする。勉強になる。その感謝の報告をご本人にもしておいた。少し場が和んだ。 

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9時20分、ようやくタテバイに登れることになった。とはいえ、さほどでもなく、このタテバイパートは終わった。あの渋滞は何なんだろう。

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気になったのが、タテバイの鎖場のボルトにつけている金具がくるくると回る。ダブルナットではなく一重で、結果ロックされていないので、チェーンが回り込むとどんどん回って、いずれ外れていく気がするのだが、先をつぶしているのか確認してないが、これはこうゆうものなのであろうか。

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10分でタテバイ通過、ここを終えると、あとは、岩場をジグザグに登るだけで頂上に至る。

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9時45分 辛い現場にまた出会う。

最後の斜面、昨日の雷鳥沢に続いて、ここでもけが人に出会う。ルートからやや外れて仲間と一緒に座っていた。頂上近くなので、人も多く、電波も通じやすい。自力では降りれなさそうだ。救助状況が混んでなければ間もなくヘリが来るのだろう。

足元の岩にに血痕がびっしりついていた。滑落だろう、まさにルート上だった。私達を含め周りの登山者は先程のタテバイの感想の賑やかさよ今はどこに、ここから山頂まではみな無言で登っていた。2日連続で目の当たりにするというのはなかなか精神的に良くない。

9時50分 そうして私達は、私達は無事、剱岳に登頂した。

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ようやく登頂。もちろん山頂も満員で、阪神百貨店の食品売り場のようだ。撮影のための行列が幾重にも重なっていたが、ここですることは他にないので直ちに列の最後尾に並ぶ。こういうときほど落ち着いた行動が問われる。

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雄山の向こうに槍ヶ岳?が見えた
少し下に広い場所があったので、ここで昼食と休憩を取る。

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10時27分 そこへ機械音がしてきた。ここで聞く機械音は航空機以外ない。

事故発生からおおよそ1時間で迎えに来てくれたようだ。凄まじい早さだ。

ヘリは正確に要救助者の近くまで降下し、隊員をおろした。その後、隊員が要救助者をハーネスでくくる。その場所直上までヘリはセンチ単位の操縦で寄せ、吊り上げ金具を持っていく。そしてあっという間に吊り上げ、格納し、富山方面に下りていった。その際、隊員さんが私達の無事を祈るように手を降ってくれたのだ。期待に応えなければならない。

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去年は剱沢まで来たものの、結局、見ただけの剱岳、一年後無事こうやって登頂できたのもK氏二人のおかげである。このおかげ紀行は、実はまだ始まったばかりでこのあともっとおかげをいただくことになろうことはこの時はちっとも思わなかった。

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11時10分 下山開始。

登ったぶんだけ降りる。登った人のぶん、降りる人がいる。というわけで帰りも大渋滞だ。スタート前のエネルギーが100で、ゴールで使い切るとすると優しく考えても、今は50と考えて良い。おまけに下りは体重がかけにくい。慎重に。先程の人もきっと下山中だろう。

懐かしめのデザインの缶が岩に挟まっている。

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11時30分 ヨコバイの分岐点にきて全く動かなくなった。相変わらず暑い。

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ここも逃げ場がない。日陰を求めてただ佇む。

12時00分 いまだヨコバイに着かず

まったくもって進まない。下山開始から1時間経過している。水を多めに持っていない単独は干からびているかもしれない。

12時15分 ようやくヨコバイ通過

あまりにも待ち続けて一瞬で終わった。それよりもこの後も渋滞は続く。

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面白い奇岩があった。

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14時45分 渋滞と、足元の浮石と格闘する下山道、なんとか剣山荘にたどり着いた。

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帰りの前剱の下りが一番危険だった。今回、2回ほど、落ちかけた。

ここで冷たいビールを飲み干た。うまい以外の感想がない。

16時テント場に到着

水を補給し、テントの延泊の手続きを済ませる。ビールを買いに剱沢小屋に降りる。とメモには書かれている。記憶がない。予想道理、記憶違いで、テント場に帰る前にビールを買っていた。メモだよりの記憶はこんなもんだ。次の日以降の行程を吟味する。最終日が天候が最悪だということで、最終日の行程をどうするかで悩んだ挙げ句、K氏たちの行程をかえてもらい、いったん仙人温泉小屋、そして阿曽原温泉小屋にむかう小刻み作戦となった。K氏たちにまた借りができた。

 

つづく。

 

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